第7話
“して、ルシエルよ、そろそろ本題に入るがいい”
そう口にしたのは茶色光を放つドラゴン、ガイアだった。
ルシエルはガイアの言葉を聞くや周りのドラゴン達を見渡す。どのドラゴンもガイアの言葉の後では先程までの陽気な雰囲気は消え、真剣な眼差しをルシエルに向けていた。
ルシエルはしばらく黙るがやがて大きく息を吐く
「ふー、やっぱりお前らには隠しごとはできないな…実は」
ルシエルは今までの自分を取り囲む周りの状況、さらに先日のバアル公爵家事件、そしてこれから自分に起きるであろう予想をドラゴン達に話した。
ドラゴン達は皆黙ってルシエルの言葉を聞き、ルシエルが全てを話し終え口を閉じるや否や一匹のドラゴンが口を開いた。
透明だがキラキラと光を放つドラゴン、シャインだ。
“人とは愚かですね、ルシエルは何も悪い事をしていないのに、たかだか数回活躍した弟へすぐ乗り換えるなど…反吐が出る!!”
「いやいや!!その数回で何度国が救われたか」
“いや、シャインの言うとおりだ、ルシエルは別に悪事を働いた訳でなく、王子としてできることをしていた。なのに今まで問題ばかりお越していた弟が活躍しただけで今までがんばっていまルシエルを見限るとはなんと愚かな…ゴミ共め”
“仮にほんとに弟により国が救われたのならばだ、弟を褒め兄を見下げるなど言語道断!!どれ、俺が一つぶん殴ってやる!!”
シャインに続きジークとライウが口を開いた。
二匹とも怒り狂って何もない空間を殴る仕草をする。
“私としてはその元婚約者がムカつくきますね〜私達のルシエルにこのような仕打ち…生まれてきた事を後悔させたいです。”
“それなら俺も乗るぜ?話を聞くやどうもその女はルシエルを見限りクズ共が褒め称える弟に乗り換えやがったからな、尻軽女が細切にしてやりてぇ”
ディーネとウィンはバアル公爵令嬢へ怒り心頭らしく、ウィンは掌に小さい竜巻を作り愉快そうに笑っていた。
“殺るか?”
そして今まで黙っていた黒い光を放つドラゴン、エンが口を開くや他のドラゴン達は
“おう!!”
“「「やめろ!!」」”
勇ましく雄叫びを上げる6匹のドラゴンを唯一静観していたガイアとルシエル、シモンが必死に止めるのであった。
☆☆☆
なんとか6匹を止め、ルシエルは本題にはいった。
「実はな、廃嫡自体は別にいいんだ、」
“なに?泣き寝入りするのかよ?”
ルシエルの言葉に真っ先に反応したのはライウだ。
「いや、そうじゃない、廃嫡され次第俺はこの国を出ていこうと考えている。この国には俺の居場所はないからな、」
“だが、廃嫡されたとしてルシエルは王族、国から出すかしら?私なら幽閉して、やらせても問題ない仕事を振り一生飼い殺しにするわ”
“うわ、ディーネの姐さんらしいねー”
“ウィンなにか言ったかしら?”
“なにも言ってません!!”
「そこは考えがある、シモンの闇魔法を使い城から脱出する。」
“うむ、いい案だが城から居なくなればすぐに追手がかかるのではないか?逃亡生活は大変だろ?”
「そこは…まだ考えてない」
“それにね、恐らくルシエルが捕まると同時にシモンも捕まるのでなくて?ルシエルの共犯として最悪ルシエルは幽閉、シモンは処刑かしら”
「え!!私、処刑ですか!?」
「だよな、だからそれでお前らにお願いがあるんだ、」
“願い?”
「ああ、今日からシモンをここで預かってほしい、状況次第だが、そのままここで暮らす許可をくれ」
「殿下!?」
“なるほど、シモンをここで保護し、ルシエルが幽閉された後シモンが救出に向かうと?もしも救出が困難な場合、ルシエルはクズ共の思惑通り飼い殺し、だが、シモンはここで平和に暮らせる。この場所は立入りが禁じられている。クズ共もまさかここでシモンが生活してるとは思うまい、森には食べれる木のみや川、魚などもいるから食うものにも困らんしな、”
“それにシモンの魔法なら熱りが冷めた頃に隣国にでも行けば普通に生活できるものね?”
「その通りだ、だから頼む!!」
ルシエルはそう言うや地面に額をつけ頭を下げた。
「殿下!!」
シモンはすぐにルシエルを立たせようとするがルシエルは一向に動かず頭を下げ続けた。
ドラゴン達はその様子を黙って見る
そして
「俺の、俺の友をどうか守ってくれ!!これこの国で俺が友と思えるお前達にしな頼めないことだ!!だからどうな頼む!!俺を、俺を友と思ってくれているのならどうか、どうか!!」
「…殿下…殿下!!」
「え、ぶっ!!」
シモンは急に立ち上がりルシエルの脇腹を蹴り飛ばした。ルシエルは不意をつかれなんの防衛もできず数メートル先の床に脇腹を抑えながら倒れた。
“え?”
これにはドラゴン達も驚き、皆愕然と口を開いた。
そんなに言うなら王位も婚約者も捨ててやるよ!! 伊佐波瑞希 @harukikouhei
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