幸福の国の獣たち

作者 夢 浮橋

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★★★ Excellent!!!

【簡単なあらすじ】
ジャンル:異世界(恋愛)
互いに別の目的を持ち旅をする二人が、あることをきっかけに出逢う。初めは目的地が同じため、同行していただけだったのだが、互い目的や行き先を知り、共に神々の世界『幸福の国』を目指し旅をする物語。

【物語の始まりは】
ある朝から始まっていく。主人公の一人(ララキ)はうだるような暑さ、湿気の中支度を整え旅へと。その街の中央部では異国の少年(ミルン)が朝食に悩んでいた。二人はここで出逢い、少女の旅の行き先と少年が何処から来たのかなどが明かされていく。

【舞台や世界観、方向性】
アンハナケウ……幸福の国。すべての始まりの場所であり。神々のおわす聖域。しかしそれは空想または想像のものだと思われていた。
W主人公(男女)。多神教の世界。
動物が喋る。これは、その辺にいる動物が話すわけではなく、一般的なイメージでは召喚獣のようなスタイルで呼び出した動物が喋るというもの。個々に個性があり、母親のようなものもいれば、相棒のようなものいる。

〈補足:個人的に調べた用語〉
【僥倖】ぎょうこう……偶然に得るしあわせ。
【他生】たしょう……(仏教)今生(こんじょう)に対し、現在の自分がその生れ変りである過去の生、および生まれ変わって行く未来の生。前世および来世。(web調べ)

【主人公と登場人物について】
少女ララキ……ある場所を探すために旅に出る。軽装。彼女には現代を生きる人には少し信じがたいような過去がある。
少年ミルン……地に足のついたタイプという印象。初めはアンハナケウをおとぎ話として、ララキの言うことをバカにしている素振りがあったが、彼女とともに行動しているうちに、決定的なものを見てしまう。その為、信じるざるを得ない状況となっていく。
初めは仲が良いとは言い難い関係であったが、互いに旅の仲間として、必要と感じるようになっていく印象。

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★★★ Excellent!!!

動物の姿をした神々が住む幸福の国、アンハナケウを目指して、超ポジティブな少女ララキと、しっかり者で倹約家なミルン、謎を抱えるお嬢様スニエリタの三人組が旅をする……というのが前半のお話。仲間と共に旅をし、試練を乗り越え成長していく王道ファンタジーが展開されます。

舞台となる世界には、アジア系の国やヨーロッパ系の国、少数民族の文化圏も存在し、多彩な文化や宗教が異国情緒を演出しています。加えて差別問題などの暗部もちゃんと描かれており、歴史もしっかり作り込まれています。また、道中で行われる資金調達(真っ当な方法もそうでない方法もあり)の場面では、キャラの仕事中の姿を通して、世界をより近い視点から見られます。

ストーリーや舞台だけでも、既に魅力溢れる作品ですが、キャラがさらに鮮やかさを加えています。旅する三人組はもちろんのこと、三人に関わる人々や、動植物の姿でありながら人間臭い神々、美しい紋を描く召喚魔法・紋唱術で呼び出す「遣獣」という動物たち、そして敵対するキャラまで、際立つ個性を持つ面々が登場します。

丁寧かつ共感を呼ぶ心情描写がなされているため、キャラを身近に感じられると共に、肩入れすること必至です。彼ら彼女らが織り成す恋愛模様も見所で、人間同士はもちろん、動物の神々同士や、人間と神の間にも恋が芽生えており、様々な恋をニヤニヤしながら眺めてしまいます。

登場人物の中でも特に目を奪われてしまうのが、主人公の一人であるララキ。話が進むに連れて暗い背景が明らかになっていく彼女ですが、持ち前というか養われた明るさで、自分の事情や降りかかる災難を物ともしません。他者を大切に思い励ましたり、好きな人について楽しげに語ったり、恐ろしい神相手に親しげにしたりと、賑やかで可愛らしく、愛さずにはいられない女の子です。

後半では、前半から示唆されていた、神々のうち一柱の裏切りによって展開… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

小説をほめるとき、例えば美しい文章表現だったり、登場人物の細やかな心情の紡ぎ方だったり、伏線の散りばめ方だったり、様々なポイントがありますが。

この作品は何より、世界設定が、世界が本当にしっかりしている!
宗教や地理、紋唱術と呼ばれる技術とそれを前提とした生活観、服飾文化に人種間の関係性、神々の関係性など、世界の成り立ちが実在するようにしっかりしていて、血肉を感じるんです。
そこに立つ人々と神々の、なんと活き活きとしていることか。

