手作りのクマのぬいぐるみ作家、きさらさんと命を吹き込まれた個性豊かなぬいぐるみ(時々リアル動物)たちが織りなす、心温まるファンタジー童話です。
子どもが読めば楽しいファンタジーの世界が広がっているし、
大人が読めば忘れていた童心を思い出すような温かい空気に満ちています。
しかし、ただ口当たりの良い甘い世界が広がっているわけではありません。
一緒に育ったぬいぐるみをこともなげにゴミ箱に捨ててしまえるオトナ。
誰かにとっての大切な思い出を、私利私欲のまま金儲けに換算してしまうオトナ。
体ばかりは大きくなったけど、チャイルディッシュな我欲を振りかざしてしまうオトナ。
夢破れて希望を見失いかけて、あてもなく彷徨うオトナ。
この物語には、そういった様々なオトナが客として登場します。
もしかしたら、ある程度人生経験を積んだ大人にこそ響く物語かもしれません。
世代によってきっと感じ方、捉え方も全然違う物語になるでしょう。
一人でじっくり読むのも良し。
親子で楽しく声に出しながら読むのも良し。
詠み終えた後には、きっと身の回りの思い出に無意識に視線を向けている、そんな物語です。
《きさらさん》はクマのぬいぐるみ専門の『クマ屋』というお店をひらいています。ある日《ミューミュー》という迷い猫がやってきて、言葉をしゃべりはじめてから、きさらさんの《クマ》たちの言葉もわかるようになってしまいました。
大人女子のきさらさん、猫のミューミュー、ピンクのクマのレオン、めがねをかけたクマ子さん…それぞれ個性豊かなキャラクターたちのおしゃべりしている姿を想像するだけで、ほっこりとしてしまいますが、この物語の真髄は‘そこ’ではありません。
毎回、『クマ屋』にやってくる様々な事情をかかえた《お客さん》たちとの心の交流こそ、作者が書きたい《思い》なのだと感じます。ただの童話、ただのファンタジーにあらず。とっても奥が深いのです。だからこそ、死生観に惑う大人たちに読んで欲しい。あくまでも、やさしく…そっと頭をなでてくれるような陽だまりを感じながら、深いところで癒されてみてください。
1話完結モノです。さくっと読めるのも、またいいのです。^-^
(このたびは、「迷イ猫 連絡求ム」の参加ありがとうございます。
一話完結のほのぼのストーリーなので、てっきり企画に当てはまる話を投稿されると思っていました。
なるほど、そうきましたか)
クマのぬいぐるみを取り扱っているお店にいろんなお客さんが訪れて……というのが物語の流れです。
二十四日までにクマのぬいぐるみを七十体用意したり怪獣の足をつくったり、興味深い注文が目を引きました。
舞台はお店。キーはクマのぬいぐるみ。この縛りだとネタが尽きそうかと思いきや、いろんなバリエーションのほのぼのを楽しめます。
他にもストーリーの膨らませかたもすごいと思いました。
ストーリー自体はシンプルでありながら、意外と文字数が多いのです。
「ムダが多く、もっとスリムにできるのに」という意味ではありません。
短くしようと思えば削ぎ落とせるのです。
しかし麻々子様はていねいに描写しています。
よって各一話が厚いのです。
ほのぼのとした物語を読みたいなって人はオススメです。