自分の中の熱いもの
コタツの猟犬
出会いは突然に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
以下、ウィキペディアより引用。抜粋。
『直感』とは、
感覚的に物事を瞬時に感じとることであり、「勘で答える」のような日常会話での用語を指す。
『直観』とは、
知識の持ち主が熟知している知の領域で持つ、推論、類推など論理操作を差し挾まない、直接的かつ即時的な認識の形式である。
(以下は作者の解釈)
上記のことを踏まえて考えるのであれば、
自分の経験や経験則から来る、瞬間的に正解を導き出せる力が、『直観』であり、
より本能に近くて、理屈ではなく判断する力というのが、『直感』であると言えまいか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
閃いた。
ピンと来た。
ビビビッと来た。
まぁ、言葉はなんでもいい。
兎に角、私の全身に電気が走った様な感じがしたのだ。
そう、たった一目。
すれ違っただけの、そのほんの数瞬。
その短い時間に感じたのだ。
確信したのだ。
彼女であると。間違いないと。
それが大事だ。
この感覚を大事にしたい。
いや、大事にしよう。
だから今、声をかけねば。
そうしなければ、何も始まりもしない。
行け私っ!
勇気を出すんだっ!
轟けっ! 中年の魂っ!
輝けっ! 我がくたびれた心と体よっ!
ふぅー緊張する。
だが、それは仕方ないことだ。
そう思うことにするのだ。
こんなことは、私の人生の中で初めてなんだから。
だけど、くそっ!
いざ、行動に起こそうとすると体が強張る。
まず、一声。一声で良いんだ。
『こんにちは』とかそんなんで良い。
多少警戒されても、され過ぎなければいい。
彼女が止まった時に、一言だけだ。
それこそ『いい天気ですね』とか、バカっぽくてもいい。
いや、しかし、
自分を信じたい気持ちのある一方、
自身を疑う気持ちもある。
本当に正しいのか? と。
いや、この反応も当然の事だ。
だから、捨て置けっ! 自分の弱い心など。
彼女だ。彼女がそうなのだから。
いいから行けっ! ワタシっ!
一秒過ぎるごとに深まっていく確信、この感覚を大事にするんだ。
ただ、こんな時、
普通はどうするのだ? どうしたらいいのだ?
私の中には確かな確信がある。
しかし、それは相手にとってはではない。
私にとっては絶対でも、
相手にとってはただのイレギュラーだ。
このまま安易に声を掛けてしまえば、ただの変質者だ。
下手をしたら通報されてしまう。
そう、もし間違っていたらだ。
いや、『もし』を考えるのはやめよう。
間違いないのだから。
絶対にそうなのだから。
だから、もっと建設的に、論理的に考えよう。
まず、気を付けるべきは、ナンパに間違われないことだ。
それは間違いない。
そういう人間だと思われてしまうこと。
これは恐い。
次に勧誘やキャッチだ。
今は法律が整い激減したが、その系統の話だと思われるのは一番イカン。
これは絶対に気を付けなければ。
ナンパに間違われるのは、まだ巻き返せるだろう。
しかし、怪しい勧誘などだと一度勘違いされてしまえば、
以後は、何を言っても、たぶん信じて貰えなくなる。
ああぁっ⁉
グダグダ考えていたら、距離が空いてしまった。
ダメだっ!
このままでは彼女は行ってしまう。
マズイマズイマズイ。ま~ずい!
このまま別れてしまえば、
下手したら縁が無くなって、一生会えないかも知れない。
考えは纏まらないが、
早足で近づき、意を決して、声を掛けることにする。
「あの、すいません」
「私ですか?」
「はい。突然で申しわけありません……その、あの…………」
振り返り、怪訝な顔をするも応じてくれる彼女。
一方、声を掛けたはいいが、詰まってしまう私。
「はい……あの、私に何かご用ですか?」
自分で声を掛けておきながら、
次の言葉を継げない私に、促す彼女。
「えと、その私は__」
「えっ⁉ もしかして、タマ子なの?」
「ああ、そうなんだ」
「そんな……どうして、男の格好してるの?」
「いや、男になったんだよ。
なら、君の方こそ、どうして女の格好をしてるんだい?」
「それは……そう。そういうことだったのね」
「ああ。僕達はお互いに生まれた時の性に縛られてたんだ」
「そうだったのね」
「ああ、そうだったんだ」
互いを見つめる二人の視線は、確かに熱を帯びていた。
自分の中の熱いもの コタツの猟犬 @kotatsunoryoukenn
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