走る

tolico

どこまでもどこまでも


 走る走る。ぼくは走る。


 最近ぼくはずっと走っている。ずっと、ずっと独りで走っている。


 いつまでもいつまでも代わり映えのない景色が続くけど、とにかく一生懸命ひたすらに。



 家族に会うために走っている。



 お父さんは元気かな。いつも食べ過ぎなお父さん。運動しなくちゃダメなのに、食べたらすぐに横になる。

 だから家族で一番まん丸。大きな身体で目立ってた。


 お母さんは元気かな。ご飯はいつも最後に食べる。いつもぼくたちを優先してくれた。優しいぼくたちのお母さん。


 兄弟たちは元気かな。お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹たち。ときどきケンカもしたけれど、みんなで遊ぶのは楽しかった。


 お兄ちゃんはとても頼りがいがある。時々意地悪もするけれど、妹たちとのケンカはいつもすぐに仲裁してくれた。

 ぼくと妹たちだと数で負けちゃうから、味方してくれるお兄ちゃんはとても頼りになった。


 お姉ちゃんは気配り上手。恥ずかしがり屋な一面もあるけど、みんなのことを気にかけていた。

 とても優しいお姉ちゃん。

 身だしなみにはしっかりこだわる、ちょっと可愛いお姉ちゃん。


 やんちゃだけど可愛い妹たち。そっくりな双子は息もぴったり。ケンカになったらとてもぼくだけじゃ勝てないね。

 それでも最後はやっぱり可愛い、ぼくの大切な妹たち。


 みんなどうしているのかな。



 ある日気づいたら独りぼっち。寝て起きたらみんな居なかった。

 寝床はまだ暖かかったけれど。ご飯は用意されていたけれど。


 寝る前まではちゃんとみんな一緒だったのに。




 走る走る。ぼくは走る。


 最近ずっと走ってばかり。たまには食べて、お水も飲んで。疲れたら暖かい寝床で横になる。

 起きたらずっと走ってる。


 もうどれくらい走っているんだろう。

 


 たまに人とすれ違う。大きな人とすれ違う。

 ぼくをじっと見ていたりするけど、ぼくは気にせず走ってる。


 いつまで走れば良いのかな。ちっとも前に進んでいる気がしない。

 このまま走っていて良いのかな。


 ぼくはなんで走るんだろう。なんのために走ってるんだっけ?



 でも、走らずにはいられないんだ。この丸い地面の上では。






 白く清潔な室内で、カタカタと小さく響き渡る音。


 棚には無数の薬品と、何かが入った大小の瓶。なにやら難しそうな本が並んでいる。


 机の上には何かの実験器具。ビーカーやシャーレ、顕微鏡などの理科の実験でもしそうな道具が置かれ、間を縫って何かのコードが走る。

 隙間を埋めるように書類が積まれ、カタカタと振動で一部が床に散乱していた。


 パイプ椅子には白衣が雑にかけられて、薄汚れてぼろぼろのスリッパが脱ぎ捨てられている。


 駆け出したように左右が前後に。

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