第4話

「さて、まずどうするか?」


ルシエルは自室のソファに座り手を口に当てながら悩んでいた。

その対面に座るシモンはオロオロと不安げに主君を見ている。


ルシエルは考えた

どうすれば上手くいくか

馬車の中でも考えたが仮にこのままカロリーナ、いや、バアル公爵令嬢と婚約破棄になる場合恐らく高確率で自分は悪者にされる。

ランスロットはあの場で


「兄上との婚約破棄と私との婚約書類です。

国王である父、バルア公爵のサインもあります。これで正式に私と貴方は婚約できるのです!!」


と言った婚約解消ではなく婚約破棄と、なぜ解消にしなかったのか?それは自分とバアル公爵令嬢の婚約は何やかんやで10年ぐらい前にされた物で貴族や民達に勿論周知のこと、仮に婚約解消したあとランスロットと再度婚約すればランスロットを狙っていた令嬢やバアル公爵令嬢をよく思わない者、そしてバアル公爵と敵対している派閥から謂れもない誹謗中傷がバアル公爵令嬢に降り注ぐ、それはもちろん婚約破棄も同じだ。そんな事をあのバアル公爵令嬢大好きランスロットや娘大好きバアル公爵が許すはずがない。

だからきっと奴らは俺を悪役にするはずだ、

例えば、婚約者(俺)から不当な扱いを受け傷ついた令嬢(バアル公爵令嬢)を守る為、その婚約者の悪事の証拠や証言を集めヒーロー(ランスロット)が告発、もちろん令嬢は無関係な物をだ。


そして悪役(俺)から開放された傷ついた令嬢をヒーロー(ランスロット)が深い愛情を持って癒やし二人は末永く幸せに暮らしましたとさと

ついでにそんな二人が治める国も平和でしたと


…安っぽいラブドラマだよ、ほんと…


ちなみに裁かれた俺は廃嫡、あとは死ぬまで幽閉かな?


ルシエルは深く息を吐く


はぁ、読めちゃったよ…

話の全貌が…予想だけど…

書類を確認できなかったけど、ランスロットが父上のサインがあると言っていたから父上だけでなく母上、それと主だった上層部、宰相・騎士団長・魔術師団長あたりは知ってそうだな…


……皆、俺の事嫌いだな……やべ、涙が…


ルシエルは感傷にひたると徐に正面で未だオロオロしているシモンへと目を向けた


「?」


いきなり視線を向けられシモンは困惑しながらも首を傾ける。


俺の考えだと

恐らく高確率で実行犯にされるのはコイツなんだよな〜

今や唯一の側近で普段からずっと一緒にいるコイツを実行犯、もしくは共犯にしないと矛盾が生まれる。それにコイツは俺が唯一自分で見つけた側近で元は平民、さらには孤児だった。なので処罰にしても貴族のイザコザが入ることもない、


自分はまぁ、王族だし?さすがにいきなり処刑とかはないだろうからいいが、シモンは真っ先に殺される。皆が離れていく中コイツだけはどんなにいいオファーがあっても頑なに俺の側にいてくれただからみすみす殺させる訳には行かない。


ルシエルは立ち上がりシモンに命令を発した。


「シモン、明日出かけるぞ」

「え?しかし殿下執務が……」

「あ」


そこルシエルは思い出した

今時間があるのは執務がないからだ

本来なら今日も執務があったはずだが今日はバアル公爵令嬢とデートの予定だった。その為ルシエルは死ぬ気で執務を前通しでやり今日の時間を確保したのだ、だから今頃バアル公爵令嬢と楽しく過ごすはずだったがあんなことがあって忘れていた。


だがルシエルが悩んだのは一瞬だった。

今まではなんとか父や母、周りの貴族達に認めてもらいたい、そして何より愛していたバアル公爵令嬢の為に努力していたが今となっては全てどうでもいい、どうせ周りは自分を見限っている今更執務を期日内にやろうが遅れようが言われる事など同じだ。


それに向こうは俺の粗を探している。

ここは捏造する手間を一つ省いてやろう。


「構わない、明日は出かけるぞ、」

「……畏まりました」


シモンはルシエルの顔を再度見、ルシエルの決意を感じたらしく頷いた。


「して、どちらに?」


シモンの問にルシエルは笑みを浮かべ


「あの人達の所だ」


その一言でシモンは合点がいったらしく頷き笑みを返す。


さぁ、始めようか?

俺の廃嫡フリーライフ計画を!!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る