七夕は、想い出のビューティフル・レイン。

大創 淳

【KAC20218】……尊い。


 ――奏でるメロディー。それは楽器などなく自然が創り上げたもの。雨。



 雨音で形成されるオーケストラ。……僕は見る、窓から見える景色。雨……やっぱり雨が降っている。大樹は浴びる自然の恵み。生き生きと色彩放つ緑の色。


 それは、想い出の色。


 繰り返される脳の中……僕が、この地で初めてできたお友達のこと。そして、初めて喧嘩した日のこと。季節は今と違って……夏だった。まだ真夏には至らない夏の風景。



 その日は、一学期末考査の最中。試験勉強で盛り上がる教室。……でも、僕は堪らなく憂鬱だった。よりによって苦手な理科。僕の名前は梨花りか。冗談みたいな組み合わせ。梨花なのに理科が苦手……正確に言うなら、本当に駄目なの。


 そして、それを知ってか、僕の唯一のお友達の……藤岡ふじおか可奈かな。当時は「ちゃん」付けで呼んでいた、お互い。可奈は僕と違って理科が得意……というよりも大好物。


 僕が、理科を苦手とするのに対し、――それは梨花ちゃんが、食わず嫌いだからよ。ほらほら、もう時間もないから、教えてあげるから。と……その時の可奈の顔が本当に、悪魔に見えたの。だから逃げた。僕は、――もういい! と言って、教室から逃げたの。


 吐きそうになったの……


 トイレに駆け込むほどに、こんなに辛いのに何で? 僕のお友達なのに、何で僕の嫌がることするの? 悲しくも、それに怒りも込み上げて……



 そのまま受けなかった。


 理科のテスト。……帰っちゃったの、怒ったまま。……可奈に対して。そして、大樹の近くだったかな? 通り雨と思うのだけど、激しい雨が降った。……ずぶ濡れ。何だか何だか惨めで、堪えきれないくらい悲しくなって、思い切り泣いちゃった。


 声は殺し、泣き声を……

 雨は涙を隠してくれるから。


 激しくも優しい雨……


 僕がまた、笑顔に戻れるようにと励ましてくれた。……尊いこと。それはこの雨降りの中、きっと僕と同じように励まされている子がいる。……励ましてあげたい。その思いにはまだ程遠いのかもしれないけど、無性に無性に書きたくなったエッセイの、


 ――そう。

 その続きを! とある小説サイトに登録して始めたばかりの『書くと読む』……その中で芽生えたばかりのエッセイ。その第二回目を。時は七夕……その日を笑顔で迎えたいから。そして、きっと可奈ちゃんが読んでくれると、そう思ったから。



 可奈ちゃんは理科が大好き。


 それから、お星様も大好き。お星様は僕も好き! でも、可奈ちゃんが好きなお星様はね、天体観測だから……ちょっと違う。そして、僕の名字は『星野ほしの』だから。


 まあ、僕の名字は兎も角……


 ただそれを、純粋に教えようとしていただけなの。――推しの教科。可奈にとっては尊いこと。いつかまた、プラネタリウムへ行こうね! と、僕を誘ってくれた。


 それに僕は女の子なのに、

 一人称が『僕』……普通なら、距離を置く子もいる。でも、可奈は違っていた。マシンガントークだけど、クラスの中で一番最初に、僕に話しかけてくれた。



 降り注ぐ白昼のビューティフル・レインは、僕の心をリフレッシュしてくれた。


 そこから始まる物語は、僕に教えてくれた。

 これまで転校の繰り返しで、お友達できてもすぐサヨナラになっちゃうから、僕はお友達の『尊さ』を知らずに今まで……これから、学ぶことが山積み。でも、嬉しい課題に心躍らせる。そして僕と可奈の出会いは、のちに大きな物語に展開する。



 ――奇跡が起きるの。


 僕の思考を遥かに超える不思議な出来事。そして尚且つ、奇妙ともいえる尊い関係を築き上げることとなった。僕には双子の妹がいた。十三年間、それを知らずに……


 繋がる同じ空。きっと織姫と彦星が再会するように、僕らは巡り合わせたのだろう。


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七夕は、想い出のビューティフル・レイン。 大創 淳 @jun-0824

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