第2話

父からのお小言を受けた数日後

ルシエルは馬車に揺られ城下に下りていた


「~♪」

「ご機嫌ですね、殿下」


話しかけたのシモン、ルシエルの側近で幼い頃より隣にいる親友だ


「わかるか、シモン」

「ええ、顔がにやけてますよ」

「そりゃな~、今から会うのが愛しの婚約者だからな!!」


そう、今日は週に一度も婚約者と顔を会わせる日なのだ、俺の婚約者カロリーナ・バルア公爵令嬢、

輝く金色の髪を後ろに流し、藍色の目をした彼女に子息令嬢顔合わせの日に5歳の俺は一目惚れし、この10年互いに想い支え合って生きてきた。ランスロットに対してひねくれ、自暴自棄になりそうだった時もカロリーナがいたからこそ俺は道を踏み外すことなく生きてこれた。カロリーナがいなければ俺は今頃実の弟を暗殺しようと躍起になったり人にとうてい言えないような事をしていただろう。


「はぁ、早くカロリーナに会いたい‥‥」

「ふふ、もうすぐ着きますよ、今日の為に仕事も前倒しで済ませましたし1日バルア公爵令嬢と過ごせますよ」

「ああ、今日の為にほんと頑張ったよな俺?」

「ええ、寝る間も惜しんで執務や巡視など頑張っていましたからね~」

「だよな!!頑張ったんだからご褒美があるよな!?今日はどうしようかな~?カロリーナと街に行ってデートでもするか?シモン、どこおすすめの店はないか?」

「そうですね‥‥」


カロリーナの待つバルア公爵家への道のりをルシエルは愛しの婚約者と1日どうやってイチャイチャするのかを想像しながら進むのであった。


⭐⭐⭐


馬車がバルア公爵家に着くとおかしな事に誰も出迎えに出てこなかった。


「?シモン、今日来ることは事前に伝えてあったよな?」

「ええ、たしかに今日この時間をお知らせいたしましたが‥‥」

「まぁ、いい、なにかあったのかもしれない、とりあえずいつもの温室をに向かうか?」

「‥‥そうですね、行って見ましょう。道中誰かに会うかもしれませんし」


俺たちはエントランス横にある小路から庭へ続く道を歩きだした。もう10年も通っている屋敷だ、俺はシモンを伴い屋敷の庭の入り口に着いた。

そして小路から庭へ足を踏みれるそこには愛おしカロリーナがそこに立っていた。

俺のいる方とは反対を向いているがあの後ろ姿は間違いなくカロリーナだ!!俺は後ろから驚かそうと思い音を立てないように一歩を踏み出し


「カロリーナ・バルア公爵令嬢!!私は貴方を幼少の頃よりお慕いしていました!!どうか私の妻になって頂きたい」


その時本来この場所にいない男の声が聞こえルシエルの足が止まった。


は?幻聴?

今なんて言った?

可笑しいな?いつ俺の耳は老いたんだ?

まだ15だ?はははっ


ルシエルの頭が混乱していた。

よく見ればカロリーナの前には片ひざをつけ、薔薇の花束を持ってキメ顔(?)をしているランスロットがいた。

その姿を見てさらに混乱するルシエル


そんなルシエルを置いてきぼりに場は動く


「ランスロット殿下、私も貴方のことをずっとお慕いしていました。」


は?

今なんて言った?

カロリーナがランスロットを?

慕う?したう?下請け?なにか仕事でも頼まれてたのか?


ルシエルの脳は現実逃避を始めていた

だが状況はルシエルを待ってくれない


「では!!」

「ですが、私はルシエル殿下の婚約者です。ですから‥‥殿下のお気持ちにはお答えできかねます。」


うんうん、

そうそう、かろりーなはぼくのこんやくしゃ?だかららんすろっとくんのにはならないんでしゅよ?


とうとう頭がいかれたらしい‥‥


「それなら大丈夫です!!これを!!」


するとランスロットは用紙をカロリーナに差し出す。


「‥‥!!これはっ!!」

「兄上との婚約破棄と私との婚約書類です。

国王である父、バルア公爵のサインもあります。これで正式私と貴方は婚約できるのです!!」


心のそこから嬉しそうな笑みを浮かべるランスロット、カロリーナは書類を受け取り端から端まで何度も読み直した。


その姿はまるで重要な外交で書面を確認する外交官のようで

長年想い続けた男性と結ばれる為に委細の漏れもないか?

熱心に確認する彼女の姿にルシエルは彼女も自分ではなくランスロットを選ぶんだなと絶望した。


そして膝から崩れ落ち、地面に踞ると涙を流したのだった

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