第175話 タナトス・・・

ギレン公国の候爵、エギーユはギレンが殺された日、すぐさま調査を開始。

ハデスの存在に気付く。


それからは手勢の精鋭を率い、サクソン王国まで追いかけて来ていた。

「あれが我等が怨敵ハデスか!」

「エギーユ様、先陣は私にお任せあれ、我が秘法サイサリスを放ちます!」

エギーユの副将たるアナベルが先陣を引き受ける。


「うむ、アナベルよ、ギレン公に捧げる花を咲かせるのだ!」

エギーユはアナベルに全軍の指揮を任せ、後方に下がる。


ハデスがオーディンと戦っている間にアナベルは少し離れた位置で秘法の準備を終えた。

其処には大きな大砲が一門、ハデスに向けられていた。

秘法サイサリスとは大砲に魔力を集めて放つ物だ。

この秘法の凄い常呂は魔力を込めれば込める程威力が上がる。

大砲自体、一度切りの使い捨て、二度目の矢は放つ事は出来ない。


その為に神具級の宝珠12個が用意され、魔力を補充する。

そして、魔力を出しきった宝珠は砂と変わる。


これはエギーユ家に代々伝わる宝珠であり、普通ならこのような使い方はしないが、それ程までにエギーユは怒りに満ちていた。


「アナベル閣下、サイサリス何時でも発動出来ます。」

「よし・・・

待ちに待った時が来た、ギレン公の命を奪った奴等に我等が怒り、思い知らせてやれ!

サイサリスを咲かすのだ!」

アナベルの指示の元、サイサリスが発動された。


それはハデスとタナトスが逃げるオーディンに意識をとられた瞬間だった。


「なっ!なんだこの閃光は!」

横からきた閃光に意識がそれていたハデスとタナトスは防御が遅れる。

「ハデス様、我が後ろに!はあぁぁぁぁ!!」

タナトスが遅れながらも全力で防御結界を張る、ハデスもそれに重ねるように防御結界を張る・・・


「俺も中にいれ・・・」

オズマはハデスに駆け寄るが・・・一歩遅くサイサリスの餌食となり、消滅する。


エギーユが怒りのあまり使用した宝珠の力でサイサリスは神の一撃に値するほどの威力を放っていた。


閃光がおさまった時には二人はかなりのダメージをおってる、しかも、魔力がほとんど尽きており、回復すら出来ない状態であった。

「抜かったわ、まさか横から別勢力とは・・・」

ハデスが周りを見ると、パズズ率いる魔物達と一緒にサクソン軍も閃光により姿を消していた。


ボロボロの二人を見てアナベル驚く、

サイサリスの攻撃を耐えたのか!

「だが、好機、あれ程の猛者とはいえ、今なら仕止める事も出来よう。

心有るものは我に続け!」

アナベルの突撃に傘下の兵が突撃を敢行する。


「ハデス様、御下がりを!」

「タナトス、少し時間を稼げ!今、転移を行う!」

魔力が少ない為に転移魔法に必要な魔力を上手く練れない。

「邪魔だ!どけ!」

アナベルはタナトスに斬りかかるがタナトスも満身創痍でありながら、何とか受け止める。


しかし、アナベルの腹心、ノイエがタナトスの左腕を切り落とし、ジールが横からタナトスを刺す!


「くっ、ガハァ!

貴様、一騎討ちの概念は無いのか!」


「ほざけ!暗殺に手を染める奴等に話す舌など持たん!」


「タナトス!」

「ハデス様!早くお逃げを!私を置いて早く!」

タナトスはハデスに逃げるように伝える。

今のハデスの状態では戦う事など出来ない。


しかも、先程の閃光のせいか周囲が浄化されており、ハデスが吸収する魂もなく、タナトスが回復する為の魔素もなかった。


「くっ、すまんタナトス・・・」

ハデスは涙ながらも転移魔法を発動させる。


「それでいいのです・・・ハデス様、来世でも、お仕えいたしますので、暫し御待ちを・・・」

タナトスはハデスの転移が完了する瞬間にアナベルに首を討たれた。

タナトスは命をかけてハデスを守りきったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る