第9話


何回かハルの家のそばのちっちゃなライブハウスで歌った。


12回目くらいに、

レコード会社の人から声がかかった。


「メジャーデビューする気はないか?」


勿論。その問いかけの返事は五人して、


「あります!」


だった。


運良くデビューさせてもらえて。

更に俺らのこと、期待の新人だとか言って。

レコード会社がテレビ局にゴリ押してくれて。


俺らが出した曲は、

週刊ヒットチャートにランク入りして、

それから雪だるま式にCDが馬鹿みたいに売れた。



俺はギャルプラのメンバーでほんとうに良かった、と思った。


そんなある日の事だ。


成人式を終えて。


幼馴染の林ユーコが、俺の住む市営住宅に

訪ねてきた。


何でも、「謝罪したいの!」

と玄関先で言ってきて。


おまけに。


「あの、追い出したときは、ほんと、ごめん!

私、どうかしてた!判断を間違ったみたいなの!シンジが、こんな、ビッグになるなんて、

あのときはこれっぽっちも思わなくて...!」


「私、土下座するわ...!だから、

ボーカリストとして、うちらバンドに戻ってきて欲しい!!」


「いや、無理だよ...」


「俺はギャルプラを脱けるわかにはいかない

...」


「ほら、この通り、

土下座したから...!!」


「いや、顔をあげてよ...!!」


「私達のバンド、全然、芽が出なくて

困ってるの...!それで、シンジの力が必要なの...!分かって欲しい...!」


「いや、無理だよ」


「ま、待ってよ...!シンジ!

実は私、お金も必要で...!

ホストに騙されて、借金の連帯保証人にされちゃってね...!1000万の負債があるの...」


「シンジ、助けて...!」


泣いていた。


あまりにも懇願してきたけど。


俺は断った。


「出てってくれないか...?」

玄関先に

居座る気でいたみたいだけど。


やがて母親が帰って来てくれて。

慌てて立ち上がり、


「か、帰ります...!」


と逃げるように帰って行った。


母親は少し会話を聞いてたみたいで。


「お金の無心に来るなら来ないでね、

ユーコちゃん」


と優しく行ったのが、

相当応えたらしくて。


ユーコが、俺の家に訪ねてくることは

なかったのでした。


















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