→【放火殺人犯。】→自粛した。
→自粛した。
やはり、危うきに近寄るべきではない。
近寄るならそもそも大祐とか芽衣とかの時点でそうすべきだったろう。今更どうしてわざわざ危険に近寄る必要があるだろうか。遊びに行くなら、不安がないときに行けばいいのだ。機会が今しかないわけではないのだから。
俺が今回は、といえば、大祐はもともと不都合でいけない様子だったが芽衣もやめたようだった。まぁ、芽衣だけこられてもあの二人は困ったろうが。
そして、それが正解だというように――数日後、放火殺人犯は葵君や兼護がいる町で焼死したのが見つかった。おいおいマジかよ、ビンゴじゃん。である。
犠牲者は不思議とでていない。
どうして焼死したのかは依然として謎である。最後は自分を燃やしたいとかいう意味の分からない結論に至ったのだろうか?
誰かにやられたというわけではなく、気付けば発火していて、やはり野次馬を巻き込んで燃え死んだらしい。
兼護や葵君、幼馴染? の女の子さん、そのほか地元の友達もどうやら無事だったらしい。
フラグ的に、というと頭おかしいかもしれないが、いったら逆に犠牲者が増えていたかもしれないと思うといかなくて本当に正解だったのでは。
「いやぁ、こういうとなんだけど、無事でよかったよ」
「確かに複雑なとこもあるけどよ、良かったでいいと思ってるぜ」
ちょっと落ち着くまで時間が空いた後、直接あった葵君も兼護も元気そうだ。
「はじめました……」
「冷やし中華かな?」
初対面の挨拶が緊張で変なテンプレボケのやりとりみたいになっていたが、幼馴染さんとも知り合った。
見た目活発そうだが、どこか小動物みたいな感覚。
「だるかったわぁ、とも言えない雰囲気だった」
兼護はやる気ないというよりだるだるな雰囲気にジョブチェンジしているようだった。
「髪もそんなに切って。いや、切られたのか?」
「ん? あぁ、そうだったかな。こんなもんじゃなかったっけ」
「自分の髪の長さくらい覚えてろよ……」
自分の対するやる気まで失わないでほしいと思う。葵君も苦笑している始末。ツッコミを放棄するのはやめろ。
不謹慎で髪が切られるのかどうかは知らないが、まぁ、いわゆる式にふさわしくないとか考える親がいても不思議ではないだろう。
こだわりが合った風ではなく、ただ伸びていたという感じだったからめんどくさくはあっただろうが、ショック等はなかったろう。
「というか、どことなく顔色も悪くない? 大丈夫?」
「あぁー……そうかも? そんなつもりはない、のに最近よく言われる」
特に兼護の――白崎さん、二人の顔色が白いというか青いというか。あんなことがあったから、だとすれば長いので少し心配だ。
友達等ではなかったらしいが、野次馬には同じ世代の人間もいたという話だし、そういうところから知らぬうちにショックは受けていたのかもしれない。
どちらかといえば、白崎さんはわからないが、ショックを受けてそうなのは兼護よりも葵君のほうだという風に思っていたのだが、葵君のほうはすでに平常運転のようで、体調も特に悪そうでもなければ調子を崩したわけでもないようだった。
「ま、なんにしても、全員そろって何事もなかったからよかった、つーことで」
いまだ野次馬のような人間がきているらしい。
それをいうと、俺もそういうことになるのだろうか。
フラグが回収し終わっただろうと、今度はちゃんと遊びに来た。
葵君の両親達に特に問題なく挨拶を終え、町を案内してもらうことに。さすがに集団で変に目立ちたくはないということや色々重なったこともあって、葵君と二人だ。まぁ、今後機会もあるだろう。
いっても、有名殺人犯が異常な死に方をして日が浅い。
町はどこか、陰鬱な気配というか、雰囲気がどうしても漂っている。
「しばらくはこんな感じなんだろうなぁ」
「大迷惑だよね」
「ったくだよ」
悪態をつく。
つきたくもなるだろう。
「つうか、なんかよそ者! みたいに他の地域からの人まで異常に警戒する流れ? みてぇのができかけてんのがよぉ」
「あー。殺人犯に加えて、野次馬マスコミ効果?」
「あぁ。そういうのがうぜぇのはマジな話だけど、全部が全部そうじゃねぇだろってのはガキでもわかるのにな」
それも自然な流れだとは思う。警戒心と嫌悪は湧くだろう。結局、興味本位だ。負の好奇心を満たそうと、観光地のように来る野次馬に、調べ上げて金に換えようと無遠慮にずけずけ押し入ってくる自称真実を暴くジャーナリスト達。真実を暴きたいなら事故後あさってんじゃねぇよ、という言葉は届かないものだ。
どちらも、どうしようもない。来るなといえば逆に来るような人間性だから、用事もないのに好奇心で来ていることを隠さない。興味があるのはわかるけど、せめて隠れるようにするなり日を開けるなりしてからこいよと思うのはおかしなことだろうか。
「燃えた現場なんて、今でも人が群がってんぜ鬱陶しい。人が燃え死んだあとをそんなに見たいもんかよ。観光地の銅像じゃねぇってのに」
「そういうのをわざわざ見に来る人間のメンタリティ的には一緒なんでしょ。近くで起きたこと、っていうのが頭からすっぽり抜けちゃうんだよ。歴史博物館とか、そういうの見ているのと一緒の感覚だよ。現実味を感じ取れないっていうか、他人事すぎるというか。珍しいものみたさでしかない」
俺が言えた話でもないんだろうけどな。
「高校は遠くに行こうか、みてぇな話もでてんだよな。俺たちの中で」
「そうなんか? いや、それもいいのかもしれないな」
そういう人間も、もしかしたら多くなるかもしれない。引っ越す人間自体も出てくるだろう。
そうすると、高校に上がってからは会う機会が行く場所によっては少なくなるのか。それはちょっと寂しいことだ。でも、だからといっていてくれとは言い難い。
「まぁー俺は成績はともかく、面接がなぁ」
「成績はいいのか」
「いいんだなぁ、これが」
予想外に成績はいいらしい。予想外というと失礼かもしれないが、見えないというか、普段の口調からして勉強好きにも思えないから仕方ない。
「何気に俺は兼護やら香苗やらよりいいどころか、学年でも上から数えたほうがはええんだぜ」
「マジかよテメェ!」
「なんで切れてんだよ……」
兼護や白崎さんはともかく、学年でトップクラスは本当に予想外だった。運動もできて頭もいいってことか。本気で見た目で損しているタイプかもしれない。いいや口調は自分でやってるじゃん。もっとわかりやすく頭がいい喋りをしろ。
「……ま、いっても先の話だしよ。今は色々連絡手段もあるわけだし? 面倒ごとが起きた町出身になっちまったが、嫌じゃなけりゃ、これからも仲良くしてくれや」
「わざわざいうことかね」
少しは不安に思っていたのかもしれない。顔が広いところもあるから、そういう人が実際でたかな。
それを、薄情とは俺は言い切れない。誰だって、面倒は避けたいだろう。それが、付き合いの深さより上回っただけの話だ。快不快とは別の話。
それに、俺はその面倒ごとが起きるとわかっていた人間なわけで。
それを知ったら、葵君をはじめとした人たちは、俺をどう思うだろうか。
俺に責任はないとはいえ、どうなるかくらい少しは想像つくことだし、いうつもりも一切ないことだけど。
それを知っても、友達でいてくれたかい?
Play『MyLife.』 ing ほんのり雪達磨 @yokuhie
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