時代は変われど愛され続けるモノ


前書き


近況ノートにも書いたけど、戦闘国家日本を読んでたら思ってたより日が空いてしまいましたw

まあ、妄想時のワクワク感が減ってペースが落ちてきたってのもありますが…

────────────────────



 さあ!皆んな大好きお祭りの時間だぁ!!



 とまあ、テンション上げ上げで勢いよく叫んだが、全体的な立ち上がりはゆっくりとしたものだ。初めからガンガンに飛ばす奴は真っ先に退場する。

 何故かって?そりゃあ、戦略も立てずに非効率なやり方で自戦力(艦数や資源)減らしてちゃ世話がない。格下相手であろうと最大効率で尚且つ被害最小で切り抜けなければ格上に漁夫の利されて呆気なく死亡である。

 なお、一定の馬鹿は何処にでも存在する。


 この馬鹿共が案外鬱陶しいのだ。普段は復讐が怖くて喧嘩を売れない奴らが、血気盛んに押し寄せてくるから。

 しかも、群れればワンチャンスあるんじゃね?と初日からバフやら修理キット盛り盛りで本拠地に突っ込んでくるのだ。何をどう勘違いすれば二〜三世代、下手すれば五世代以上も離れてる技術力で勝てるかもと決め付けれるのだろうか……?その辺、俺にはさっぱりだ。



「う〜ん……。どうせ今回も馬鹿凸来るんだろうなぁ。射程内に最速で一時間、通常で三時間って所かな?凛…マザーはどう思う?」


「射程内であればその通りでしょう。相手の有効射程なども考えるとプラスで一、二時間ほど前後するかと」



 おっと……。アテレコしてもらってるとはいえ、言い間違えたからか凛ではなく本来の無機質な音声の方で返答が来たぜハハハ。


 しかし、ゲーム内機械知性の中でトップの性能を誇る『マザー・ゼロ』でも同じ答えか。開発者が俺だからってのもあるだろうけど、蓄積データからしても毎回だからだろう。



「となると、だ。拠点周りに配置してる生産プラントやリングワールドなんかも巻き込まれないように回収しなきゃならんか。

 あぁ、あとアレもか。第二要塞として用意してたけど、結局最後まで使わず仕舞いか」


「そうですね。プラントなどは分解し個別で資源管理しておきましょう。リングワールドは衛星砲のみ残し、後は圧縮冷凍処理して分解ですね。

 それに、第二要塞ですか。確かにアレは諸刃の剣でもありますので仕方ないかと」


「さぁ〜て、忙しくなるなぁ。

 最優先指令TP:機甲都デウスにて生存戦TWを開始する!


 戦力集結より各都市の解体と各個撃破を阻止せよ。最辺境に第五防殻より自衛戦力を送り、資源の回収次第隊を組み順次ワープドライブにて移動。なお、ワープゲートは使用せず解体もしくは破壊しろ。判断は各隊の指揮官に任せる」



 総力戦が出来るのはある意味お祭り時のみとも言えるからな。普段は研究に忙し過ぎて撃ち合いに割く頭脳容量なんてもんは無い。

 サーバーには総合力を示すランキングが存在する。その中で戦力が保有する総合力は一定だが、自衛出来なくなった勢力がどうなるかは自明の理である。それが廃人のみのサーバーだと尚更である。



 廃人サーバー:ディストピア

 サーバー上限は人数ではなくクラン単位であり、十万クランという最精鋭のみで構成された魑魅魍魎の地獄である。

 一パーティー:最大六百人、一クラン:最大三千人で編成されている。つまり三億人いる。欠員が出ることなど絶対になく、半年に一回入れ替わりがあるが、ランキング最上位の一万人は毎回必ず生き残っている。


 だが、それでは下位の者の不満が爆発してしまうので、仕方なく導入されているのがお祭り時でのランキング結果による下克上チャンスである。ここで堅実な成果を残せれば『ようこそディストピアへ』となる訳である。



