第5話 倉本視点

 赤坂さんとはバスを降りてから分かれて歩き始めると、すぐにみーちゃんに話しかけられた。


「いったん帰るのも面倒だからもう家行きたいんだけど。」

「うお!びっくりした!」

「いい?」

「あ、うん。いいよ。」

「ありがと。」

「部屋片づけてたっけな…」


 てか俺赤坂さんと帰ってるところ見られてたってことだよな?なんて思ってんだろ。どうなんだ?

 俺に告白してきた女の子が、ほかの男と遊んでいるのをみて、俺は何か思うだろうか?


 …まあ、そんなもんだよなあ。


 多分こう思うな。別にいい気分はしないし、どちらかというと嫌な気分になるはずだ。なぜそんなことになるのだろうか?


 多分、自分の代わりがいるとでも言われているような気分になるからだろう。マズローの欲求5段階説から考えるならば、尊厳欲求と自己実現欲求の欠乏からいやな気分が生まれるのだろう。ふむ、なんだか一つ賢くなった気がすr


「なんか話すことないの?」


 ふぇ?そ、そうだなあ、話せること話せること、あ、そうだ。


「ちょっと疑問に思ってたんだけど、俺に頼らなくてもみーちゃんはいい点とれると思うんだけど、なんで勉強会を開くの?」


 やっぱりみーちゃんは沈黙が苦手なタイプなんだな。

 返答があるまでのちょっとの間ですぐにそんなことを考えた。


「確かにそうかもしれないけど、ここでいい点とらなきゃ多分高校で100点とかとれる機会なくなるでしょ?」

「お、やっぱりそう思う?俺もそう思ってたんだ。ここでいい点とれなくて死ぬほどマウント取られるのもいやだからさ。」

「マウントかあ。そんなことする人いるのかな?」

「どうだろね。でもこの学校そういうやついそうな偏差値してると思うよ。」

「…まだこの学校不満あるの?」

「いや、最初からないはずだよ。別に最終学歴じゃないし。」

「そうなの?私は不満あるけど。」

「まあ、この学校バス乗らなきゃ入れないもんな。」

「あんた落ちたのになんでそんな不満とか出てこないの?」

「別にないな。こうして結構楽しく暮らせてるしな。」

「なんかいいことでもあったの?」

「え?なんで?」

「いや、なんか雰囲気がよくなってきてるから。」

「そ、そう?」

「うん。よくなってる。」


 ちなみにだが、俺はみーちゃんが行きたいって言ってた学校に合わせて受験した。だから全く不満はない。一緒の学校に来ているわけだしな。まあこういう進路の決め方は、高校受験に関しては許されるとおもう。

 だがまあ、俺はかなり未練たらしい人間だな。まだ諦めきれてないのか。とはいえ、俺がここで自嘲しても意味ないし、また告白でもしてみるか?


 …まずは状況確認からだな。さっき考えてたことも含めてだ。きちんと対策しなければ、最終手段に出なきゃいけなくなるからな。

 最終手段は毎日告白作戦だ。この作戦はいけるという自信がある。ただ、これはマジで恥ずかしいのであんまりしたくない。今度断られたらこの作戦に行く。かもしれない。


「さてと、勉強しよう?」

「そうね。」


 ちらちらとみーちゃんの勉強の様子を見ていると、やっぱり俺よりも問題を解くスピードが速い。せっかくだしここは俺が先に頼る姿勢を出していこう。

 なぜかはわからんが、最近のみーちゃんは高圧的だ。高圧的になる理由は基本t系に自信のなさだったり、自己評価の低さからくるものだ。

 自己評価の低さっていうのは他人に頼るってことの妨げになる。ここで俺が先にみーちゃんに頼っておくことでみーちゃんに自分は必要とされているという自覚と、俺よりも優れているという優越感を持ってくれれば、俺はかわいい子とお話しできるし、みーちゃんとの関係はよくなって一石二鳥だ。

 

「ここの英文なんで複数形になってないの?」

「ん?これは不可算名詞なんだよ。確かに単位があれば数えられるかもしれないけど、1個2個とは数えられないでしょ?英語ができたときは単位なんてなかったからこういうのは大体不可算名詞。」

「わかった、ありがとう。」

「いいよこれくらい。」

「みーちゃんもわからないとこあったら言ってね?まあ、みーちゃんほどわかりやすくは教えられないかもしれないけどさ。」

「わかってる。」


 俺は英語の勉強が嫌いだ。だから、こういうところで話題として使ってやる。日本の英語の教育はおかしい。受験のための勉強でしかない。別に読みまくったり聞きまくればいいことを、わざわざ文法から組み立ててくる。だから嫌いだ。無駄だからだ。

 ま、勉強するがな。


 かわりに俺は数学が得意だ。きっと詰まるタイミングが多くなっていくはずだ。





 だが、今日は聞かれずにそのまま6時になり、みーちゃんを送っていくことにした。


「今日はありがとう。別に教えてもらったりしなかったけど、俺には充実した勉強会だったよ。」

「私が作った資料の対価だったんだけどね?」

「ははは、ごめんごめん。まあ、これからは忘れないさ。」

「信じるわよ?」

「任せときな。」


 どうしよう、何かしら対策しなきゃいけないんだけど。とりあえず通知してくれるアプリでも作ってみるか?


