小さな星とあなたとわたし
宮嶋ひな
嵐
わたしの人生は、嵐だ。
昭和の終わりに生まれたわたしは、ギリギリ平成っ子の称号を逃した。その称号とて今や令和にとってかわられたのだから、儚いものである。
わたしが文字と絵で遊び始めたのは、小学校3年生のことだった。
親父の麻雀がうるさくて、タバコが煙たくて、つまらなくて知らないオジさんいっぱいでくさくて(失礼)、ヒマでヒマで仕方なかったわたしは、自分自身を楽しくさせるためにひとり遊びをしていた。
けれどゲーム機は兄にとられているし、三冊しかない絵本は飽きたし、さあどうしよう。
目についたのは、一本の鉛筆とコピー紙、そしてハサミだった。
最初に書いたお話は、動物たちがごはんを求めて旅をするものだったと記憶している。
さすがにもう残ってはいないが、絵本を自分で作り上げた興奮は、いまだ生々しく覚えている。
数あるひとり遊びのなかでどうして絵本を選んだのか? そう聞かれると、明確な答えがない。はっきりとした答えがないからこそ、本質的に「向いていた」のだろう。
わたしは本を作ることに見事にハマった。
ここに「しんじんさっか・みやじまひな・はっさい」の爆誕である。
わたしの家庭は嵐だ。
共働きで、ベッドタウンの田舎に引っ越してきたわたしは見事に浮いていた。浮かないようがんばったのだ。しかし努力はいつも実るとは限らない。
転校の初日、ドキドキしながら挨拶したわたしに投げかけられたのは、「うわ、こわそー!」という容姿イジりだった。
そこから、中学校3年生の卒業まで計6年間、手を替え品を替えいじめ抜かれた。
無視、ジュースぶつけられる、悪口、仲間はずれ、盗み。
女子特有の陰険ないじめに飽きたわたしは、本に逃げた。
中学の図書室にあるラノベはすべて読破した。当時ハマっていたのは「銀の海金の大地」。中学の夏休みは、すべて小説執筆に費やした。
朝8時から昼食をはさみ、夕方の18時まで。フルタイムで勤務している頃よりもマジメに書いていた。作家か。
スレイヤーズの二次創作のようなものから、理論を武装解除したSFまで、読んでは書き、書いては読んでいた。
嗚呼、美しき自己満足の世界。その頃は誰かに読んでもらうとか、感想をもらうなんて発想すらなかった。ワープロの感熱紙(懐かしいですね。太陽に当てると茶色くなっちゃうんですよ)に何百枚も印刷をしては、でっかいクリップで留めてニヤニヤしていた。
とにかく友達がいなかったので、一人でニヤニヤしている。端から見るとかなり怪しい子どもだ。
高校生からはようやく友達に恵まれた。一人の世界から社会に引っ張り出されると、小説を書いているヒマはなくなった。
そこから壮絶な紆余曲折があり、死ぬような思いをしながらも生き抜き、また小説の世界に戻ってくる機会を得た。
Eのつくスターの世界で、初めてサイトで小説を書いた。読み手さんを完全にオイテケボリにした自己満足の世界はまだ続いていた。それでも、わたしは初めて感想をいただいたのだ。
わたしの世界に、星空が浮かんだ。
面白い、楽しい、続きが読みたい。その言葉がひとつひとつ星になって、わたしの真っ暗な荒れ果てた世界に星を宿していった。
それは世界がひっくり返る衝撃だった。わたしの書いた文字が、わたしの作り出した世界が、物語が、誰かを楽しませている。その事実が、ただただ嬉しかった。
感動したのだ。
カクヨムに来たとき、その星々はさらに輝いて見えた。
カクヨムのひとびとは穏やかで優しく、新雪だった。暴風雨だと感じていたWEB小説世界で、凪いだ海にぽっかりと浮かぶ南島のように心をあたためてくれた。
読者であり、作り手であり、仲間である。
大海原のなか、葦の小舟でふらふらと、方角もわからないわたしを優しく引っ張ってくれた。
読者を、読み手を意識して書き始めると、今までのものとはまるで変わった。
もうわたしは、ひとりぼっちでニヤニヤしながら好きなものを書いているわけにはいかなくなったのだ。
みんなよ。これを読む仲間たちよ。あなたがたがどれほどの力を持っているのか、あなたがたがどれほど貴重で、素敵で、わたしが大好きな方々であるか、きっと知らないであろう。
勇気と愛情をありがとう。
わたしは新しい夢に向かって歩いています。
書きたいものも、感謝も、たくさんたくさんあるけれど、体はひとつしかないので。
壊れないよう、ゆっくりゆっくり、歩いて行きます。
またあなたの作品も読みにいくね。いつも楽しませてくれてありがとう。執筆、お疲れさま。
小さな星が、道を照らしてくれる。
小さな星とあなたとわたし 宮嶋ひな @miyajimaHINA
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