#5 「尊い」から外れた君へ
どうも、香永が思っていた以上に百合の裾野は広いらしい。それはそれで良い発見なのだが、当初の問いに対しては。
「キヨの話は面白かったけどさ。結局、『尊い』の理由って定まらないままだぞ?」
「それは僕も理解しきれてないけども。男側として確かなの、やっぱり【届かなさ】なんだと思う」
「最初に言ってた、自己嫌悪とか同族嫌悪の話か」
「そう。後はやっぱり、男女カプだと男へのメッセージみたいなの感じうるからさ。努力も責任も後ろめたさも感じなくていいって意味で百合は楽園だし、遠いゆえの神聖さがあるってのが、僕個人の印象」
話としてはだいぶ落ち着いたものの、これまでの話を振り返ると、百合への理解だけでなく清水の自意識への心配も芽生えてきた。
「キヨさあ……ひとつお節介いい?」
「何よ」
「お前が男嫌うのも百合にご執心なのも自由だけどさ。自分を対象外として弾き続ける人生にはするなよ」
「……さっきの話、聞いてた?」
「その上でだよ。お前はお前が思うほど悪じゃない、二年も同じ部活やってた私はそれなりに仲間として、信用して評価してる。それに、恋愛ってのはそんな単純じゃない。他の男でもなく、他の女でもなくお前がいいって子はいるだろ」
言い切ってから、念のために付け足しておく。
「私は趣味じゃないけど」
「知ってるわい」
即座の返事に少しだけ安堵しながら、立ち上がって清水の背中をバシンとやる。
「一回きりの人生なんだ。少なからず愛着ある奴が自身を嫌悪し続けるの、私は好きじゃないからな」
「はいっ!? ……分かったよ、ちゃんと頑張るから」
「宜しい……けど、」
「何?」
「沙由に手を出そうとしたら私はキレる、気がする」
「知ってるわい!」
百合を理解しきれない百合オタク男子による百合の話 いち亀 @ichikame
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます