諭す
「もう、覚悟決め」
そう僕に告げたのは、川本さんだった。
「社長からGOサインも出た。あとは行くだけや」
「そんな簡単な話じゃ」
「…じゃあ、今から真面目な話するわ。今回は本当におふざけなしや。よく聞き。あんな、人が人を好きになるって素晴らしいことなんよ。奇跡みたいなもんや。好きやと思える、大切にしたいと思える相手って、そうそう出会えるもんやないで。自分が軽い気持ちなら、ここまで真剣に話しとらん。真剣な気持ちが伝わっとるから、こっちも真剣になるんよ。その気持ちが深ければ深いほど、奇跡なんよ。だから、伝えるべきやと、俺は思う。それで相手が自分のことを想ってくれてたら、奇跡の上乗せや。ラッキーくらいに思っておけばええんよ。まず、好きになれただけで奇跡なんやから、その奇跡をないことにしちゃあかんと思うで」
川本さんの言葉が、スッと心に入ってきた。僕が雨里さんのことを好きになったことは、この地球上で奇跡のようなことで、今はそれだけで十分だと思えた。僕の勝手な感情で距離を置こうとすることの方が間違っていると思った。雨里さんは、僕が好きになった人は、そんな風に考える人じゃない。
「川本さん。僕、覚悟決めました」
「ん。頑張り」
「奇跡の上乗せはできないかもしれないけど、この奇跡を認めます。なかったことになんてしない」
「それでこそマスターや」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます