シルバーウルフ

 むかし、むかし、ある国にショウマという男の子がいました。その国はあまり裕福というわけではありませんが明日の生活に困るほど貧しくもないので町は活気で溢れみな活き活きとしておりました。

 

 ある日、父親の仕事を手伝った帰りにショウマは道端で怪我をした灰色の子犬を見つけました。

この地域では犬を飼う家が多く、彼の家でも昨年まで年老いたおじいちゃん犬がいました。ショウマが生まれる前からその家にいたおじいちゃん犬はとても優しくて、いつもショウマの後ろをそっとついて歩いていました。角の生えた少し凶暴なうさぎ(カーンバンクル)に襲われそうになったときに助けてもらったこともありました。 

しかし、かなりのおじいちゃんだったので昨年ショウマの住む国の寒さに耐えられず冬をこすことができなかったのです。(その国の冬はとても長くて「ちきゅう」という星の「ひとつき」が8回ほど過ぎるような期間ずっと雪と氷に包まれているのです。)


 ショウマはその後しばらくの間落ち込んでしまって家から出られなくなってしまいました。やっと外に出られるようになったのは長い冬が明け父が畑仕事に出るようになってからでした。


 そんなときにショウマはその怪我をした子犬を見つけたのでした。子犬を見て最初はまたおじいちゃん犬のことを思い出し悲しい気持ちになりました。

 そんなとき、ふとやわらかな甘い木の実の香りがしたような気がしました。それはおじいちゃん犬の大好きな「ヤッコ」の実の香りでした。

ショウマはこの子犬を家へ連れて変えることにしました。まるでさっきの香りはおじいちゃん犬が「この子を助けてやってくれ」と言っているように思えたからです。


 ショウマは小さな傷口をふさぐ程度のかんたんな治癒魔法しか使えませんが、ショウマのお母さんは町の診療所でお医者さんの助手としてお手伝いをしています。きっとなにかいい方法を知っているかもしれなとショウマは考え、そっと子犬を抱っこしました。まだ温かいのですが犬の体温にしては少し低いので心配です。


 家に帰ってお母さんに治癒魔法をかけてもらった子犬は、幸いにも命に別条はなく2・3日すると庭を駆け回れるようになるほど元気になりました。

 驚いたことにその子犬は人と話をすることができたのです!じつはショウマが助けたのは高位種の魔獣でした。そして子犬はショウマと一緒に暮らしたいとお願いしてきたのです。そのことにショウマ一家は大喜び。子犬に「ヤッコ」という名前をつけて一緒に暮らしましたとさ。



               おしまい



▽▲▽▲▽▲

『シルバーウルフ』

分類:魔獣(魔法の使える動物のこと)


種族:シルバーウルフ(高位種)

(高位種→魔獣の中でも上から2番めに強いとされている種族のこと。ちなみに一番強い種族は最上位種と呼ばれている。最上位→高位→中位→一般の4段階にわけられる)


大きさ:子犬50cm〜1m 成犬1.5m〜3m


重さ:子犬3kg〜5kg  成犬50kg〜100kg


特徴:

・子犬の時は灰色の毛だが成長するにつれて白に近いツヤのある銀色になっていく。

・5〜8匹ていどの群れで行動する

・一度の出産で1匹生まれるのが多いが、ときどき双子や三つ子だった場合には、お互いに戦わせて親は最後まで立ち上がっていた子を育てる。その他の子犬はシルバーウルフのひとつ下の種族アッシュウルフの一族として育てられる。(アッシュウルフになった場合は毛の色は灰色のまま。)

ごくまれに今回の「ヤッコ」のように運良く人間に拾われることもあるが、もともとプライドの高い種族なので飼い主のもとから逃げ出したという事例もある。


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おまけ 植物図鑑

分類:植物


植物名:ヤッコ


形態:落葉樹


特徴:

・甘い香りで虫や鳥をおびき寄せ花粉や種を運んでもらう

・地球でいうカカオ豆のような形をしていて殻に覆われた実がなる

・殻はそこまで固くないので手でむくことができ、中の実は薄い桃色をしている

・桃とキウイをあわせたような甘酸っぱい味がする

・栽培するのは難しく山の麓で育った天然のヤッコが市場では売られている


用途:食用


食べ方:

・生のままでも食べることができる。

・凍らせると酸味が強くなり、ゆでると甘味が増す

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マルタリク(異世界)童話集〜動物編〜 ろくろく んよちい @nono1121

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