第178話 バーン公女

「お初にお目にかかります。ギレン公国、公女バーンにございます。」


「長旅、お疲れでございましょう。一度休まれたらと言いたい所ですが、バーン公女はお急ぎの要件とか?

先にお伺いしても宜しいか?」


「はい、我が国は恥ずかしながら、伯父のギレン公が亡くなってから、権力争いが起こってしまいました。

このままでは公国の民が戦火にさらされてしまいます。

どうか、オウカのお力で権力争いを沈めて貰えませんか?」


「お話はわかりました。

しかし、オウカとしては得るものが何もないのでは?」


「我が国で産出される鉱物の30%をオウカに提供致します。」

ギレン公国は鉱物の産出がユグドラシル大陸一であった。

30%はかなりの量となり交渉に値する物だが、


「それは魅力的な話では有りますが、約束が果たされる可能性が低いですな。

その話を指示されてる方はおられるのですか?」

バーンは言葉に詰まる。

結局の所、誰も指示されることのない話であった。


「それでは我が身と引き換えに約束を果たすと言うことではどうでしょうか?」


「我が身と引き換え?」


「公国の跡継ぎたる、私の伴侶をオウカの王族から迎え入れるということではどうでしょうか?」


「残念ながら、我が国には其方に差し出せる王族がおらん、かなりの遠縁は其方も避けたいでしょう。」


「王妹の御子息がおられると御聞きしましたが?」


「アベルの事か?あいつの正室は我が娘である。到底ギレンに差し出す事は出来ん。」


「そうですか・・・」

バーンは暗い顔を浮かべる。


其処にヨシタツとアベルがやって来る。

「父上、年端もいかない子が頼んでいるのです。

何とかなりませぬか?」


「ヨシタツ、他国に口出すにはそれなりの理由がいるであろう。ましてや、海の向こうの話、サクソン国の事もあるのでな、

容易く引き受ける事など出来ん。」


「ヨシタツの側室でいいんじゃね?子供が出来たら後を継がせたら良いだけだし。」

俺が提案する。


「おまえ!何を言い出すんだよ!」


「オウカの王の側室ならそれなりに形になるだろ?

まあ、正室の方が良いんだろうけど、タマさんいるしな。」


「そうだよ、タマになんて言うんだよ。」

「小さい少女に欲情して嫁にした、ごめんね。って言えば良いんじゃない?」


「絶対に怒られるからな!」


「あの~私はそれでも構いません、ギレン公国を救っていただけるなら・・・」


俺はヨシタツに小さい声で話す、

「ヨシタツ、取り敢えず婚約だけして、結婚は先延ばしにして、鉱物を得たら良いんじゃないか?

結婚するかはその時に二人の気持ち次第で。」


「馬鹿か、それでもタマに何て言うんだよ。」


「さあ?頑張れとしか言えん。」


「・・・結婚は俺じゃ無くても良いよな、アベルお前が結婚しろよ。」


「お兄様、これ以上、アベルの傍に女をつけると言うのですか?」

いつの間にかセイが横にいた。


「セ、セイ、いやな、アベルに女をつけるとかそんな事じゃないんだ。

ただ、小さな女の子を助けるだけなんだよ。」


「ダメです!お兄様が面倒見てあげたら良いじゃないですか!」

ヨシタツとセイが言い合いを始める。

俺はヒートアップする二人を止める。


「二人とも落ち着いて、煽っておいてなんだけど、そもそも、結婚する必要は無いだろう。

バーンさん、サクソン国は同盟に世界樹の枝を出したみたいだけど、ギレン公国にはそんな国宝は無いのかな?」


「世界樹の枝と同じぐらいというと太陽の光という国宝がございます。」


「それを同盟として提出できる?」


「出来ます!」


「そう、じゃあ、それを同盟の証にして貰おうかな。伯父さんそれでいい?」


「お前は勝手に・・・まあ、いい、バーン公女、それでは私達はその条件で同盟を受けましょう。」

結局の所、ヨシテルもバーンを見捨てる気は無く、家臣が納得出来る話を作れたことで同盟することにした。

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ソウルイータ・・・魂喰って強くなる。英雄の魂はどこ? カティ @fortune-Katty

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