【全体版】
第一章 擬似的神編
第一話 始まりの少年
焉暦二〇二五年ある心理学者が【思想現実理論】を解いた
それは〝思いの力が現実に影響する〟を題材にしたものであった
簡単に説明すると、例えばの話である
子供の時「学校に行きたくないと思うと何故か熱が本当に出た」と言う経験はないだろうか?
【それはつまり〝思い〟が強い子供ほどその影響が〝現実に影響〟した結果と言えなくも無い事例の一つだろ】
そんなめちゃくちゃな考えを、理論として完成させてしまったのが【思想現実理論】である
それは心理学者が〝ほんの気まぐれ〟で〝証明〟した理論、ただその程度のものだった
その理論が物議を醸す中、若くして天才と言われ〝科学者〟となった小学生の少年がその理論を見つける
その理論を見た〝科学者〟の少年はその価値をすぐさま見出した
『これを使えば、どんな願いも叶える〝擬似的な神〟を作り出せるのでは…
そうだ、それなら、世界平和も夢じゃない…』
その考えはあまりに破綻しているように見えた
しかし実行する為に〝科学者〟の少年はまずその理論の裏付けに、病院などに来た精神的な傷を負った人に、催眠や洗脳に近い心理療法を行なった
その結果を〝研究資料〟に書き上げながら少しずつ〝擬似的神の器〟の定義を導き出していった
その研究の末〝擬似的神の器〟の定義を確定させた〝科学者〟は自分自身を少しずつその器に近い存在へ変えて行くのだった
その傍らで〝擬似的神〟の創造に必要となる思いの力を集める為の〝信仰〟を使用した試みを思いつく
それを組み込んだシステムを定義して行く中で、これは使えると思ったその〝科学者〟は【信仰】と【思想現実理論】の両方から世界に願いを叶えられる【擬似的神】を作り出す研究を本格的に始めるのだった
初めにした事はマジックを使った〝奇跡に見せかけた事象〟を〝神の力〟として浸透させ、大きな宗教団体を結成する事だった
その中で世界に自分を〝神の半身〟である〝擬似的神〟として認識させる事で人の〝信仰〟に当たる信じる心、つまり思いの力を自分に集めた
結果的に地道な積み重ねは、世界人口の約九割が信者の巨大信仰が誕生する事となった
その過程で〝科学者〟は過度なストレスによる影響を受け、若くして髪は全て白髪になっていた
しかしその自分の白髪も利用し、神の力が増した事で光の力が髪にも現れたなどといい、信者の力を受けて力を発揮する〝神の代行者〟としての地位を確実のものとしていった
その後、最終的に自分自身を〝擬似的神〟として認めさせた〝科学者〟は完全な存在へと成ったのだった
擬似的神となった科学者はその後、自分の願い【創造の魔法を使えるように】を叶える為にその力を使った
何故その願いを望んだかと言うと、飢餓に苦しむ人に食糧を与えたり、土地で悩む人に世界を構築するなど、創造で人の望むものを与えればみんなが幸せになると考えたからだった
しかしその願いは叶えられなくなる
【願いの代償】
それは〝擬似的神〟としての信じる思いの力を具現化する為に、願いに反するものを代償に願いを叶える呪いであった
〝科学者〟の少年が願ったのは〝世界を救う為〟の力だった
だから〝擬似的神〟の力は【世界への干渉不可能】を代償としてその〝少年〟から奪ったのだ
その代償により〝世界〟から弾き飛ばされる形でその〝存在〟が消えた〝科学者〟の少年
その結果、世界人口九割信者の宗教は〝擬似的神〟として崇められた存在の〝記憶〟だけが消え、巨大宗教のみが残る形になったのだった…
人の幸せを願う創造の魔法使い 〜連鎖する運命と死に行く世界で生に残りし者〜 紳羅 @shinra08
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