物語を愛するすべての人たちへ…

あまりレビューを書かない、と言いますか、あまりレビューを書く衝動に駆られないタチなんですが、久々ですね、来ましたよ衝動が。抑えられない衝動が。

クッッソ長いレビューになりましたが、反省などしてません。
…むしろ逆。
あなた…「覚悟して来てる人」……ですよね。
レビューを「読もう」ってするって事は逆に「長文を読まされる」かもしれないという危険を 常に「覚悟して来ている人」ってわけですよね…
(…ゴゴゴゴゴゴゴゴ……)

続き早よ!!と、毎回ワクワクするほど面白く完成度の高い作品なんですが、特に物語の根幹を成す諸々の設定が素晴らしいです。
よーくよーく考えられています。

舞台としては、汎人類同盟と魔王軍が争いを続けている、よくあるファンタジー設定なんですが、主人公は魔王に戦いを挑んで殺された元勇者です。
殺されて転生するんですね。
で、オギャアと目覚めてみれば、なんと自分を殺した相手の子供に、つまり魔族の王子になっていたという。
しかも、この元勇者さん、幼い頃に魔族に両親を殺され、故郷も滅ぼされています。
魔族は絶対許さねェ!! 魔王は絶対ブチ殺す!!

ですが、魔王軍の戦力は圧倒的。もはや汎人類同盟の敗北は避けられない情勢です。

心は勇者のまま魔族の王子として振る舞いつつ、来るべき復讐の時の為に、また人類を勝利へと導くべく、主人公は策略を巡らし着々と力を蓄えていく、といった設定です。
この設定のお陰で、魔族側の生活も描かれ、人類の敵としての側面だけでなく、実は魔族にも人間的な一面(あれ?日本語おかしいなw)があることが分かります。
敵である魔族にも確固たる意思があり、苦悩があり、そこにはドラマがあります。
敵でありながら、めちゃくちゃ魅力的に描かれています。

自分の家族が親の敵という、ともすれば暗鬱とした作品になりそうな設定ですが、主人公の「悩むより行動しろ」的な思考と明るいキャラ設定、時にコメディタッチに描かれる作風で、楽しく物語を読み進めることができます。
かと言って、復讐劇が軽いという事は全くなく、主人公が背負った苦悩も、力を得る為の心が擦り切れるほどの代償も、魔族でありながら人の心を持つが故の緊迫した状況も、作者様の卓越した筆致によりバッチリ描かれています。

あとですね、ファンタジーに定番の魔法やスキル設定も、よく考えられてるなーと感心しきりです。
ネタバレになるので軽く触れるだけにしますが、魔法は両親から一つずつ受け継ぐ「血統魔法」、スキルは悪魔と契約して得る「権能」になります。
魔法はアニメ化早よ!!ってぐらい「映える」能力ですし、権能の方は主人公の置かれた境遇にベスト(>_<)な、物語的にも「核」となる能力です。

シンプルですが、それ故に応用が効いて奥が深い。
あ、これ、バトルの能力的な意味もありますが、物語に対しても、です。この設定が各キャラクターの生き様に一役も二役も買っています。
特に主人公の境遇と、魔法と権能とが織り成すこの物語の構造には惚れぼれします。

設定だけこれでもかと詰め込んで読者に押し付け、あげく設定負けしてしまったような作者のエゴ作品とは全く違います。
もちろん、この作品も深い設定がありますが、物語に対しての(つまり読み手に対しての)、開示の塩梅が丁度良いんですね。
押し付けがましくなく、設定が一人歩きしていません。
それもこれも、キャラクターが描けているから、の一言に尽きます。
魅力的なキャラ達だからこそ、数々の設定がその血肉になっているんですね。

魔族にも部族間の派閥争いがあり、ドロドロと権謀術数渦巻いています。
またファンタジー作品の例に漏れず、エルフ、アンデッド、ドラゴン、ドワーフ、ヴァンパイアなど、作中には数多くの種族が登場しますが、彼らの立ち位置や背景、その思想もしっかりと描かれています。
単なる記号として登場する作品も多いですが、この物語はそんな薄っぺらなものではありません。

良くできた漫画などで「キャラが勝手に動き出す」というのがありますが、この作品は緻密に組まれたプロットの上でなお、キャラクター達が意思を持って動いています。
それを受け止められるだけの設定の奥深さ、世界観、積み重ねた土台があるんですね。

