→【よみにおかえり。】→放火殺人犯。
→放火殺人犯。
不穏なニュースが流れた。
いや、流れている。流れていた、というべきか。
前の時、中学生にもなれば多少はとりつくろう、レベルはできるようになっていた。内心どう思っていても。
だから、大きなニュースくらいは覚えていたのだろう。
それは、最初は火事のニュースだった。
どこにでも起こっていること。
わざと、事故で、不始末で。
悲しいけれど、全くゼロにすることはできないのだろうこと。だから、そうそう頻繁にニュースなどにはならないようなことではある、はずだった。だが、増えすぎたのだ。
局所的に増加することがあまりに多かったのもあり、放火犯の仕業、と思われた。
そして、やがて必ず焼死体がでること、調べられた結果、どうやらその死体には抵抗の跡があったらしいことからも。
それがエスカレートしていって、もう同一犯だろうとニュースにもばんばんでてくるようになっていった。それくらいに、犠牲者が出たのだ。
それが目的だったのか、そうなっていったのか。
最初は、家ごと等というものだったのに、切り刻んだような焼死体から、二つを抱き合わせたような状態にした焼死体から、色々と口にするのがはばかられるようなものを
そういう異常性が積まれたから、一躍有名放火殺人犯になったわけだ。
そうだ、確かに。
最近そんな話が流れているな、とは。
そしてひっかかりはしていたのだ。だが、何に引っかかっているのかわからなかった。
捕まらない。
犯人が捕まらない。ただただ異様に燃やされた炭が増えていく。
そう、現実でも結局捕まらず死んだ、みたいな話だったはずだ。
それまでにどれだけ燃やされ殺されたのかわからないというくらいの、歴史に残るレベルでやってたらしい放火魔で頭がいかれている殺人犯だった。
だからというわけではないんだろうが、その死にざまも、自らが燃えながら、普通からすればありえないレベルで長く、出るところまでは高笑いを上げつつ動き回る、という。それを見たものが死ななければトラウマを持ってしまうレベルでおかしい。死ななければ、というのは、ただ笑いながら燃えていただけではなく、どういう基準でかは知らないが、燃えている割に俊敏に動いて何人かをともに焼死させていたかからだ。
そんな異常な犯罪者。
気になった理由が、今朝のニュースでわかった。
「そうだよ、近くでそうなったんじゃん」
事件の終わりは、この確か時期で。
その場所が――詳しくは覚えていないが、近くだったことだけは印象的で覚えている。隣町、レベルの近さではなかっただろうか?
「戻って、調べる……? いや……」
現実に戻って調べれば、それはすぐに出てくることだ。
だが、それをしてどうなるというのだろう? ここでないことだけは確かなのだ。それ以上を知る必要があるだろうか。
捕まえる?
どうやって。
顔――は、いろいろなところで流れていたから一応知っているが、どうやってみつけるというのだ。いや、みつけて何をどうやるというのだろう。通報する? してどうする。拘束できなければ、疑いがでてこなければ、証拠がなければ。そんなの、下手すればこっちが疑われて終わるだけだ。
たかが、今は中学生一人。
現実のもう少し大きな大学生だとしても、だ。
どうできるというのだろうか。知っていたとして。
神出鬼没な異常者相手に。喧嘩慣れしている学生とか、そういうレベルじゃない。明らかにやりたくて人を殺しているモノに。
俺は、ゲームをしているだけだ。
俺は死ななかった。前の俺はそうなりたがってさえいたが、この町にはどうやらこなかったようで、犠牲者はいなかったはずだ。
だから、ここにいれば死にようはないのだろう。
現実に沿っているのなら、そうなるはずだ。
どうしようもない。
それに、放置すればやがて死ぬ。それを早めることは、確かに誰かを助けることにはなるのだろうけど――できるとは思わない。調べても、最終的に死ぬ場所がわかるくらいのもので、足取り等細かく追えるわけではないのだ。追えたとして、誰に伝えたら止められるというのだ。自分で行く? 馬鹿な話だ。死体が一つ増えるだけだろう。そのくらいは俺にだってわかる。
いじめに反抗するのどうこうとは、違う。
それをどうこうしにいく、自分はできると思い込むなんていうのは、どうしようもないやつだろう。
無関係な人間を助けるために、できないことをしようというのは正義感をこじらせすぎだ。前の俺なら変にありもしない責任感をこじらせて思い悩んだりするかもしれないが、そもそも知っているだけで責任などない。
関係者が関わるとしても、気をつけろということくらいしかできない。
「はー……」
ため息。
口にすると最低の発言になるんだろうが、思うだけなら結構な人が思うようなことを思う。
他のところでやっててくれよ、マジで。
そんな時期に浮上した、葵君の『こっちに遊びに来ないか』という話。
いつもこっちに来ていたから、確かに言っても良かったとは思う。
向こうの親側とは何度かしか会っていないし。一度訪ねてみるのも悪くはないだろうとは思ったのだ。こんな時期じゃなければ。隣町、時期、誘い。フラグにしか思えないのはなぜだろう。そんな馬鹿な、そんな漫画みたいな話が、とは思うけど実際ゲームだ。
いつものメンバーできて、紹介した後はみんなで遊びに行けばいい、みたいなことをいっていたんだが、芽衣も大祐も――
『うーん。あんまり長く入れないかもなんだよ』とか『すまんな、ちょっと最近遠出できるほどの余裕がない』とか。結果的に一人で飛び込みます! みたいな状態になりそうなのことがそれに拍車をかけている。
他にも心配要素はある。
いや、心配要素にはならないはずのものなのだ。ものなのだが、どうしても嫌な感じというか、こちらの都市伝説的なものがあるから気分的にというか、覚えがないトラウマが刺激されている? とか。よくわからない本能が警戒しているというか。
紹介しようというスポットに、神社があるらしい。
一部では有名な神社だ。
そう、これまた妙な都市伝説的な噂がある神社なのだ。
まぁ、ありがちな。
最後に神頼みする場所的な、『〇〇すれば願いが叶う』『〇〇すれば相手への復讐が叶う』みたいな話。これも良く転がってるはずの話。
けれども、なんか社的なものにどうしても拒否反応が出ている。
俺は、知らなかったが神社仏閣アレルギーとかだったんだろうか。ねぇよそんなもん。ないよな? ないはず。
だから、理由事態はいうつもりはなくとも、どうしようか迷っている。
ただいくもいかないもおいておいて、いってどうなるとか、そこまでゲームしているからといって自分に影響力があるとは思わないが――どうにもニュースから考えて近くにいるかもしれないから、放火犯には気をつけろよ、と注意をしつこいくらい促すことはしておいた。
自己満足だ。
ただ、悔やむことを減らすためだけの。
それでもいい。できることをした、という事実が大事なのだ。
消化して、納得する。悪く言えば開き直って生きるには、そういう、そうできるためのパーツの積み重ねが大事なのだ。
無関係の話だろうが、誰かに働きかけたという事実が。
下手なオカルトより人間が怖い等話もあるが、重なるとなおさらフラグめいたものに見えて嫌になってしまう。せめて、別々に来てほしい。
少し前に、ちょっと死生観みたいな話までしたのさえ、前振りだったのかとか考えてしまう。そんなはずはない。ゲームしているからとゲーム脳になりすぎるのは本当によくないことだと思う。
俺は、思い悩むためにゲームをやっているのではないのだから。
楽しくなるためにやっているのだ。
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