第176話 ハデス撤退後

ハデスを撃退した、エギーユは軍を連れて引き上げる。

仇は討てなかったが、ハデスの行方がわからない以上、一度領地に戻り、情勢をみるつもりだった。

「アナベルよ、よくやったな。」

「エギーユ様、しかし、一匹賊を逃がしてしまいました。」

「仕方あるまい、まずは一匹始末したことを喜ぼうではないか。」

「はっ!」

「皆、一度帰還する、皆よくやったな。

ジーク、ギレン!」

「「ジーク、ギレン!!」」

エギーユ率いる軍勢は意気揚々と帰国を果たす。

怨敵の一人を始末したエギーユ軍をギレン公国の民は盛大に出迎えるのであった。


ギレン公国は現在ギレンの血を引くものはバーン公女ただ1人しかいなかった。

しかし、その子はまだ10歳で、到底政治が出来る訳がなく、各勢力が後見人の座を巡り争い始める。


仇の1人を討ち取ったエギーユ侯爵

ギレン公への忠誠心からバーンにも厚い忠誠を誓う。

ただ、国民からの人気の為に各勢力から警戒されており、現在バーン公女から遠ざけられている。


前王朝の流れをくむ、ダイクン侯爵

以前から国の乗っ取りを画策しており、バーン公女と親密な関係を気付いている。


狡猾な女狐が率いる、カーン伯爵

血は繋がらないがバーン公女に姉のように慕われており、その地位を利用して、権力を欲している。


辺境を領有する、パプテマス辺境伯

辺境の苦しみ故、独立を画策、この異変を利用して各勢力との交渉を行っている。


若き奇才が指揮する、トト伯爵

古い公国制度に反発して、新たな政治を目指す。

ギレンの血筋が絶えればいいと考え、バーン公女の暗殺を目論んでいる。


五つの勢力に分かれ、それぞれが思惑を持って、権力争いに突入した。

各自、独自の戦力を持っており長期化が予想された。


そんな中、バーン公女が姿を消す。

最後の目撃情報は港で姿を見たという水夫の話だけであった・・・


一方、ハデス達とサイサリスの影響で被害甚大のサクソン国だったが、ギリギリのところで国が助かっていた。

「ロキよ、復興はどうすれば良いと思う?」

オーディンは荒れ果てた土地を見て、頭を抱えていた。

「オウカに救援を求めては如何でしょうか?」

「待て、あの国と我が国は戦をしておったではないか!」

「あれはユグドラシルの援軍としてでございます。それも一地方の領主のみです。」

「一地方の領主であの力か・・・」

「オーディン様、ここは頭を垂れ、助けて貰いましょう。

魔族の脅威はオウカも知っている筈にございます。」

「わかった、ロキよ、使者として赴いてくれ。」

「かしこまりました。」

ロキはサクソンの代表として、すぐにオウカに向かう。


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