第116話 元おじさん・・・商業ギルド・5
「実は神聖メルディオス帝国がねぇ、伝承の異世界人召喚を成功させたそうだ!
・・・クロウ殿は心当たり無いかね?
わしとしては、ここ最近の商業ギルドへの数々の商品及び技術登録がされている珍しい品や技術は、何処かの国に召喚され脱走した異世界の者達では無いかと思っておるのだよ?
・・・踏み込んだ質問で気分を害するかもしれないが、こちらも商業ギルドのギルドマスターとして状況を把握しておきたい。
クロウ殿についても色々と調べさせてもらったよ、珍しい従魔を連れていたり、オルーマンからアバルナまでを通常の移動方法ではありえない日数で移動して来たりと、色々とあるのだが・・・クロウ殿は異世界人かい?」
じっと此方を見つめているロザリア婆さん、恐らく今から自分が答える一言一句、視線や動向からこれまで培ってきた経験則やスキルをフルに活用して見極めようとしているのだろう。
「う~ん、まぁ想定内だから良いか。
でしたら、これから話す事は他言無用で許可無く他者に伝えないと誓って下さい」
出来るだけ穏やかな口調で語る。
「良かろう・・・我、ロザリアは商業の神々に誓って今から見聞きする事を他者に伝えない事を誓おう!」
ロザリア婆さんがそう宣言すると、自分と婆さんとの中間辺りの空間に幾つもの紋章の様な発光体が浮かび上がった直後、複数の男女の声が重なる様に頭の中へと直接響いた。
『『『汝の誓い、我らがしかと聞き遂げた!!!』』』
「!?」
「・・・・・・」
声が聞こえ『ビクッ』とした途端ピクリとも動かないロザリア婆さんを眺めていると約2分程経過した頃にようやく全身の力が抜けるようにテーブルへと突っ伏した。
「あの・・・大丈夫ですか?」
何となくヤバいかなぁ~と思い声を掛けてみる。
「・・・今まで色々と経験して来たがのう、守秘契約で複数の神が承認に現れた事など一度も無かったわい。
年寄りには堪えるわい、寿命が縮むかと思ったよ、まったく」
「でしたら先程お渡しした若返りの霊薬飲まれます?」
場を和ませようと少し冗談を言ってみた。
「バカをお言いでない! 今若返ろうモノなら『あ!全盛期に若返ったんだね♡ じゃあ後200年は使徒として頑張れるね!! これからもよろしくね♡』と商業の神々に言われるのが目に見えておる、引退するまでは大切に仕舞っておくわい!」
と大事そうに若返りの霊薬を撫でながら見るからに高ランクのマジックボックスに仕舞いロックを掛けていた。
何処の世界もブラックなんだなぁと少し悲しくなりながらも、ロザリア婆さんが早く引退出来ることを心からお祈りした。
「・・・何じゃその顔は、一応後継は育てておるし、わしを引きずり下ろして使徒の座に着こうとしている野心あふれる若造もおるから、その内・・いずれは・・・引退できるであろうたぶん・・・引退したいのう、誰か神々に好かれるヤル気にあふれた若者はいないかのう?」
何故かじっとこちら見ているロザリア婆さん。
「自分は諸事情で使徒は御遠慮させて頂きます」
と丁寧に断った! よしこれで大丈夫だ!
「まぁ冗談はこれくらいして本題に入ろうかのう、クロウどの話せることで良いのでお聞かせ頂けるかのう」
巫山戯て良い空気ではなくなったので虚実を交え、ラヴィにサポートしてもらいつつ語り始める。
「ではお話しします、ただ話の内容に理解が追いつかない部分もありますのでご了承下さい。
まずは自分が異世界召喚された異世界人か?との質問ですが返答は、自分は異世界人ではありません。
ただし自分の相棒が異世界人です、たぶん」
「相棒?」
「ええ、相棒との出会いは衝撃的でした、今思い返しても心が震えます、そうアレは運命でした!
ある日、自分は森の中でレッサードラゴンに出会いました」
「ちょっと待てぇい!」
話に割って入るロザリア婆さん。
「どうしました?」
「れ、レ、レッサードラゴン? ・・・まさかその森というのはオルーマン付近の森かい?」
「はいそうですよ、続けてもよろしいですか?」
「うむ、聞きたいことが増えたが先ずは話を全て聞いてからにしよう、話の腰を折ってすまなかったのう続けておくれ」
自分はうなずき話を続けた、要約するとある日、超田舎の集落から不作による食糧不足のために、親類縁者の居ない自分は口減らしのため追い出され、職を求めてオールマンの街を目指していた途中で、ふと小遣い稼ぎに薬草採取をしようと寄り道をして森の中でレッサードラゴンに出会った、自分は死に物狂いで走り森の外まで逃げ出すことが出来たが、そこは見渡す限りの草原で身を隠したりレッサードラゴンの動きを阻害する障害もない、更に気が少し抜けたせいで今まで気付いていなかった疲労が全身を襲い盛大に転んでしまった。
背後から迫り来るレッサードラゴンの足音に怯え急いで起き上がろうとするが体に力が入らず足が生まれたての子馬のようにガクガクと震える、そうしている内に背後から木々を薙ぎ倒し咆哮を上げながらレッサードラゴンがその姿を現す!
這いずりながらも逃げようとするが、自分のその姿を楽しむかのようにのしのしと速度を落とし迫るレッサードラゴン!
もう駄目か!と絶望したその時、自分とレッサードラゴンとの間に奇跡が起こった!
突如周囲の風が渦巻き『バチバチ』と雷が発生し直径2メートル程の球体が現れる、周囲の風を吸い寄せるように渦を巻き放電する球体を前にレッサードラゴンも二の足を踏み近付く事が出来ないでいる。
この隙に少しでも逃げる距離を稼ごうとしたが下手に動くと放電に巻き込まれそうだったので逃げることが出来なかった。
やがて渦巻く風と放電が収束し始め『ドン!!』と腹に響く衝撃と共に弾けた、立ち
草に覆われた地面の一部が円形に少し窪んで、まるでえぐれた様に土が剥き出しになっていた、そしてその中心には片膝をついて屈む全裸の人物が居た、後の自分の相棒である。
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