構成として奇妙な短編集

星新一のショートショート群や、フジテレビにおいて90年代から放送されている『世にも奇妙な物語』で描かれる「奇妙」と、この短編集で語られる「奇妙」は少し違う。

いや、全体的に違うわけではなく、特にタイトルになっている『ジンベイザメ』に関しては、なんとも言えない「奇妙」さが残っている。この作品における「奇妙」というのは、物語的な意味での「奇妙」だ。淡々とした語り口で進められる超自然的な展開が、描かれるストーリーにおける「奇妙」だ。

だが、この短編集に収められている多くの作品は、そうした「奇妙」とは違う。確かに、語られている内容は現実的なものではなく、ファンタジックなものからドラマチック、そしてSF的なものまで多岐にわたる。

しかし、それらはどれも、まるで長編作品のあらすじ、もしくは短編作品の書き出しの様。「もっと描けたはずだ」と思わせる作品たち。端的に言えば「もったいない」と感じてしまう。

物語たちにストンと落ちる結末ばかりを求めるのは、読み手として未熟かもしれない。しかし、求められずにはいられない。なぜなら描かれる物語たちのテーマやアイディアは興味深いものばかり。

『黒波』や『椿樺荘殺人事件』なんか、中編小説の冒頭としてかなり優秀だ。『呪い』はもっと細かく描けば、素晴らしい純文学作品になり得る。『キューブ』も同じく、優れたSF短編になるだろう。

故に、短編集として読むというより、作家がどのような発想を有しているかを知るために読む意識で、読んだ方がいい。例えば、声優のボイスサンプルを聴くみたく。