第10話
後、これは風の噂で聞いた話。
ユーコの女友達と街でばったり会ってしまったときに、ユーコの近況を聞いたのだが、
とゆーか、ユーコの女友達が勝手にペラペラ喋ってくれた。
喫茶店にて。
アイスコーヒーを飲みながら俺は
彼女の話に耳を傾けていた。
「ユーコったらね、ぜんっぜん、デビューできないからホスト通いして自分のこと慰めてたみたい。ほら、ホストって、優しい言葉しかかけないじゃない?だからさー、私もユーコとの付き合いで、ホストクラブ行ったことあるけどさー、かなり、ナンバーワンホストに貢いでたわよ...」
「それでシンジくん聞いた?その額?」
「ああ...なんか、一千万とかなんか言ってたな...」
「一千万返したいとかなんとか話してた...」
「実はね...まだあるのよ...」
「まだある?」
「ユーコ、韓国で整形を繰り返してさー、
芽が出ないのは、自分の顔のせいだって
思い詰めちゃってさ...」
そう言えば...
この前、家に訪ねてきたときに見た
幼馴染の顔は。
何だか、昔の面影はまるでなかったな。
目は大きく感じたし。
鼻も高く感じた。
唇はぽってりしてた。
でも。それで、
綺麗な顔だったか?と言われれば、ちょっと可哀想だが、顔をいじり過ぎたのか、
俺の感想は老けて見えた...だ。
ユーコは間違ってる。
磨くべきは。
更なる声量、また、歌える音域を増やす、
そして、綺麗な高音ボイスを出せるように
なることが先決だと思う。
俺はハルのお母さん、という
いい先生に出会えたから飛躍的に成長したが、
ユーコはそんな内面的な努力よりも、
外面的な努力に金をかけたみたいだった。
「整形ってお金かかるじゃない?
それを何回も繰り返したとなれば...
自ずと自己破産の道よね...」
「で、自己破産したのか?ユーコは?」
「するみたいよ。昨日、スーパーで会ったらそんなことぼそっと呟いていたから」
ユーコの友達はそこまで言うと、
時計を見た。
「あ、もう、こんな時間だ...!
ねぇ、シンジくん、CDにサインしてよ!」
俺はマッキーの細マジックとギャルプラのセカンドシングルを渡された。
「あ、うん...」
さらさらと適当にサインをして、
彼女にCDを返した。
「買ってくれて有難う...」
「どーいたしまして!私も弟も、
ギャルプラの大ファンだからね...!
買うのは当然よ...!」
「じゃね...!!
サイン貰ったから、ここは奢るね...!」
ユーコの女友達は、
伝票を掴むと笑顔で俺に手を振り、
足早に店の出入口へと向かったのだった。
美少女幼馴染がメインボーカルを務めるバンドをクビになったサブボーカルな陰キャの俺に美女ギャル四人が声をかけてくれたんだが、CDがバカ売れしたから戻ってきてとか、今更遅いな。 雲川はるさめ @yukibounokeitai
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