「それより、一人暮らしはどう?楽しい?」

「ん?まあ楽しいかな?登校時間が結構減るし、やりたいことに集中できるってのはうれしい。まあ、寂しいけどね。」

「ふーん。」


 …しばらく沈黙があった。


「たまに遊びにいこうか?」


 へ?この子ってばなんて言いました?たまに遊びに行こうか?って言いましたよね?え?俺のこと好きじゃん。絶対好きじゃん。こんなこと言うか?これ告白するなら今なんじゃ?で、でもまえ失敗したし、無理なんじゃ。

 は、しまった!黙ってる場合じゃない!


「あ、ああ遊びに来てほしい。」


 なんだこの変な受け答えは!きょどってんのバレバレじゃねえか!落ち着け落ち着け。余裕を持て。舞い上がりもせず、落胆させもせず、ただまっすぐに考えろ。俺は学べる人間だろう!?


「駅までで大丈夫?最近明るくなってきてるからまだこの時間なら大丈夫だと思ってるんだけど。」

「うん。大丈夫。」


 家までわざわざついていくのはさすがによくない。必死な感じになってしまうからだ。でも、すごい心配だよなあ。こんなだんだん暗くなってきてる時間にかわいらしい女の子が一人で帰ってくるなんて。

 空を見上げてみても、まだそこまで暗くなっていない。かなり赤いが、まだ不審者が出てくるような時間じゃないはずだ。

 そうしているとふとみーちゃんが話を切り出した。


「なんか昔を思い出すね。」

「そうだね。昔はよく一緒に遊んだか。」

「よく一緒におままごとしてたっけ。」

「そうだな。俺は外で動くの嫌いだったしな。」

「なんかよくバカにされてなかった?」

「されてたされてた。なんであんなことで笑われてたのか。 赤坂さんとはバスを降りてから分かれて歩き始めると、すぐにみーちゃんに話しかけられた。


「いったん帰るのも面倒だからもう家行きたいんだけど。」

「うお!びっくりした!」

「いい?」

「あ、うん。いいよ。」

「ありがと。」

「部屋片づけてたっけな…」


 てか俺赤坂さんと帰ってるところ見られてたってことだよな?なんて思ってんだろ。どうなんだ?

 俺に告白してきた女の子が、ほかの男と遊んでいるのをみて、俺は何か思うだろうか?


 …まあ、そんなもんだよなあ。


 多分こう思うな。別にいい気分はしないし、どちらかというと嫌な気分になるはずだ。なぜそんなことになるのだろうか?


 多分、自分の代わりがいるとでも言われているような気分になるからだろう。マズローの欲求5段階説から考えるならば、尊厳欲求と自己実現欲求の欠乏からいやな気分が生まれるのだろう。ふむ、なんだか一つ賢くなった気がすr


「なんか話すことないの?」


 ふぇ?そ、そうだなあ、話せること話せること、あ、そうだ。


「ちょっと疑問に思ってたんだけど、俺に頼らなくてもみーちゃんはいい点とれると思うんだけど、なんで勉強会を開くの?」


 やっぱりみーちゃんは沈黙が苦手なタイプなんだな。

 返答があるまでのちょっとの間ですぐにそんなことを考えた。


「確かにそうかもしれないけど、ここでいい点とらなきゃ多分高校で100点とかとれる機会なくなるでしょ?」

「お、やっぱりそう思う?俺もそう思ってたんだ。ここでいい点とれなくて死ぬほどマウント取られるのもいやだからさ。」

「マウントかあ。そんなことする人いるのかな?」

「どうだろね。でもこの学校そういうやついそうな偏差値してると思うよ。」

「…まだこの学校不満あるの?」

「いや、最初からないはずだよ。別に最終学歴じゃないし。」

「そうなの?私は不満あるけど。」

「まあ、この学校バス乗らなきゃ入れないもんな。」

「あんた落ちたのになんでそんな不満とか出てこないの?」

「別にないな。こうして結構楽しく暮らせてるしな。」

「なんかいいことでもあったの?」

「え?なんで?」

「いや、なんか雰囲気がよくなってきてるから。」

「そ、そう?」

「うん。よくなってる。」


 ちなみにだが、俺はみーちゃんが行きたいって言ってた学校に合わせて受験した。だから全く不満はない。一緒の学校に来ているわけだしな。まあこういう進路の決め方は、高校受験に関しては許されるとおもう。

 だがまあ、俺はかなり未練たらしい人間だな。まだ諦めきれてないのか。とはいえ、俺がここで自嘲しても意味ないし、また告白でもしてみるか?


