特別編 メリークリスマス
1年前の12月25日
下のリビングで妹と母さんがバタバタしているのはきっと今日がクリスマスだからなんだと思うが残念なことに俺にはそんな余裕もなく机の前で参考書達とにらめっこをしていた。
まぁとはいえそれ自体はいつもの事なのだが今の時期は本当に余裕が無くなる。
というのも今年は高校受験があるからだった。
普段から勉強はしているのでマジでやばいという程ではないのが救いだった。
そんなこんなで俺が勉強をしているとインターホンがなって母さんが返事をしながら玄関へ向かった。
まぁなんか近所の人だろうと思って意識を戻そうとしたら大きな声で名前が呼ばれた。
「りっくん!寧々ちゃんたちがきてるよ!降りておいでー!」
なんで寧々たちが?と思いながらも階段をおりると寧々と敦也はもう既にリビングにいた。
「何しれっと家上がってんだよ・・・それに勉強はいいのか?」
「そんなに勉強しすぎるとダメだよ!バカになるよ!」
「馬鹿なお前はもうこれ以上馬鹿にならんわ」
「うっわ、あっきーひど!お母さん酷くないですかー?」
「酷いよね〜りっくんダメだよ?人にそういうこと言っちゃ」
「それに今日はあ母さんからお誘いが来たから来たんだよ!」
誘うなんて話は聞いてないしあんたらが連絡を取り合ってることにまず驚きだ・・・
「敦也もか?」
「いや、俺は寧々を誘おうとしたら逆にここに連れてこられた」
「な、なんかごめんな・・・」
せっかく勇気を出しただろうにうちの親のせいで・・・
その寧々は今紗夜と話で盛り上がっていた。
「でね?でね?そしたら律兄がね!」
「へー、あっきーってそんなことするだー!」
なんのことかは知らんが目の前でそういう話をするのはどうなんだろうか・・・
「さて、あと今日来てくれるのは確か凛ちゃんだけかな?瀬名ちゃん達は来れないみたいだし・・・」
「ママ、瀬名ちゃんってだれ?」
「あれ?さーちゃん覚えてない?あぁでもあのころはまだ小さかったもんね〜お母さんの友達の子供だよ。
りっくんは覚えてる?」
「あーなんか覚えているような覚えてないような」
「妹の雪ちゃんはさーちゃんと同い年なんだよ?」
「そうなんだー!今度会ってみたいー!」
それからは凛も合流したことでより賑やかになって勉強どころではなかった。
「じゃあみんなで一緒に!」
「「メリークリスマス!!」」
◇▢◇▢◇
「白愛・・・起きてる?」
ノック音と共に聞こえてきたのは母の優しい声だった。
「・・・・・」
「白愛、ちょっとカーテンを開けてみて?」
ドア越しで聞こえるその声に促されいつも閉め切っているカーテンを開けると自分の髪と同じ真っ白な雪がパラパラと降っていた。
今こうして外を見るまで外がもう冬に移り変わっていっていることなど気づかなかった。
寒さなんて自分の
だってもう既に・・・
「白愛、下を見てみて?」
そう言われ私は下を除くと道路でメリークリスマスと書かれたプラカードを持った父が手を振っていた。
その隣には昔一緒に作ったような雪だるまも置かれていた。
「今日はもうクリスマスなのよ。ご馳走を作ったから下に降りて一緒に食べましょ?」
母も父もいつも私に優しくしてくれている。
それは分かっているはずなのにその温かさは私の心にまで届いてこなかった。
あれからもうそんなに経ったんだという実感はまだ無い。
長いようで短い時間だけが過ぎていく。
「プレゼント置いておくわね」
部屋から連れ出すのを諦めた母はそういうと下に降りていく。
それを確認した私はドアを小さく開けてプレゼントを部屋の中に入れる。
でもそれを開けるのはきっとまだ先だろう。
いや、もしかしたら開ける日は来ないかもしれない。
だって・・・
そう思っていると1枚の小さなカードが落ちてきた。
きっと開けないかもしれないと思って仕込んでおいたのだろう。
そのカードにはこう書いてあった。
「・・・メリークリスマス・・・・・」
白髪の天使様には光がない takoyaki @takkoyakki
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