第3話
「なぁ、俺、前世は極悪人だったのかな…」
「殿下…」
ルシエルとシモンはなんとか誰にも見られないで帰路についた。
今は馬車の中、ルシエルは窓から見える景色を眺めながらボソッ呟いた。
それはまるで死期を悟った入院患者のようであり一緒の空間にいたシモンが涙目になりながらも主であるルシエルの名を呼ぶ
「きっとそうだよな?だから弟と比べられ、父や母、周りの大人達から見放され、何をしても叱咤、苦笑、蔑られ、挙げ句最愛の婚約者までも弟に取られる。しかも以前から慕っていた?いつから?あんなに俺と愛を語ったのは誰だったのだ?もしかしてキスもしてくれなかったのはそれか?結婚式まで大切にしておきたいからって言っていたじゃないか!!手も握らせてくれなかった、なにが恥ずかしいだ!!あれもこれも全部嘘だったんだ!!」
ルシエルは段々と声荒げ叫び出した。幸いルシエル達が乗っている馬車は王族が乗る馬車だけあって防音は完璧な為外に声が聞こえることはない、さらに言えばこの馬車はお忍び仕様のため認識阻害の魔法が施されており民から馬車の中で暴れるルシエルが見えることもない
「だいたいランスロットも兄の婚約者に横恋慕って普通するか!?あいつがなかなか縁談に首を振らず功績を立てまくったのはこのためか!?それじゃいつから?まさか5歳の時か?あれから変わったんだ、ありうる。というか怖いわ!!そんな長年思っていたのか?よく俺達の茶会に顔を出すとか城下町散策とかで出くわすとか思っていたけどさ!!まさかこう来ると思うか?え?着けられてた?やばいアイツストーカーじゃん!!英雄じゃなくてストーカー、やばいちょっと笑える。てか俺そんなに嫌われてた?俺的には兄を慕うかわいい弟だったのに?あれ?演技?やばい!!めちゃくちゃ技巧派じゃん?主演男優賞いや、もう全部あげるわ!!」
ルシエルはながながとよくわからない事を言い切るとはぁはぁと肩で息をする。そして少し落ち着くとルシエルは立ち上がり叫ぶ
「あったまきた!!そんなに必要ないなら全部捨ててやる!!王位も婚約者も全て!!」
ルシエルは決意を込めて天高く腕を突き上げた
「いったっ!!」
そして馬車の天井の装飾にあたり突き指するのであった…
ドジである。
だがルシエルは痛む手を擦りながらこれからのプランをかんがえるのであった。
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