第57話 呪われた破片

「ちょっと待てよジジイ…!いったい何を言い出す…?王都に潜入だと?」


「そうだ爺さん。詳しく説明してもらおうか」


アルダシール、ジギス。共に立ち上がり、熱弁を振るうホーデンを見た。一年前、王都に起こったこと。それを確かめさせるため、ギルバートに下された任務。


敵地。それも、その中枢の一つへ魔族が潜入しようとしているのだ。とても現実的とは思えない。


「言った通り。このゴブリンを王都へ潜伏させるだけのことだ。これは魔王様の勅命だ。貴様らが何を言おうがな」


「……ふん…こればかりはわからねェな。なあアルダシール?魔王様がどうして放浪者のこいつにそんな任務を課す?俺たちはこいつの素性もよく知らないんだぜ」


「素性など関係なかろうが。こやつは魔族。そして、『魔核』との関係性を少なからず持っている。それだけの話だ」


ホーデンはギルバートに魔核を投げ返した。ギルバートの掌に、自然に滑り込むようにして戻ってきたその石は、怪しい光をたたえ続けていた。


「ギルバート。お前も知りたかろう。なぜそんな小石ごときがあの大虐殺を引き起こしたのか」


ホーデンがギルバートの眼を覗いた。掌中の石を握りしめるギルバートは、眼を見開いている。


「俺の故郷……転生勇者と関係がある…?この石が…引き金…」


「ギルバート。お前はゴブリン族の生き残りとして、真実を知る権利がある。それと同時に、魔族の尖兵として転生勇者を探る責任も持ち合わせている。この任務は、放浪の身であったお前が魔王軍の一員となるためのものだ。魔王様は、お前を試しているのだ。魔族としてな」


ギルバートは、ホーデンに向き直った。決意を握りしめながらも、その顔からは困惑が拭いきれていない。


「ホーデン殿…俺の故郷は…俺の仲間は…こんな石ころのために滅ぼされたというのですか…?」


「残念ながら…そうだ。お前が握るその石が、歯車を狂わせた…」


ギルバートは、怒りか哀しみか。複雑な感情が入り交じったような顔つきで、魔核を見た。魔力増幅の媒体。義手に嵌めていた魔力の石は、己の故郷を滅ぼした呪われた破片。


「俺は…真実を知りたい。ですが…俺に任務を遂行できるのでしょうか…?俺はあくまでゴブリン…。下級魔族です。知恵も機転…力もあるわけではない……」


「さあな。それはお前次第だギルバート。だが、これだけは言える。お前には、魔族のための任務が下された。出来る出来ないじゃない。遂行する必要がある」





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ディアボロス ~転生勇者があまりにも滅茶苦茶なので、俺、序盤のゴブリンですが奴らをブチのめしていいですか?~ az tec @sho124

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