第115話 元おじさん・・・商業ギルド・4
素材・アイテムの買い取りが一段落したので、次はダンジョンの資料を商業ギルド経由で冒険者ギルドに報告してもらう為の相談を始めた。
「次はダンジョンの資料だねぇ、どれ・・・・・・のう? 疑う訳では無いが此処に書かれてある極秘事項というのは真実かい?」
目頭を押さえながら質問をして来るロザリア婆さん。
「はい事実です! 別枠で仕分けを済ませたマジックバッグに記載されたアイテム(蘇生ポーション・スキルオーブ、その他売り払っても良い希少なマジックアイテム)があります」
ぽんぽんとカバンを叩く。
「はぁ~、こんな事が知れたらダンジョンが死体の山になるよ!
・・・確かにこの件はギルマス以上で話し合わなければ不味いね、クロウ殿が関わり合いたくないのが良く分かるよ」
溜息を吐きつつ資料を読み進めて行くロザリア婆さん。
「現状それらの階層迄無事に到着出来るのは自分位ですからね、冒険者ギルドでは自分が求める条件で助けてはくれない様な気がします」
「まぁ、冒険者は基本自己責任だからね、今回の場合なら保護する名目でランクをBランクまで上げて囲い込むだろうね、Bランクからはギルドからの様々なサポートが受けられる代りに毎年1回ではあるが半強制的な依頼の義務化が課せられるからねぇ、更に貴族からの断れない様な指名依頼も押し付けて来るだろうし、ギルド組織内の勢力争いの道具にされる場合もあるねぇ」
「え? やっぱりそんな事あるんですか!」
「そんなもん何処の組織でもある事さ、まぁ此処の商業ギルドには、わしという『生きた伝説』『歩く老害』『商業ギルド女怪』『小僧共の黒歴史を知るババア』として皆に慣れ親しまれている、このロザリア婆さんが居るからそこらの有象無象は手出し出来ないがね。
冒険者ギルドのギルマス・トルマ坊主じゃあ、精々ランクをCランクに抑えて依頼の義務化を避ける程度までは出来るだろうが・・・それも一時的なものだろうね。
ギルド本部の一部のバ幹部連中がギルマスの首を挿げ替えてでも囲い込もうとするだろうさ」
「やっぱりそうなりますよね」
「予想が出来たから冒険者ギルドを避けたのだろう? どう考えてもこの内容は下手をすると国が介入する内容だよ、しかも馬鹿者どもがやらかせば全てが台無しになる可能性すらあるから情報規制が必須の内容だ。
今現在でクロウ殿以外でダンジョンの深部に届きそうなのは・・・最近頭角を現している3人組の新人だが、まだ時間が掛かるだろうね、下手に無理強いすると最悪な結果に成りかねないしね」
「彼等だったら1年ぐらいで良い所まで行くんじゃないですか?」
「おや? もう会っているのかい?」
「いえ、ダンジョン29階層で少し追い詰められていて、帰還しようとしていたところを覗いただけです」
「もう29階層迄行けるなら有望だね、素行は宜しくない様だが冒険者なら些細な事さね。
おっと聞きそびれる所だったよ、39階層に存在する人外の街は人間が如何にか出来る所かい?」
・・・答えに困るなぁ。
「街のルールを都合の良い様に曲解したり上げ足を取ったりせずに、誠実に向き合い付き合っていけば非常に優れた安全地帯に成ります。
彼等のトップ(ダンジョンマスター)が笑っている内は良い隣人でしょう」
「また難しい答えだねぇ、冒険者は何とかなるが貴族や商人がやらかしそうだねぇ、悪知恵が働く奴はごまんと居るからねぇ」
「そう言った悪知恵はあの場所では全てを失う浅知恵に成りますよ、それに相手が悪すぎる。
始めのうちは試験段階の様なので見逃してくれるかもしれませんけれど、自分達がどんな相手と交渉しているのか見誤るとこの街が大変な事になりますよ」
「う~む、事前にわしが向こうの街の代表と話し合えれば良いのだが・・・」
チラリとこちらを見るロザリア婆さん、・・・そうだよなぁ、そう思うよなぁ。
「そうですね、自分が持ち込んだ話なので交渉が出来ないか聞いてきます。
ただし、少し時間は掛かりますよ?」
まぁ、たしかダンジョン側も此方側から望めば対応してあげても良い様な事を言っていた様な気もするし何とかなるだろう・・・たぶん。
「そうかい! そうしてもらえると助かるよ、時間は無理をしなくても良いから色よい返事を貰って来ておくれ!
わしの方は領主や冒険者ギルド等に話を付けておくからその辺りは心配せんでよいぞ!」
ニコニコしたロザリア婆さんが話を進める・・・面倒事を押し付けている以上、ダンジョン方面の初期の取っ掛かりの交渉は引き受けようと思う、面倒ではあるがこの先の大きな面倒事を考えると些細な事である。
その後も色々と大まかな話し合いをして、それぞれの案件を持ち帰り再度内容を話し合い詰めてから再度会談をする事となった。
「これで大まかな話は終わったが、少し世間話をしたいのだが良いかね?」
笑顔のままそう話し掛けて来るロザリア婆さんであるが・・・。
「ええ、構いませんよ! 自分もまだ色々とお話が聞きたいですし」
情報は多いに越した事は無いので世間話をする事を承諾した。
まぁ、情報をまとめるのはラヴィがやってくれるだろうから(他力本願)。
「そうかい!そうかい! 年寄りの長話に付き合って貰えてうれしいねぇ!
そうだね? まずは・・・・・・」
その後、ダンジョン都市の流行りの店から美味しい食堂、最近の若造(4、50代の各地のギルマス)は野心ばかりで根性がないとか、あるいは周辺諸国の情勢等を色々とフェイクを織り交ぜながら話してくれた。
その間、自分は飲み終えた紅茶を淹れ直したり、茶菓子を追加したりして気持ちよくロザリア婆さんが話せる様に聞き役に徹した、こういった気遣いは物事を円滑に進める為の処世術だと仕事の女遊びの激しい先輩がドヤ顔で自慢していた。
「さてここからは少々夢物語の様な話に成るのだがねぇ」
そう前置きをして、此方をのぞき込む様に話を続けた。
「実は神聖メルディオス帝国がねぇ、伝承の異世界人召喚を成功させたそうだ!
・・・クロウ殿は心当たり無いかね?」
行き成りぶっ込まれて来た! まぁ、始めから疑ってたよね?
さて、準備はしているけれど、どう答えるかな?
・・・でも召喚希望者って居たんだ?
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