隣の芝生は青い
サトゥ
第1話突然こ出会い
その日もいつも通り朝6時に目覚める。
時計を見て、適当に朝食を食べる。歯を磨いて、着替えて、ソファーでいったんくつろぐ。いつも通りのモーニングルーティンだ。
家を出るとまだ3月だから寒さが残っていて、ドアを開けると冷たい風に当たる。昼になると熱くなるので、この時期は嫌いだ。最寄り駅にいくと登校の高校生やサラリーマンのおじさんなどいつものように混雑している。電車が来ると満員でぎゅうぎゅうで、最初は疲れていだが、最近は慣れて当たり前になった。だが、香水のきつい人や体臭がすごいおじさんなどが近くになることは今だ慣れない。
会社に着くとまだほとんど人がいない。だが、1人せっせと仕事していた。彼は僕の後輩の清水拓実。真面目で、1番しっかりものだ。
「おはようございます。桂木さん」
「おはよう。何やってるの?」
「明日が契約の日なので、それまでに作らないといけないので。」
「まぁ、無理はしないでね。」
「大丈夫ですよ。」
そう言って自席に行き、自分もパソコンを開いて、昨日の仕事の続きを始める。
いつもは1番のりが多いので、少し悔しかったりする。
そこから次々と社員が通勤してくる。
定時ぎりぎりに走って入ってくるやつがいた。誰かは決まっている。同僚の小倉海だ。
「おいおい、みんな早いねー」
お調子者の彼はそれがみんなに認知されていて、ある程度までは許容されている現状がある。自分は仕事を続けていると後ろから小倉に肩をぐいっとやられる。
「裕太、タバコ吸いにいかない?」
「今は大丈夫」
「じゃあ、行こうー」
「断った方の大丈夫だよ!」
「ちぇー、寂しく1人でいくよ」
彼は来るや否やすぐにたばこを吸いにいく。これが日課なのだ。
そこから自分は、すぐに外回りに行く。予定の取引先の工場を見に行って、来月の生産を発注する。そして、すぐに帰ってきて書類をまとめる。
そうこうしているともう昼休みになっていた。コンビニで弁当を買っていつものように食べる。入社の直後は自分で弁当を作ったり、健康に気をつけたりしていた。しかし、独り暮らしが続くと面倒くさくなって、インスタントとかで済ませるようになって気にならなくなった。
「いつも、桂木さんってコンビニ弁当ですよね」
「男の独り暮らしなんてそんなもんですよ。」
彼女は僕の2つ後輩の近藤千佳さんだ。
そこで少し話していると、また小倉からたばこのお誘いがきた。今度は付き合うことにした。僕はたばこを吸うが一日に半箱程度だ。付き合いでたばこを吸いはじめたからだ。
ここ最近は喫煙に対して、社会が厳しくなった。今では法律で飲食店のほとんどは禁煙だ。ここのビルも屋上以外吸うところがない。屋上まで階段で上っていく。最近は階段がきつく思うようになってきた。
やっとの思いで屋上に着くと外がやけにうるさい。扉を開くと驚いたことに柵のゆこう側に女性がしがみついていたのだ。少しの間、理解できなかったが、それが自殺だと気づく。下を見ると徐々に野次馬が増えていく。
内心、「めんどくさいところに遭遇したなぁー」と思い、重いため息をはいた。
横で小倉があたふたしている。普段は軽いって言われる小倉だが、他人のことをいつも気にかけている。
横で「危ないからやめなよ。誰も喜ばないょ」とかなだめようと頑張っている。
僕にとってこの目の前で自殺を図っている人は、知らない人だし、別にどちらでもよかった。
僕は彼女が死のうがどうでもいい。だが、目の前で死なれるのは気分が悪い。死ぬなら誰もいないところでやれよと思った。仕事が積み重なったイライラしていたからか、目の前で死なれることに対して怒りさえ覚えた。
小倉が「君が死んで周りの人が悲しむよ。」
女性が「誰も悲しまないわ。」
「いや、親とか。」
「もう、他界してる。」
「じゃあ、友達とか」
「いない。」
「じゃあ…」
「無理に探さなくていいわよ。」
僕の第一印象はとんだメンヘラ女子だなー。とんでもなく、迷惑なやつだなー。
といったことだ。僕は自分でもなんで言ったのかわからないが、気がついたら口が動いていた。
「迷惑。他で死んで貰ってもいいですか?」
「「えっ?」」
小倉と死のうとしていた女性までが間抜けで、ポカンとした顔でこっちを見てきた。エンジンがかかった僕は止まらなかった。
「だから、死ぬのはどうでもいいけど、下にはあなたがもたついたせいで、野次馬がいるし、多分すぐに警察もくる。何より、目の前で気分がわるい。死体処理とかどうするつもりなんですか。考えてもみてくださいよ。グロいし、大変でしょ。樹海いきなよ。」
自分でも不思議なくらいペラペラと言葉が出で来る。
とっさに小倉が「まぁ、死んでほしいとかじゃなくて、ほら、彼なりの止め方なんだよ。だから、やめなよ。」とフォローを入れてきた。
そこから、彼女の何かが決意みたいなのがなくなった。
