そんなに言うなら王位も婚約者も捨ててやるよ!!

伊佐波瑞希

第1話

ルシエル・フォン・トリスタン

それが俺の名前だ

母から譲り受け夕焼けのような優しい赤髪と

父と同じ王族の象徴と言われるブルーアイ


そう、俺は王族だ

それも第一王子

王位継承権第一位、未來の国王

以前はそう言われていた‥‥


だが今は‥‥



「まったく、お前はこんな事もできないのか!!」

「申し訳ありません‥‥」


俺は今父、国王の執務室で怒鳴られている。

大きく声を張り上げるのはこの部屋の主であるトリスタン王国国王


ルドルフ・フォン・トリスタンだ


父は謝る俺に向かいこれ見よがしに大きなため息をつくと毎度お決まりの台詞を口にする。


「弟のランスロットならこんな些事簡単に片付けるものを‥‥」

「‥‥すいません‥‥」

「もうよい、下がれ」


ただ頭を下げ謝る俺に向かい再度大きなため息を吐き退室の指示を出す


「‥‥はい、失礼します‥‥」


俺はまた頭を下げ執務室を後にする。


ランスロット・フォン・トリスタン


俺の一つ下の弟で第二王子だ

ランスロットは10才の頃まではわがままの癇癪持ちで城の誰からも期待されていなかった。

だが10才を迎えた日、高熱を出して倒れた。

目覚めたランスロットは人が変わったかのように穏やかな性格になり、様々な才能を開花させていった。騎士団の訓練に参加し、どんどん実力をつけ今では騎士団から絶大な信頼を受け、将来は騎士になるのか?と思えば次は魔法師団の研究塔へと行けば画期的な術式を開発発表、運用した 。魔術師達はランスロットが開発した術式や論文に感銘を受け、ランスロットが魔術師になることを熱望した。さらに街に無断で行きどこからか孤児を拾って来たかと思えばその孤児達が様々な分野で活躍し今ではランスロットの側近になっている。つまりランスロットは短い期間で武術・魔術・人材確保といった分野で輝かしい功績をあげたのだ。

これには今までランスロットの所業に頭を抱えていた父も母も喜んだ。もちろん俺も喜びランスロットを弟に持てて鼻高々だった。

だがそれもすぐに終わった


始まりは王公貴族が12才から通う学園、ルビア学園にランスロットが入学した年だった


入学してしばらくは何も起こらず平和な日常だった、だがある日ランスロットは偶然虐められていた令嬢を助け、その日からおこる数々の事件を瞬く間に解決していった。

ある日は辺境に出現した高レベルダンジョンを制覇し、ある日は密輸組織を潰し、ある日は怪しげな儀式をしていた団体潰し、またある日空から飛来したドラゴン討伐etc

そんな学園生活(?)を送れば周囲は当然ランスロットを英雄扱いする。今では国内の貴族令嬢から隣国の王女、果ては亜人から是非縁談を!!と毎日釣書の山が来るほどだ。


そして段々と回りが俺とランスロットを比べ始めた。曰くどちらが国王に相応しいか?と、それは国王である父も同じだった、少しずつ俺とランスロットに仕事を振り分け、それぞれの出来を比べるようになった。


そして最近では先ほどのようにランスロットが上、俺は下と見るようになり、いくら俺が仕事を成功させても誉めてくれなった。

できても

「ランスロットのがもっとうまくできた」

「ランスロットのがもっと早くできた」

「ランスロットならこうした」

と二言目にランスロットランスロット!!

もう頭がおかしくなる。


俺は父の執務室を出て深く息を吐いた

そして顔をあげ自分の執務室へと歩きだしたのだった。


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