「これで一先ずは様子見かな?」


「そうなります。下手に活動的になり狙われるのも、消極的になり戦力不足と判断され狙われるのも、回避するのであれば最善かと」


「最上位の人間は一定数のプレイヤーから毎回狙われるからね。ファンクラブらしき集団が塗装や段幕掲げて襲ってくる辺りお祭り騒ぎだってのを実感するよ」


「実力に対しての絶対的な信頼による安心感を持っているからこそ、味方ではなく敵側に回るという……未だに人の考えは理解出来ません」


「同感だね。俺の場合は興味ないだけなんだけど、偶に他人の頭の中を覗いてみたくなる時はあるよ」





 イベント開始から一時間後


 みかどが玉座の肘掛けに顔やらを載せてダラダラとミニゲームをして遊んでいると、丁寧なのに巨大な擬音が付きそうなほど勢い良く入り口の扉が開かれた。



「来たよ、来たよ〜!WaveⅠのタイムリミットはもう直ぐだぁ〜」


「はぁ……。毎回言っているでしょう、緊急性があるとはいえ扉は静かに開く様にと」


「え〜?それ言ってんの毎回レイ姉だけじゃんか!ボクはますた〜に怒られた事無いもんね〜ぇっだ」


「ゼロ。私はマスター直属の者がコレでは品がないと言っているのです。上に立つ者としての自覚と崇敬の念を欠かさずですね……」


「レイ姉は堅すぎると思うなぁ〜」



 二人共が綺麗な銀髪を靡かせ、口喧嘩しながらも軽い足取りで玉座前まで来た。姉弟の仲が良いのは良い事だと思いつつも、手元の電子ゲームを中断して座り直す。



「進捗はどんなもんだ?」


「はい。私が担当した解体作業については全て滞りなく終了いたしました。回収した資源については御命令の通り即復元出来るよう個別に格納しています」


「ボクの方も問題ないよ。格納庫内の武器・弾薬・燃料の整理は完璧だし、ますた〜用の食料備蓄や宝物庫などもばっちしさ」


「ま、そっちは元から心配してないから良いが、そろそろWaveが来るって?」


「そうだよ〜。予想した通りの時間だったね。開始から最速で来たみたいだから、あと一時間後には相手の射程圏内に入っちゃうよ。

 でも、足並みがバラバラだから一網打尽にする為には二時間後が目安だね」


「ゼロの言った通りです。相手は愚直に最短経路で此方に向かって来ています。

 いくら此方が交易の為にセンターコロニーから近いとはいえ、最上位ランカーの勢力域で罠などの警戒はしても良いと思うのですが……。」


「普通はそうだぞ。相手の勢力域で真っ先に警戒するのは小惑星やデブリに擬態させた罠だからな。でもな、忘れちゃならねぇ。このイベントはなんだ……。


 相手はな、最上位ランカーなんだから下位の自分達に攻撃させないまま撃破するなんて面白くない戦いなんてするはずない!

 様式美やエンターテイメントを無視して何が最上位だ!廃人なら全て受け切って魅せろ!!


 ってな具合に勝手な押し付けをせがんでくるのさ。俺が上位三人との戦争引き受けてんのに初動が遅々としてんのはそれもある」


『なるほど。確かに、人々は高みに居る者に対して自分には無い万能性や夢を見るもの。

 そこから考えるとすれば、まだ理解出来ます。しかし、此方もランキングや下剋上を背負っている以上、全力での戦闘を禁止されているのは納得がいきませんね』


「公式もこのイベントに関しては黙認してるから、普段から戦争しない分これぐらい余裕でこなしてみろって事だろうな。

 実際に欠伸が出るほど余裕だから別に問題ないけど……今回は参加人数多いって聞くから馬鹿凸はWaveⅢまであるかもな」



 毎回、前回とは時間が空くから反応が違うとはいえ、同じ様な説明を何度もするのはどこか悲しいものがあるな……。


 バックアップが取られていると言うことは、このイベント開催期間の記憶は消えてなくなるのと同義だ。

 このゲームにプレイヤー以外の知性を有する存在を導入する時に決められた制限だ。

 知性は自分の意識の外から片手間で記憶や存在を改竄出来る存在が居ると理解した時に、暴走する可能性が非常に高いからである。




────────────────────

後書き

近況ノートには進捗と作者が読んでる作品の簡易感想やらを書くと思うので興味があればどうぞw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ちっぽけな技術者は今日も宇宙を漂う 黒神 金龍 @Kurogami_Kanetatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