カクヨムの海のどこかにも、そっと漂っているかもしれない恋のお話。

 誰にも打ち明けられない、その人しか知らない秘められた想いがあるとして。小説や漫画や映画や、創作の世界では、たとえば解放されたり救われたり、何かの形で終止符が打たれたり……。答えが用意されていることがほとんどです。だけど現実は、その想いを一人抱えたまま人生を終える人たちも、この世界にはたくさんいるんだろうな。私の目には映らないだけで。━━そんなことを、ふと考えさせられた物語でした。
 ごく普通に社会生活を送り、年月を重ねてきた主人公。でも、彼が心に秘めた想いだけは年を取らず、芽生えた頃の瑞々しさを失わないままだったように思います。だからこそ、思いもかけない出会いを恋へと育んでいけたのでしょうね。
 彼が好きになったその人は、もう一人の彼。彼がなりたかった自分のような気がします。

 ひょっとしたらこの物語の主人公のような人たちが、カクヨムの広い海のどこかにいるのかもしれません。