そこから冷静になったのか、警察のパトカーが一台来るとそこで辞めてしまった。
そこで泣き崩れた。ちょうど、警察が屋上まで上がって来たときだった。
そこからが面倒くさかった。警察に事情聴取やら、なんやらでただたばこを吸いに来ただけなのに、2、3時間拘束された。
小倉と二人で戻ると課長の鳥越さんに呼ばれて、嫌みを言われた。
「仕事より女の子を助けるなんてかっこいいなぁー」
「すみません。」
「俺より、仕事を分担した奴らに謝れよ」
「はい。」
「今日は残業な」
「分かってます~」
自分の席に戻り、自分の仕事を分担した人たちに謝った。いつもならただ、残業すればいいだけだか、仕事の納期が明日までできついから、鳥越課長が気をつかってくれたのだ。
「ほい、終わったぞ。それにしてもかっこいいねぇー」
「はい。迷惑かけました。小林先輩。」
小林加代さんは僕の2つ上の先輩だ。
女性だけど、いろいろと男まさりな所がある頼りになる人だ。
そこから、定時を過ぎてからも、残った仕事をした。手伝っくれた人たちはある程度のところで悪いので帰って貰った。そして、仕事が終わったときはもう夜の10時前ぐらいだった。
残っているのは小倉だけだった。
「海、終わった?」
「あとほんのちょっとだから待って。」
「この後、飲みに行こうぜ。」
「お前から言ってくるって珍しいなぁー」
「ちょっと愚痴りたい。」
「そうかい。だったら待ってて。」
「了解。」
そう言って僕は小倉の横でスマホを出してゲームした。
「裕太、終わったぞ。」
「ほんの少し待ってていいところだから。」
「あのなぁ~」
「すぐすぐ」
「3分で片付けろ」
「余裕。」
そうこうあって会社の戸締まりをして会社を出た。
会社の外に出ると、そこあの女性がいた。たしか、あの騒動のあと警察に連れて行かれたはずだが。
「あれ、さっきの人じゃん~」
あの時とは違い、小倉は軽く接した。基本的に社交的でTPOをわきまえるから、みんなから好かれる。こういう時にこういうやつがいるだけで気まずさが柔らぐ。
「何しに来たの?」
「いえ、謝罪をしに…。先ほどはご迷惑をおかけしました。それだけなので、失礼します。」
「ねぇ、この後こいつと二人で飲みに行くんだけど一緒にどう?」
僕は小倉の突然の提案に理解できず、思わず「は?」と口に出てしまった。
「いえ、そちらの方が迷惑そうなので遠慮します。」
「ちょっと待ってて」
と僕は肩を掴まれひそひそ話でこっちに話しかけてきた。
「お前はどうなんだ?」
「あまり、関わらないほうがいいぞ」
「なんで?かわいいじゃんかよ」
「いや、メンヘラとは地雷女かも知れないだろ。」
「そんなん、話してみてそうだったらお暇すればいいんだろ。」
「巻き込むなよ。」
「じゃあ、いいな。」
「だから」と言おうとすると
「こいつも来てほしいみたいだよ。俺が奢るし文句ないでしょ。話したいし。」
と大きな声で言った。
彼女も少し悩んで
「お言葉に甘えて」
となぜかさっきまで死のうとしてたやつと飲むことになった。まぁ、なぜ死のうとしてたのか知りたくないと言ったら嘘になる。
そこから、居酒屋に移動して、最初はお互いに気をつかって話が弾まなかった。
「自己紹介からするね、僕が小倉海で、こっちが同僚の桂木裕太だよ。僕たちはあそこのビルの佐藤商事に務めているんだよ。趣味はゲーム、アニメ。」
「僕は好きなことは映画鑑賞かな。」
「私は佐島清美と言います。」
そこで終わった。いや、もっとあるだろうとか思いながら、
「何歳ですか?」
「24歳です。」
「2個下なんだねー」
とかつまらない話が続いた。
「生おかわりー!」
「僕も。」
どんどんとお酒が入ると相手に気をつかわず、ずかずかと質問できるようになった。
正直、お酒はすごい。
お酒を飲むことで話しがどんどんと進んでいった。
「で、本題のなんで死のうと思ったの?」
「いいたくない。」
小倉がフォローを入れて
「まぁ、昼間に会っただけの人とは話したくないよね」
その後、彼女は完全に酔っ払った。
「私は~なんも上手くいかないのよ。」
「昼間に行ってたことで両親が他界してるのか?」
「おい、やめとけ」
「はぁ、知らないよ今どこにいるかもなにもかも。どうでもいい。」
「どうしたんだよ。」
「縁を切っただけよ。昔にね。」
「仕事は何をしてるんだ?」
「ただの事務職だよ。」
「あのビルの中の会社?」
「そうよ。5階の会社よ。」
「なるほど。職場ではなんか悩みとかないのか?」
「上司のセクハラには悩んでるわよ。あと、同僚関係とか。」
その後も色々話した。上司の愚痴から電車の中でイラッとくる人の行動や、恋バナまで色々話した。3人とも、かなり酔いが回った状態になった。
隣の芝生は青い サトゥ @satokore
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