そのキャラクターなんですが、これも味のあるキャラばかりで、適当なキャラなんて一人も居ないです。
皆さん個性的です。一部のキャラの名前が適当だ、と感じる方もいらっしゃるようですが、個人的には全く気になりませんでした。
歴史小説やお堅い戦記モノならいざ知らず、コメディ要素もあるファンタジー作品にそんなこと言われても…って感じです。
重くなりがちな設定の物語に於いて、一服の(いやそれ以上の)清涼剤になってますし、逆に「名は体を表す」を地で行っていて、かなり笑えます。
ていうか、そのネーミングセンス大好きですw

ですが、そんなキャラも含めて、それぞれに人格があり、それぞれの行動理念に則って生きています。
もちろん、感情のままに行動することもあります。
その場の思い付きでの言動ではないので、後になってそれがきちんと回収されたり、伏線になっていたりします。
キャラクターを大事にされてるのが伝わってきますね。

物語の展開の為だけに出てきて説明セリフを吐いて、え?なんでそんな思考回路なの?ってことがないです。
答えありきのご都合主義な超思考回路も無いです。
毎回、納得しながら読んでます。キャラの言動に違和感を感じること無く読めて気持ちが良いですね。

あ、大事な事を忘れていました。
気持ち良く読めるのは、作者様の筆力によるところが大きいです。誤字・脱字、引っ掛かる言い回しが全くと言っていいほどありません。
もうね、何故かランキング上位に居る(一部の)方々に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいです。
このままでは、日本語の崩壊の危機です。
せめて1回は添削しようよ!!作文書くとき先生に言われたでしょ!!

そして、その書き手としての基本ができている(偉そうに言ってスミマセン…)上に、話の流れが、キャラや情景を描写する筆運びが、抜群に上手いです。
また、その中にごく自然に設定が差し込まれたりしていて、ホント上手いな~と思います。
たぶん、もっと難しく堅苦しくガワだけ重厚に書こうと思えば書ける方なんですよ。
でもそこを敢えて読み易くライトな形に仕上げてるんじゃないかな、と思います。

改行と行間を駆使して、読ませるテンポも考えられてるなぁ… (しみじみ)
心情とセリフとを繋いで流れるように話が進んで行くなぁ… (ほれぼれ)
気が付いたら、まるっと一話読み終えてしまってます。あっという間です。

一話毎にしっかりとした内容がありますし、次回への引きも作った上で締めてくれます。
一話の分量も多過ぎず少な過ぎずで、シリアスとコメディの波状効果もありドンドン読めます。
まさに、わんこ蕎麦状態、続き早よ!!早よ!!です。
(わんこ蕎麦……我ながら上手いこと言ったな) ニチャア

また、数多ある小説のようにテキトーでは無く、一話毎のタイトルもしっかり考えられた上で付けられてるんだなー、と感じます。
え? お前のレビュータイトル、(タイトル例)のまんまじゃん、ですって?
いやいやいや、この作品にこそ相応しいタイトルではありませんか!!(力説。わふん!!)

誤字・脱字の添削、文章のテンポ、セリフの一つ一つ、キャラの内面描写、そういった推敲にもきちんと時間を掛けられてるんだろうなぁ……
愛がありますね、作品に対する愛が!!
これが面白くない訳がないです。

しかもですよ、これがほぼ毎日の更新ですからね、このクオリティで。……作者様は神ですか。

さらにさらに、コメントにもきちんと返してくれるなんて!! ……作者様は界王神ですか。

ただただ、作者様が無理をしておられない事を祈るばかりです…(>_<)

あとですね、
新境地を切り拓いたとも言うべきヒロインについて(わんこ可愛いよ、わんこ…)だとか
主人公が越えるべき数々の困難について(いや無理ゲーじゃねコレ…)だとか
震えるほど熱いバトル(作者様の才能が炸裂しとる…なんやコレ…!!)だとか
まだまだ書きたいことはあるんですが、この辺にしておきます……

えー、ここまで、長々々とした駄文にお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
(その命がけの行動ッ! ぼくは敬意を表するッ!)


禁忌にその手を赤く染め、元勇者にして魔王子の、血塗られた困難を極める物語!!
マジで超絶面白いんで、絶っっ対読んでくれよな!!!