アンサンブル
目の前のテラス席に座る頭に三本つのが生えた人が、読み終わったと思しき文庫本をちぎってかたわらのフィッシュフライバーガーに挟み込んでいる。その後、彼はおいしそうに目を細めながらバーガーを咀嚼し始めた。それを眺めつつ、僕は自分の『読書』に戻る。
いろんな国の偉い人が地球外生命体の存在を認め、積極的に惑星間で交流をするようになってから、こういう光景はよく見るようになった。いろいろな文化の違いがあるなかで特に読書という行為はずれが大きいらしい。本を読むだけの地球人とは異なり、その後で摂食したり複写したり水で濡らして粘土みたいにすることを読書と呼称する人々もいた。そもそも読まずに『感じる』だけのものもいるらしい。
書店と喫茶スペースがそれぞれ半分ずつ設けられたこの店の中は、読書の音で満ち満ちている。紙の乾いた音、レタスとバンズが歯で裂かれる音、桶の中で水が跳ね回る音。そこで一緒にページをめくっていると、僕は『調和』なんてうわついたきれいごとが、本当にあるんじゃないかと信じたくなってしまう。
(お題……僕の/私の本屋さん)
三杯酢でバタフライ 大滝のぐれ @Itigootoufu427
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