第10話 悩みがどんどん増えていく
僕は考えなくちゃならない事がどんどん増えていった。
僕は男の子が好きなの?
ホモ? ゲイって事?
峰岸くんが特別なだけなんだけど……?
僕が女の子だったら良かったのに。
そう何度も思った。そうだよ。男の子になってるのが間違いじゃない? みんなと話していても、女子たちの方が楽しいし、ノレるし、気持ち分かるし。
男子とは? ……なんか、最近みんなよそよそしいっていうか、妙な距離感があるっていうか。
妙な距離感は女子たちの中にも去年辺りからちょっとずつ増えてきてはいるけど……だんだん「みんなで、女子男子関係なく」ってなくなっちゃうね。つまんない。
あーあ。……女の子だったらよかったのになあ……。スカートはいてみたいなあ。ピンクとかラベンダーのスカート。白やグレーと合わせて。あ、黒もいいよね!黒のタイトスカートは大人っぽいかな。
靴も黒にするの。ピンクとか少し欲しいな。バッグはね、可愛いレースか紐みたいなやつで編んであるお花のモチーフがついてて、……ついてて……?
やっぱ女の子はいいなあ……洋服だっていろんな種類も色もあるでしょう。小物だってバッグだって靴だって沢山あるでしょう。選び放題でしょう?髪型だって、アクセサリーだってお化粧だって……あ、だから女の子はお金がかかるって、お母さんが言ってたのか。
妹の楓の洋服を見るのが楽しい。ショッピングに行く時はどの洋服と組ませるのかを考えるのが大好き!楓がいて良かった。僕のはバラエティ豊かじゃないと思う。バラエティ?あれ、違ったかな?お母さんの洋服はいつもあんまり変わらない色とかデザインのばっかり買ってるんだもん。たまには違う色とかの服を見たいよ。
あーあ、つまんない。
僕が峰岸くんとお話したら、どんな話題になるのかなあ。バスケ? 勉強の事? アイドルとか? アニメとかマンガ? 峰岸くんは何が好きなんだろう。 食べ物……給食とか。
好き、って言えば。峰岸くんて誰が好きなんだろう……。やっぱりミニバスの子かなあ……。
ああああああ~僕はどうしたらいいんだろう~……?
僕はリビングのソファで、学校が休みなのをいい事にクッションを抱いて、ゴロゴロやってたんだ。もうね、考える事がいっぱいで。
ん~!と伸びをして向きを変えたら、そこに茂兄と基と楓が立っていた。
「わっ! 何! みんなで!」
僕はガバッと飛び起きた。
「……な? おかしいのは前からだけど、もっとおかしいだろ?」
茂兄がさらりと酷い事を言ってない? 楓が基の後ろで僕をじっ、と見ていた。え? お兄ちゃんはおかしくないよ?
「何それ。僕、おかしくないよ?」
「熱もねえ? 」
基が突っ立ったまま、ポリ袋を差し出した。
「お兄ちゃん,お熱があるの? 」
楓が袋の中身をのぞき込んだ。
「あー!いちごミルクだぁ~」
「え……くれるの? 僕に? 」
「
「基って見かけによらず優しいよな。始とは違って」
「おお! 俺が何だってえ?茂生君よお」
「始兄……みんなどうしたの? 」
茂兄と始兄と基と楓と僕。あれ? お父さんたちがいない?
「いつまで寝ぼけてんだ? もう昼だぞ。ほら、親同士がウチで飲み会してんだよ。俺らはこっちで昼飯食えって、ほらよ」
始兄が手にしていたのは、二つのフライパンにたっぷり入った焼きそばだった。
「ほら、手を洗ってこっちに来いよ。サラダは冷蔵庫に入ってるから葵が出して」
茂兄が基から袋を受け取って、楓をキッチンの方へ連れて行く。
「今日のお昼は焼きそばといちごミルクなのお? 楓はいちごミルクが大好きぃ~」
「良かったねえ、これは北海道のだから美味しいよ。ほら、手を洗おうね、おいで。サラダも食べるんだよ」
「サラダぁ? タマネギは入ってないよねえ? 楓はタマネギきらぁい」
僕はソファでぼーっとしていた。え? お母さんとお父さんは基の家で昼間からお酒飲んでるって事……?僕らでお昼ご飯を食べるの?
やっと飲み込めた僕。基はちょっと心配そうに見ていた。始兄と茂兄を手伝いながら。
ああ、そうか。昨日僕は風邪ひいたかも、って言ったから。
うん……基は見かけによらず優しいよね。風邪じゃないけど、色々考えちゃう事が増えてきちゃったんだよね……。
「おい、風邪じゃねえんならこっち来て手伝えよ!熱があるんなら測れ!バカ葵! 」
……前言撤回するぞこのバカ基……!
僕は急いでキッチンに向かった。ウチと基んちは焼きそばの冷めない距離なんだね?
杉崎葵「初めての人生日記」 永盛愛美 @manami27100594
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