 …まずは状況確認からだな。さっき考えてたことも含めてだ。きちんと対策しなければ、最終手段に出なきゃいけなくなるからな。

 最終手段は毎日告白作戦だ。この作戦はいけるという自信がある。ただ、これはマジで恥ずかしいのであんまりしたくない。今度断られたらこの作戦に行く。かもしれない。


「さてと、勉強しよう?」

「そうね。」


 ちらちらとみーちゃんの勉強の様子を見ていると、やっぱり俺よりも問題を解くスピードが速い。せっかくだしここは俺が先に頼る姿勢を出していこう。

 なぜかはわからんが、最近のみーちゃんは高圧的だ。高圧的になる理由は基本t系に自信のなさだったり、自己評価の低さからくるものだ。

 自己評価の低さっていうのは他人に頼るってことの妨げになる。ここで俺が先にみーちゃんに頼っておくことでみーちゃんに自分は必要とされているという自覚と、俺よりも優れているという優越感を持ってくれれば、俺はかわいい子とお話しできるし、みーちゃんとの関係はよくなって一石二鳥だ。

 

「ここの英文なんで複数形になってないの?」

「ん?これは不可算名詞なんだよ。確かに単位があれば数えられるかもしれないけど、1個2個とは数えられないでしょ?英語ができたときは単位なんてなかったからこういうのは大体不可算名詞。」

「わかった、ありがとう。」

「いいよこれくらい。」

「みーちゃんもわからないとこあったら言ってね?まあ、みーちゃんほどわかりやすくは教えられないかもしれないけどさ。」

「わかってる。」


 俺は英語の勉強が嫌いだ。だから、こういうところで話題として使ってやる。日本の英語の教育はおかしい。受験のための勉強でしかない。別に読みまくったり聞きまくればいいことを、わざわざ文法から組み立ててくる。だから嫌いだ。無駄だからだ。

 ま、勉強するがな。


 かわりに俺は数学が得意だ。きっと詰まるタイミングが多くなっていくはずだ。





 だが、今日は聞かれずにそのまま6時になり、みーちゃんを送っていくことにした。


「今日はありがとう。別に教えてもらったりしなかったけど、俺には充実した勉強会だったよ。」

「私が作った資料の対価だったんだけどね?」

「ははは、ごめんごめん。まあ、これからは忘れないさ。」

「信じるわよ?」

「任せときな。」


 どうしよう、何かしら対策しなきゃいけないんだけど。とりあえず通知してくれるアプリでも作ってみるか?


「それより、一人暮らしはどう?楽しい?」

「ん?まあ楽しいかな?登校時間が結構減るし、やりたいことに集中できるってのはうれしい。まあ、寂しいけどね。」

「ふーん。」


 …しばらく沈黙があった。


「たまに遊びにいこうか?」


 へ?この子ってばなんて言いました?たまに遊びに行こうか?って言いましたよね?え?俺のこと好きじゃん。絶対好きじゃん。こんなこと言うか?これ告白するなら今なんじゃ?で、でもまえ失敗したし、無理なんじゃ。

 は、しまった!黙ってる場合じゃない!


「あ、ああ遊びに来てほしい。」


 なんだこの変な受け答えは!きょどってんのバレバレじゃねえか!落ち着け落ち着け。余裕を持て。舞い上がりもせず、落胆させもせず、ただまっすぐに考えろ。俺は学べる人間だろう!?


「駅までで大丈夫?最近明るくなってきてるからまだこの時間なら大丈夫だと思ってるんだけど。」

「うん。大丈夫。」


 家までわざわざついていくのはさすがによくない。必死な感じになってしまうからだ。でも、すごい心配だよなあ。こんなだんだん暗くなってきてる時間にかわいらしい女の子が一人で帰ってくるなんて。

 空を見上げてみても、まだそこまで暗くなっていない。かなり赤いが、まだ不審者が出てくるような時間じゃないはずだ。

 そうしているとふとみーちゃんが話を切り出した。


「なんか昔を思い出すね。」

「そうだね。昔はよく一緒に遊んだか。」

「よく一緒におままごとしてたっけ。」

「そうだな。俺は外で動くの嫌いだったしな。」

「なんかよくバカにされてなかった?」

「されてたされてた。なんであんなことで笑われてたのか。子供ってある意味恐ろしい。」

「ピュアだからこその恐ろしさってやつ?」

「そうそう。」

「でもなんで一緒に遊んでくれてたの?私そんなに誘ったりしてなかったじゃない?」

「……なんでだろうな。もう俺あんまり覚えてないからわからん。」

「そっか。」


 ゆっくりゆっくりと会話を紡いだ。

 なんか今のみーちゃんは高圧的じゃないな。なんでなんだろ。


 居心地がいい。


「ここまでで大丈夫。じゃ、また明日。」

「うん。バイバイ。」


 幸せな時間ほど早く進んでしまうものなんだなぁ。

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倉本くんの含み笑い をれっと @syosaki

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