第177話 ロキ、オウカに来る

ロキはオウカの首都キョウに使者として訪れる。

「ミナモト、ヨシテル殿にはご機嫌麗しく。」

「うむ、サクソン国とは国交は無かった筈だが、此度はどのような要件かな?」

ヨシテルの対応は比較的冷たいものであった。


「此度はオウカと同盟に参りました。

我が国は魔族と戦争になっておりまして、是非ご助力を。」


「しかし、我が国とサクソン国は戦争中ではなかったかな?」


「いえ、ヨイ領軍とはユグドラシルへの援軍のイザコザで多少揉めましたが、両国の間に恨みはないのでは?」


「そう取るか・・・確かに怨恨はないな。

しかし、助ける理由もない、違うか?」


「そうですね、ですのでこれを同盟の証として受け取って貰えませんか。」

ロキが差し出したのはサクソンに伝わる国宝、世界樹の枝であった。


「それは?」


「世界樹の枝にございます。

我が国、建国から伝わる国宝にございますがどうかお納めください。」

「・・・暫し、考えさせて貰っても構わんか?」

「もちろんにございます。

両国の未来をじっくり検討してください。」

「ロキ殿を客室に案内しなさい。くれぐれも丁重にな。」


ロキが退出した後、家臣達と話し合う。

「皆、どう思う?」

ヨシタツは重臣達に問いかける。

「悪くないかと、世界樹の枝を手に入れる機会は他にないかと。」


「しかし、世界樹の枝は何に使えるのだ?」


「神の加護があると言われております。

・・・が確かに何に使えるかは不明でございますな。」


「まあよい、かの国の覚悟は感じられるからな。

皆に聞く、かの国と同盟を結ぶに反対の者はおるか?」

重臣一同顔を見合わせるが特に反対意見はなかった。


「次の魔族は我等に取っても敵にございます。

味方を増やすのも宜しいかと。」

「では、決まりだな。サクソン国との同盟を成立させる。」

オウカとサクソンとの同盟は成立する。


そして、その夜は祝宴となった。


「ロキ殿、楽しまれておるか?」


「これはヨシテル殿、このような祝宴を開いていただき感謝致しております。」


「なに、今後は同盟国として末長くやっていこうぞ。」

ヨシテルがロキと歓談している最中、ヨシタツがやって来る。


「父上、少々困った事が起きました。」


「なんだ、今はロキ殿を歓待する宴である、少々の事は御主が差配すれば良いではないか。」


「それが、王としての判断をいただきたく。」

「どうしたのだ?」

「ギレン公国、公女バーン様がヨイにやって来たようにございます。

現在、ドウセツが庇護しておりますが。

至急父上との対談を要望しておられるとの事です。」


「対談は構わないが、至急とは忙しいな。

何かあったのか?」


「わかりませぬ、ただ、ドウセツの話だと、ろくに供を連れておらぬようで状況が読めぬとの事にございました。」


「わかった、すぐにキョウに連れてくるように伝えてくれ。」

指示を受けたドウセツは充分な護衛をつけて、バーンをキョウに連れてくることとなった。


「ロキ殿、失礼した。」

「バーン公女といえば、ギレン公国の後継者では?」


「はい、一体何のようでしょう?供も連れずというところが気になりますな。」


「ヨシテル殿、我が国はギレン公国に恩があります。私にもバーン公女の話を聞かせてもらうことは出来ないでしょうか?」


「話にもよりますな、なるべくお伝えしたいとは思いますが・・・」


「それで構いません、話せるようならお教え願いたい。」

ロキはバーン公女が到着するまでキョウに滞在することになる。


その間に同盟の締結、世界樹の枝の譲渡などやるべき事を済ませて待っていた。



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