星紛れのテガミは、しののめに融ける

詩一

星紛れのテガミは、しののめに融ける

手紙を夜に放って 窓の外を見つめた

月の雫は窓を伝って カーテンを揺らす


変わらない言葉と違う声

本当は違うアイデンティティ


あなたの笑顔が胸を締め付けるから 今夜も眠れない眠れない

もうあなたは寝たのかな 暗闇の中で灯る電子


どうか苦しみに気が付いて 気付かないで 気が付いて

どうかもう声を掛けないで 掛けて 掛けないで

どうかこの傷口をなぞって ほじくって なぞって

どうかこの罪を許さないで 許して 許さないで

どうかわたしのことを忘れて 忘れないで 忘れて


あなたへ届いた手紙は 朝日を浴びてきらめいていて

だから返信にも興味がないふりをして そっぽを向いた

ごめんね 多分きっと明日もごめん だからありがとう



手紙が月に照らされて 僕の窓を叩いた

飛んできた方向では 星が濡れている


変わらない映像と違う心

虚実に惑うアイデンティティ


君の言葉が過去のしこりを溶かすから 今夜も眠れない眠れない

もう君は寝た方がいい 暗闇の中で灯る電子


どうか苦しみを教えて わからせて 繋がせて  

どうかまた声を聞かせて 話して 歌って

どうかその傷口を見せて 撫でさせて 笑って

どうかそれを罪にしないで 許して 弾んで

どうかあなたを忘れないで 覚えていて ふたりで


君からの手紙は 夜露を含んで艶めいていて

だから続けられる言葉を選ぶのに そっぽを向いた

ありがとう 多分ずっとありがとう だから愛してる



どうか苦しみに気が付いて(教えて)

    気付かないで(わからせて)

      気が付いて(繋がせて) 

どうかもう声を掛けないで(聞かせて)

          掛けて(話して)

        掛けないで(歌って)

どうかこの傷口をなぞって(見せて)

     ほじくって(撫でさせて)

        なぞって(笑って)

どうかわたしのことを忘れて(忘れないで)

        忘れないで(覚えていて)

       忘れて(ふたりで思出せる)


星に紛れて 夜にふやけた百文字ちょっと

砂に変わった言葉の数々 関係ないってそっぽを向いた

ごめんね 多分きっと明日はありがとう だからずっと愛してる

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星紛れのテガミは、しののめに融ける 詩一 @serch

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