タルトレットガールズ
桜のつぼみが色づき始めて、私たちは学園に戻った。キミちゃんがピンクのリボンをプレゼントしてくれたので、私はそれを首に巻いた。ケーキの箱のラッピングみたいで、すごく可愛い。
今日も調理室は、甘い匂いに満たされている。私たちはタルトレットをたくさん作って、タルトレットをたくさん食べる。お菓子作りに大切なのは、なによりも愛情。それを忘れないように、試行錯誤を繰り返しながら、私たちは美味しいタルトレットを作り続ける。
ある日、甘い匂いの午後。調理室の扉がノックされた。
「こんにちは……あの、ここでスイーツ会をやっていると聞いたのですが……」
入ってきたのは、とても小柄な女の子だった。たぶん新入生だろう。目が大きくてくりくりしている。癖の入った髪の毛はふわふわで子猫のよう。それに、なんて細くてしなやかな手足なんだろう!
「あら、はじめまして。どうぞ、入って」
「まあ、可愛らしい子!」
タカちゃんとキミちゃんが、さっそく女の子を覗き込む。私も二人の背中越しに、その子をじっと見つめる。
「お菓子作りを勉強したいんです。入会できますか?」
おずおずと喋る女の子。内気な子なのかもしれない。
「もちろん、歓迎するわ」
私は彼女を怖がらせてしまわないように、優しく微笑んだ。
「でも、すぐに上手にはならないわよ。お菓子に大切なのは、愛情だから」
「そうよ、たっぷり時間をかけて、愛情を育まないといけないの」
「はい、分かっています」
新入生の女の子は、真面目な顔でうなずいた。美味しいお菓子を作りたいという、真剣な気持ちが伝わってくる。
新しい出会い。新しい女の子。とってもすてき。きっと美味しいタルトレットが作れるわ。
ぺろり。舌なめずりをした。
<終>
タルトレットガールズ 深見萩緒 @miscanthus_nogi
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