モノクロ女装男子は原色男子と恋をする

南野月奈

モノクロ女装男子は原色男子と恋をする

『女装は似合っても、骨っぽいから派手な色は似合わんねぇ』


 女装喫茶で働きはじめた頃、客から言われた『呪い』

 そこから、俺の女装はモノクロ……

 色を失って、白いブラウスに黒いスカート、骨っぽさを隠す分厚い黒いタイツ

 あんなクソ客に言われたこと、今でも気にしているなんてらしくねぇ、って思ってる。

 でも、もうピンクや赤のかわいい女装に憧れていた頃の感覚なんて、思い出せない、はずだった。


「こっち、こっち〜!アキラ君、今日もかわいいね」

「ウソつけ、ニッチな客しかついてない俺にそんなこと言っても、るるの連絡先教えたりしないからな」


 るるは、目が大きくてピンクや赤のフリフリワンピが似合う正統派男の娘、店の一番人気だ。

 三白眼の俺のコンプレックスをゴリゴリに刺激してくる。


「やだな〜、オレ、最初からアキラ君狙いよ?店外デートしてくれるなんて、感激だな〜」


 全身、原色まみれのヤツが言っても説得力ゼロなんだよ!

 俺の客層と真逆じゃん


「それは、お前が格ゲーするって聞いたからだし、ほらさっさとゲーセン行こうぜ」

「つれないなぁ〜、その前にアイスでも食べよ!デートっぽいことしたいじゃ〜ん」

「……お前のおごりだかんな」

「アキラ君、なにがいい?」

「チョコチップと、お前のオススメ……」

「おっけ〜」


 差し出されたそれは、チョコチップアイスと、ストロベリーアイスにマシュマロがのったカラフルな組み合わせ


「かわいい子とかわいい物はいいね〜」


 一人で頷いてんじゃねえよ……


「一緒に、写真撮って良い?」

「SNSに載せんなよ」




 二人で撮影した後、かじったピンクのアイスは甘酸っぱい味がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モノクロ女装男子は原色男子と恋をする 南野月奈 @tukina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