光景
「こんにちはー!」
元気良くドアを開けて心地良いベルの音を鳴らしたのは、今一番会いたい雨里さんだった。
「おー、あめちゃん!元気やな!」
「めーっちゃ元気ですよー!」
さっきまでの真剣な空気はどこへやら、雨里さんと軽快にトークを始める川本さん。そんな日常を微笑ましく見ていると、コーヒーカップを手に川本さんがこちらにやって来た。
「マスターこれおかわり!」
そう言うと今度は小声で。
「今はまだ伝えないやろ。わかってんねん、マスターのことは」
僕の方をポンと叩いて、また雨里さんのもとへ戻っていった。確かに、会いたい気持ちは高まったし、「伝える覚悟」もできた。でもそれは、「伝える」覚悟じゃない。そんな小さな違いにも、川本さんは気付いてくれた。まるでエスパーだ。
「はい。ハワイコナです」
「え!今日はレースないで。自分ぽーっとしすぎちゃう!?」
「僕は験を担ぐタイプなので。サービスです」
「ほー。ならありがたく頂くわ。あーあかん、ニヤニヤがとまらん」
「ちょっと!何の話?私だけ仲間はずれじゃないですか!」
「あめちゃん違うんよ。これはな、男と男の熱い友情なんよ。今ほんまは泣けるシーンやで。おっちゃんニヤニヤしてるけど」
「えー気になる!晃成さん教えて!」
「えーっと、お飲み物をお伺いいたします」
「はぐらかした!えーなになに!」
こんな具合で、笑い合う空間が、僕は好きだ。
イヤリング 早福依千架 @Fuku_kitare
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