仲間をもとめて

 城を出たフミマロは、その足で酒場へと向かいました。王様の助言通り、冒険の旅に同行する仲間を探すためです。

 そこは多くの人でにぎわっていました。奥のカウンターで、冒険者の斡旋をしているようです。

 フミマロは、さっそく申し込みをすることにしました。


「カリーナの酒場へようこそぉ。仲間をお求めね?」

「はい」

「それじゃ、これにご希望を書いてくださるかしら?」


 フミマロは、カリーナが差し出した申込用紙に希望条件を記入していきました。


「ふむふむ。希望の職業は戦士、僧侶、魔法使いで……性別は女性ね」

「はい」

「特記事項は……セクシーなギャル……?」

「はい。セクシーなギャルの仲間を求めます」

「…………えっとぉ?」

「セクシーなギャルは、レベルアップ時のステータス上昇がとても優秀、と攻略本(税込1,100円)に記載がありました。ゆえに、セクシーなギャル3名を冒険へ連れていく所存です」


 フミマロは、攻略本(税込1,100円)の該当ページをカリーナに見せながら言いました。


「え、えっとぉ?セクシーな……ギャルとは?」

「ぴちぴちギャルとは違います。セクシーなギャルです」

「まさかあなたは……むっつりなスケベ!?」

「いいえ。私はHPと力が上がりやすいタフなガイです」

「そ、そう……。と、とりあえずセクシーな女性を探すわね」


 ひとまず、カリーナは女戦士をひとり呼び寄せました。


「アネッサさんよ。どうです?とーってもセクシーな戦士さんでしょう?」

「ふふふ。アタイを連れていって損はさせないよ、ボウヤ」


 防御力を丸無視した露出度の高い鎧を身に着け、引き締まった筋肉をこれでもかと言うほど見せつけた、色気全開の戦士です。


「ビキニアーマーがとてもお似合いですね。確かに貴女の見た目はセクシーです。しかし……性格は“おてんば”ですね?」

「な、なぜ分かるんだい!?」

「それは、私が勇者だからです」


 フミマロが求めているのは、見た目だけではない真のセクシーなギャルでした。残念ながら、アネッサという女戦士は中身がセクシーではないようです。

 丁重にお断りしたあと、カリーナは再び条件に合いそうな仲間を探し、今度は一見控えめでおとなしそうな僧侶の女性を連れてきました。


「とっても美しい、僧侶のセシリアさんよ」

「セシリアですフゥ……」


 カリーナが紹介すると、セシリアという僧侶は長い髪を耳にかけながら吐息混じりに挨拶をしました。何故か身体を斜め45度に向け、流し目でフミマロを見つめています。


「どうです?仕草とか声とか、とてもセクシーでしょ?」

「傷ついた時はわたくしがハァ……貴方を癒してあげますフゥ……」


 セシリアの喋り方は、やはり吐息混じりです。


「とてもお綺麗な方ですね。ただ……残念ながら、貴女は“ぬけめがない”性格のようです。すばやさ、かしこさが上がりやすいため僧侶向きではありますが、私には魔王を倒すという目的があるので、一切妥協をしたくありません。それに、少々息が荒いようにも感じられますので、呼吸器疾患の不安がありますね」

「こ、呼吸器……疾患……?」


 フミマロの言葉に、セシリアは絶句してしまいました。

 やはり真のセクシーなギャルは、そう簡単に見つからないようです。その後、カリーナは何人もの女性を紹介してくれましたが、中身までセクシーなギャルとなかなか出会うことができません。

 そうこうしているうちに夜が更けてきたので、フミマロは家へ帰ることにしました。


「まあ、遅かったのね!」


 母があたたかく出迎えてくれます。


「酒場で冒険の仲間を募っていました。しかし、なかなか希望に合う人が見つからず」

「そう。生死を共にするのですから、仲間は大切です。納得いくまで、しっかりと選びなさい」

「はい、母様」

「今日はあなたの好物のスライムゼリーの黒こしょうがけを作っているわ。さあ、お食べなさい……」


 明日に備え、フミマロは母の手料理とあたたかいベッドで心と身体を休めました。


 決して妥協を許さないフミマロの仲間探しは続きます。

 真のセクシーなギャル3人を連れて魔王討伐のために旅立つ、その日まで――

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勇者フミマロ えむら若奈 @emurawakana

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