第4話 竜姫様に休息と怠惰と甘味はたっぷりと!
「——ぶ、ブラックすぎやしませんか?!」
「は?なんじゃ、その禍々しそうな“ブラック”というのは」
散々周りに避難されながら拾ってきた青年(どうやら記憶がないらしい)が姫に訴えてきたのは、とある午後の日。
何故だか知らないが、記憶のないこんないかにも怪しい不審者を竜の姫王は気に入ってしまっている。
「姫様、朝は何時に起きましたか?」
「朝?いつも6時じゃ。会議の準備をせねばならぬから」
「……朝ご飯も簡単なものしか食べず、昼も食べてませんよね?しかも夜は次の日の朝方しか眠ってないじゃないですか!」
「なんじゃ、うるさいのぉ。妾は王であるぞ!朝から晩まで会議やら書類の作成やら、書類にハンコを押さなくてはいけないのじゃ!」
今にも倒れそうなほど積まれた書類の中で、姫王は次の会議に使う資料を作成していた。
「俺、見ましたよ。大臣達はめちゃくちゃ遊んでじゃないですか!!こんな小さい女の子に仕事を全部任せてるなんて、この国は腐ってる!!」
「——キサマ!!妾を愚弄する気か?!首を差し出せ!」
書類が床に倒れる事も気にせず、頭に血が登った姫王が机に足を乗っけて、細い剣を鞘から出すと青年に向けて構えた。姫王の瞳が赤々と燃え上がっている。
「ち、違う違う違う!!えーっと、そう!大人たちが悪い!!もっと姫王は大人たちに仕事を回していいんだって言いたいですてて!!」
「……ふむ。でもこれらは妾の仕事なのじゃ、王の仕事なのだから、妾がやらねば」
落ち着きを取り戻し首を傾げる姫王に、青年はホッとしながら会話を続けた。
「会議の資料作成とか王じゃなくてもやれるじゃないですか。寧ろ大臣がやるべきっていうか……。それに上がってきた報告書だって、姫様がまとめる必要もないんですよ」
青年は続けた。姫王の座る執務用の机に手をついて前のめりになって演説をする。
「とにかく!!姫様には休息と睡眠時間の確保が必要です!!」
「睡眠時間はわかるが休息と言ってもの……。お主なら何をするのじゃ?」
いまいちピンと来ていない姫王に、青年は悪戯な笑みを浮かべた。
「俺なら、ケーキやプリン、アイス、お団子、羊羹とかのスイーツ……あ、いやお菓子を食べてゴロゴロと怠惰を貪りますね!」
「けーき、ぷりん、あいす……。ふむ、中々よい響きではないか!!妾、食べてみたい!!」
こうして、竜姫の王は青年の作るスイーツを食べることにハマり、スイーツの時間は休息の時間になっていった。
姫王のために大臣に仕事をさせるなどの功績を収めた青年の逸話は、また別のお話。
「姫様、休息のお時間です!」
——竜姫の王には、休息と、怠惰と甘味をたっぷりと!
竜姫様の怠惰な時間 夏沢とも @30_2
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