第6話

ルシエルとシモンは最奥の扉を開き中に入ると扉はひとりでに閉まる。するとあたり一面真っ暗になり何も見えない。だが次の瞬間ポツポツと部屋に設置されていた蝋燭に火が灯り当たりを明るく照らした。

二人の目線の先には7つの石像が並んでおり、その全てがドラゴンの形を形どっていた。

ルシエルとシモンは石像にむかい


「久しぶり」

「失礼します」


と声をかけた。

するとそれぞれの石像が光を放ち、中から小さいドラゴンが飛び出した。それは薄っすらと透けておりまるで魂が飛び出したようだった。

ドラゴン達は空中に浮遊しルシエルとシモンを見据えると笑み(?)を浮かべ喋りだした。


“久しぶりじゃないか!!ルシエル、シモン!!元気してたかよ?”

“最後に来たのは一年ぐらい前だったかしら?”

“ホッホッ人間は年を取るのが早いのう、もう立派な青年じゃて”

“今日はどうした?誰かにいじめられたか?”

“なんだと!?俺達のダチを苛める奴は誰だろうと許さん!!おい、誰だ?俺がぶちのめしてやる!!”

“落ち着きなさいな、まずはルシエルちゃんの事情を聞かないと、お灸を据えるのはそのあとよ〜ふふ、”

“お前も落ち着けよ!!ルシエルはまだ何も行ってないぞ?”

「あはは!!皆相変わらずだね!!」


それぞれ騒ぐドラゴン達を見てルシエルはお腹を抱え笑いだした。

楽しそうなルシエルを見てシモンも笑みを浮かべる。先日の事件からルシエルは取り繕ってはいたが悲しんでいた事をシモンは分かっていた。だが今ルシエルは心の底から笑っている。その事がシモンは心底嬉しかったのだ。


「まぁ、落ち着け、今日は久しぶりに予定が空いたんで足を運んだのさ、皆元気で安心したよ」


ルシエルの言葉にドラゴン達もまた笑った。そして代表して赤い光を発するドラゴン、ジークが口を開いた。


“当たり前だ、俺達はここに封印されてるドラゴンだぞ?封印されているのだから本体は寝ているし飯もいらん、年もとらんからこうして変わらずにお前たちを出迎えられるというわけだ。”

「それもそうか、…前から聞こうと思ってたんだけどその封印って解けないのか?」

“封印自体は解こうと思えば解ける。だが、ここにあるのは我らの魂のみ、肉体がないのだ、なので解いた場合何かに取り憑かなくては魂を維持できぬ、”

「え?肉体ないの?」

“うむ、話してなかったか?我らを封印した似非勇者めが我らが復活できぬよう魂と肉体を分け、我らの魂をここに、肉体を別の場所へと封印したらしい”

「ん?もしかして以前にランスロットが倒したドラゴンってお前らの誰かの身体って可能性があるのか?」

“それはない、肉体はあくまで肉の塊、魂なき肉体が動く事などありはしない、それに仮に動いたとしても我らの肉体が人間ごときに倒されるものか”

「ならよかったよ、友達の体を弟が傷つけたなんて事になったらどんなに謝ってもあやまりたりないからな、というかお前らそんな強いの?さっきも言ったけど弟のランスロットが100匹のドラゴン相手に勝利してるんだけど…」


ルシエルの問に反応したのは黄色い光を放つドラゴン、ライウだった。


“我らをそこら辺にいるドラゴンと一緒にするでない!!我は龍神だぞ!!”

「リュウジン?ドラゴンの神様?」

“さよう!!我らは誇り高き龍神!!何人も我らに適う者はいない!!”

「でも封印されてるよな?」

“ゔ、そ、それは”

“お恥ずかしい話、罠にかかってしまったのです”


詰まるライウの代わりに答えたのは水色の光を放つドラゴン、ディーネだった。


「罠?」

“ええ、私達は皆お酒に目がないのです。ですからある日勇者を名乗る者が私達を宴会に招き大量のお酒を振る舞いました。私達は皆宴会に合わせ体を人形にし人間達と楽しい一時を過ごしたのです。ですが、それが過ちでした。お酒は好きですが別に酒豪というわけでなく酔った私達はそれぞれ眠ってしまったのです。そして気づいたら…”

「封印されていたと?」

“ええ、その通りです”


ドラゴン達は恥ずかしそうに顔を伏せた。


「というか人形にもなれるのですか?」


空気に耐えきらずシモンが口をだす。

それにいち早く反応したのは緑色の光を放つドラゴン、ウィンだった。


“ああ、龍神だからな、形は何にでもなれる。それこそドラゴンから人形、動物にもな、大きさも自由自在さ、だから恐らく俺達の体も当時のまま封印されているはすだ”

「人形ですか?」

“たぶんな、たたあの時は皆酔っ払ってたから途中で形を変えてなければだが……”


ウィンの言葉になんと返していいかわからないシモンも黙ってしまいまた沈黙が部屋を包んだ。


“ま、まぁ、今はいいじゃないか!!とにかく我らは封印は解こうと思えば解ける!!だが解けば代わりの肉体が必要な為今は解かぬというわけだ!!” 


開きなおったのかジークがそう締めくくり皆苦笑いでそれに答えこの話を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る