第117話 元おじさん・・・商業ギルド・6


 全裸の人物との衝撃的な出会い・・・初めは相棒が異世界人であることは分からなかったが、助けてもらった後の情報交換でその事を知らされる。


「ちょ、ちょっと待ておくれ! その、レッサードラゴンはどうしたのじゃ?」

 少し話を端折ってしまいロザリア婆さんから待ったが掛かった。


「えっ? 相棒がキュキュッと絞めてしまいましたよ、お肉超美味しかったです♡」

 詳しく話すとボロが出てしまうので曖昧にして濁した。


 ロザリア婆さんは、スンッとした表情になるとスッと目頭を押えながら呟く。


「絞めた? レッサードラゴンを? しかも食べた? ドラゴンの肉を? しかも・・・ちょうおいしかった?」

 ブツブツと呟きながら何処か虚空を眺めていた。思考の海へと旅だったようだ。


 それから数十秒後に正気を取り戻したロザリア婆さんの第一声は、前のめりで「レッサードラゴンの素材はまだ残っているのかい?!」だった。


「あ~、その辺りの在庫管理は相棒の管轄なので後ほど確認してみますね、おそらく多少は残してあると思いますけれど」

 自分はよく分かりません?と知らないふりをするが実際は素材の在庫は全て掌握済みである。


「そうかい、出来ればギルドにも売って欲しいのだがどうだろう?」


「相棒と話し合ったのちに検討しまして、ご希望に添えるようにします、とりあえず話の続きをしてもよろしいですか?」


「ああっ、すまないねぇ情報が多すぎて少々戸惑ってしまったよ。」


「まぁ、説明している自分も常識外れな話をしている自覚は有りますが・・・悲しいことに紛れもない現実ですのでもう暫くお付き合いください」


 外面からは申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、ネタを織り交ぜながらおじさんは続きを話した。


 虚空より現れた全裸の人物に命を救われてから今に至るまでをダイジェストで語った。


1、お礼を含め双方の自己紹介と状況整理。


2、相棒の状況と自分の立場を話し合い協力関係になった。


3、相棒は極度の人見知り&引きこもりなので、自分が代わりに面倒事を引き受け情報収集や仕事をする。


4、相棒は引きこもって色々と用意をした製品やアイテムを自分が商業ギルド等に売ったり、あるいは性能試験として使用し報告、そして相棒が必要とする素材集めの為に山岳・森林・ダンジョン等に赴く。


5、以前はレッサードラゴンに手も足も出なかったが今では相棒の全面的支援でダンジョンも攻略出来るようになった。


「・・・と言うわけです、ご理解頂けてでしょうか?」

 多分理解出来ない内容もあったと思うが、取り敢えず暈かした情報を与えてどう出るか様子を見ることにする。


「・・・うむ、ワシも長生きしてきた分、大抵のことでは驚きはせんが、今回のことは年寄りには少々刺激が強いのう・・・。

 話せることで良いので幾つか質問をさせてもらえるかい?」


「ええ、構いません、自分の知っている範囲でならお答え出来ます」


Q:クロウ殿が『相棒』と呼ばれてる相手は異世界人で間違いないのかい?


A:本人が異世界から来たと言っていました、詳細については説明出来ませんが、ただ言えるのは「神に連れてこられた」と相棒は言ってました。


Q:相棒殿はどのような人物かのう?


A:極度の人見知りで引き籠もりも併発していて、自身のスキルで作りだした固有空間で生産活動に没頭していますよ。

 相棒曰く「個人情報の漏洩は許可しない!」と言われていますのでこれ以上はお話し出来ません。


Q:そのアイテム等はギルドに卸して貰う事はかのうかい?


A:勿論可能です、危険物以外であれば試供品を後日お渡しいたしますし、ご要望がありましたら相棒に問い合わせましてご用意致します。


Q:相棒殿は「神に連れてこられた」と言っていたようだが、国に召喚された訳では無いのかい?


A:詳しくは話してくれませんでしたが、「は神によってこの世界に呼ばれた、他の連中は知らない」と話していたのでそれ以上は追求するような事は致しませんでしたので、それ以上の事はわかりません。


Q:異世界についての情報を問い合わせる事は出来るかい?

 特に現在この世界にいる異世界人がギルドに申請してきた品についての情報が欲しいのだが。


A:可能です、知っている事でしたら直ぐに答えられますし、不明な品でも許可を頂ければ、情報をメモした後に持ち帰り相棒に問い合わせて後日回答を致します。


 その後もいくつかの質問をのらりくらりと回答していった。



「・・・まあ、こんなところかのぅ、これ以上はクロウ殿もしんどいじゃろう?」


 正直ラヴィのサポ-トがあったとはいえ疲れた、まあこれも交渉術の一つなのだろう、なにせ長い話は次第に判断力が鈍くなってポロリと失言をしてしまう可能性がある、さらに自分はそれ程素が優秀では無く凡人なので交渉事は苦手なのだよ。


「お気遣い感謝致します」


 そう言い冷めたお茶を飲み干した。

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元おじさんは異世界を謳歌したい? いいえ、できれば一人で楽しみたいです! ku-ma @ku-ma01

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