稲村先生のエグい生い立ちこそ、むしろ私の性癖です。

特殊性癖の殺人事件を解決する、特殊性癖の天才犯罪心理学者・稲村秋人シリーズの第2弾。
今回は女性の遺体が破廉恥な改造ウェディングドレスを着せられるという連続殺人事件です。

相変わらず欲望全開で綴られる怒涛の思考展開が最高に面白いです。
稲村先生がこうなるに至った生い立ちにも触れられ、彼の為人への理解が深まりました。

フェミニストの会合へ参加するシーンでの見解が秀逸でした。
特定の人や物事をラベリングして、外側から考察・批判することは、意外と簡単です。
もしかしたら我々も、『特殊』なものを気軽に断罪しているかもしれない。
『普通』はこうあるべきという基準、それがただの個人の主観であることにも気付かずに。

稲村先生は、自分が『特殊』であることを自覚した上で、『特殊』な事件を起こした犯人の心理に切り込んでいきます。
誰しも歪みを抱える可能性がある。『普通』ではないということは、普通にある。
それを受け入れるのか、拒絶するのか。
犯罪者の心の闇を暴く、解決編は圧巻です。

一見イロモノっぽいラベルの貼られた本作ですが、大変読み応えのあるミステリ作品でした!

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