徹底した一人称の窓から見た異世界の物語です。語るランスくんの抱えた背景や立ち位置も含め、読者は手探りしていくしかありません。
現実の世の中同様不条理だらけで、そうそう都合の良いカタルシスなんて転がってません。まるで、ぼくらの住んでるこの世界のある一面を切り取って描写するという目的で書かれているかのようです。
それにそんなに一朝一夕に物事が動くわけじゃあないんで、軽小説だと思っていちいち手っ取り早く納得させてもらえる気でいる人は、残念ながら、おそらく向いてないです。ストレスたまりますので。そしておそらく、それはこの先もずっと変わりません。
もうちょっとディスっとくと、誤字脱字とかも「書き殴り感出してる?」てくらい多いし、一人称世界なので読者の盲点はなかなか叙述してくれません。質問できないのは小説だから仕方ないよね。あんまり真面目に感情移入して読んでしまうと、冷静な想像力を失って表層で辛い目に遭いそうです。
設定の恣意的なところを指摘する向きもちらほらありますが、設定というものはすべからく恣意的なものでありますし、その上に立つストーリーがハチャメチャなのかというと実は、ランスくん(日本語でいうと「槍」すなわち香車)の性格と同様にスジはきちんと通っています。
毎話のコメント欄はストーリー進行がもどかしいとの嘆きで阿鼻叫喚ですが、往くも留まるも読み手じゃなくてランスくんにとってはたぶんいちいち意味のあることで、絶対一人称ランスくんのためにあるのですきっと。だから、「この小説は読者ファーストでない」という批判がもしあれば、当たってるんだろうとぼくは思います。それがどうしたかはまた別にして。
なにより世界観の設定が秀逸なので、広いダンジョンにランプ一つで放り込まれたとでも思って冒険を楽しみたいです。(ちなみに物語中にダンジョンの場面は登場していません。今のところはしようがないのです。)
大丈夫、一緒に放り込まれたランスくんも同じく初見とはいえ、彼は準備万端、無敵の過剰装備らしいので。しらんけど。
個人的にここで一二に好きな話なので、作者さんがこれからもぜひ心ゆくまで書いていってくださるとうれしいです。
唯一の心配は、ランスくんの祝福(いわゆる成人)の向こうにストーリーはあるのだろうかということですが、心配しても仕方ないので、今を楽しもうと思います。(^^)