宇宙からの侵略

「ここが地球か」

「はい」

「この星も我々が資源と生命をごっそり奪ってやる。ぐひひっ」

宇宙人が地球の侵略にやってきたのだ。


人間によく似ていたが、指が6本あるリーダ格のNが言った。

「まずは偵察だ。エージェント2名を送り込め」

「はっ」

侵略にやってきた宇宙人は地球人に比べ、5倍の力と10倍の知力を持っており、軍事力も1000年以上進んで、とても地球人に勝ち目はない状況だった。


「N様、エージェントが戻ってきましたが、様子がおかしいようです!」

「何があったというのだ」

「わかりません。ひどく憔悴し怯えておりました」

「よし、緊急会議を開き、エージェントに報告させろ」

「はい」


地球侵略のための緊急会議が開かれた。

エージェントは1名のみである。

Nが言った。

「もう1人のエージェントはどうした」

「戦死しました。。。」

皆が動揺した。

苦渋の表情で、Nが言った。

「エージェント1名が戦死したことを含め、報告を頼む」

エージェントBが話し出した。

「我々は、手始めに島国に偵察に降りました。その島国は日本と呼ばれ、技術も科学力も大したことありません。

我々の軍事力であれば、侵略も容易と思われました。

しかし、偵察開始後、数分経ったときの出来事です。

その日本のあちこちから、『悪魔の叫び』が聞こえてきました」

「なんと、『悪魔の叫び』とな」

「はい」

「エージェントAは、その『悪魔の叫び』を近くで聞いてしまったため、母船に戻ってから、息を引き取りました。私も、戻ってから数時間は昏睡状態に陥りました。」

「なんという破壊力だ」

エージェントBが続けた。

「我々が決死の思いで記録した映像があります。『悪魔の叫び』については、害が及ばぬよう加工しましたが、皆様、ご注意ください」


そこには、日本の駅前の慌ただしい様子が映し出されていた。

そして、とてもとても小さい音に加工された『悪魔の叫び』の場面が出た。

「はっくしょん!」

宇宙人たちは、一斉に耳をふさぎ、とても苦しい表情を見せた。

映像に映っていた、人間は鼻から体液を出し、それをさらにシート状のものへ勢いよく出しながら、笑っていた。悪魔の笑いだ。

その映像を見ながら、中には気絶した宇宙人もいた。

宇宙人にとって、「はっくしょん!」は、「苦しんで死ね」の発音に似ており、脳の中に直接響く周波数となって、とても不快な身体的苦痛を与えるのであった。

また、宇宙人たちは体液が出ていても笑っている、この生命体のことが怖くなりつつあった。

Nは言った。

「我々の科学力であれば、『悪魔の叫び』を防ぐ装置を開発できないのか」

科学担当が言った。

「難しいでしょう。報告によれば、日本に生息する人間の男女問わず、大人から子供まで『悪魔の叫び』を使うとのこと。従って、様々な周波数に対応しなければなりません。きっと、いたちごっことなることでしょう。また、開発にも多くの犠牲を払うことになります」

「おそらく、開発者の確保も難しいと思われます」

だれも『悪魔の叫び』なんか聞きたがらない。

Nが言った。

「うーむ。なんということだ。これまで、1035個の星を侵略してきた我々が、こんな低レベルの生命体に阻まれるとは。仕方がない。次の星系に向かうぞ。」

そうして、静かに地球侵略の危機は回避されたのであった。


「今年も花粉が多いな~」「はっくしょん!」

「花粉症、つらいよね~」「はーくしょん」

みんな、花粉症のつらさを口々にしていた。

花粉症のおかげで、宇宙人からの侵略から救われたともつゆ知らず。


おわり

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