そして登場人物、みんな魅力的です。
主要人物はもちろんのこと、敵役も脇役もそれぞれに魅力と信条があり、みんなに感情移入してしまいます。
人も神も合わせれば登場人物は多い方ですが、印象薄い人なんていません。

そして何より、我らが主人公ララキ!
なかなかに悲惨な内容も多いこの物語で、それでも明るく楽しいお話として読めるのは、ひとえに彼女の前向きさのおかげでしょう。
きっとララキ一人だけ別の人間にすげ替えて物語を展開させたら、全然違うお話になると思います。
どんなになっても超ポジティブで、神様相手にもペースを崩さない彼女はシンプルにすごいというか、もうちょっと相手が神だってわきまえたっていいんじゃないですかねぇ!?
あなたよりによってあの神とかあの神とかに気安く話しかけたりして、命知らずというか畏れ多いって感情が欠落してるのか!?(※大絶賛してます)

本当に、素敵なお話でした。
多くの人に読んでほしい作品だと思います。
100万字もあるから尻込みしてしまう?
うるせぇ名作を100万字分も読めるんだから超お得でしょうが!
のめり込んだら100万字なんてすぐだよすぐ!
本当に!!おもしろかった!!です!!

★★★ Excellent!!!

非常に丁寧に世界を作ってるファンタジー作品と思います。

まず物語序盤は、明るい(女の子)主人公ララキと、生真面目なもう一人の(男の子)主人公ミルンのやりとりとかが、コミカルな雰囲気を作ってるけど、色々な側面から描かれてるような差別問題とか、シリアス要素もかなり表に出てると思います。だからこそララキのライトなキャラがいい感じに際立ってるとも感じます。

コミカルなシーンは、 勢いがあったりするようなものでなく、ほのぼのコメディみたいなのが多い印象。
個人的には、ララキがミルンをからかってる時、さりげなくミルンじゃなくミルシュコ(愛称)て言ったりするシーンとか、なんか好きです。

世界観に関しては、何よりまず紋章術と遣獣の設定がかなり興味深いと思います。
それと、民族神話世界的な神々の設定と、ある程度の文明レベルが非常にシナジーしてる印象受けます。

紋章術は、言うなれば魔法ガジェット。
特別な手袋をして、手で専用の紋章を描き、「招言詩」という文言を唱えることで、契約している獣、「遣獣」を呼び出すことができるというようなもの。
遣獣は、普段はそのへんでふつうに棲息している獣という説明もあり、呼び出されるのは、カエルやクマやヘビといった、普通の地球で見られるような動物たちが基本。ただしその能力に関してはファンタジー色ある。

遣獣(動物)たちは、紋章術師の苦手な属性を補ってくれたり、自然知識などを与えてくれる。信頼関係があるなら招言詩を短くできる。招言詩は契約時に作詩する場合もあるが、昔の人が使っていたものを借用して再利用するのが手っ取り早いという設定など、よく練られてる感じする。

設定的には、神様、生物、物質全てに心があり、その心に個別の紋章が刻まれている感じで、遣獣のファンタジー的要素は紋章の影響ぽい。
また、そんなふうに生物の設定にファンタジー的要素が付属していること… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

全話読了してのレビューです。

この物語の見所は大きく分けて三つあると思います。
一つ目は紋唱術。二つ目にラブロマンス。三つ目に陰謀です。

紋唱術は紋章を描き、風や氷といった属性を操る力です。
ここで面白いのが、すべての生命(人も獣も神も)に心の紋章が刻まれているという点です。
これを利用して紋唱術師は契約した獣を呼び出したり会話したりできます。この獣との触れ合いが過酷な旅の癒しとなり、バトルともなるととてもかっこいいです!
そして紋章が刻まれているのは神々も同じということで、神と人を繋ぐ絆でもあれば、後に大事件を引き起こすきっかけともなります。

次にラブロマンス。
主役の三人はもちろん、その家族も、果ては神々の間でもラブロマンスが話を盛り上げています!
なんといっても主人公たちの恋なのですが、とにかく私はWヒロインのひとりスニエリタに惚れ込み、彼女の成長を応援しつつ恋路の途中で涙ぐみました。ぜひ注目してもらいたい人物です。
そして一般的な男女の情以外にも、ヤンキーを笑って許す好好爺の深い情や、弟分をそっと見守る気丈な女神の眼差しなど素敵な愛がたくさんあります!

そして陰謀。
この作品は登場人物ほぼ全員の視点から描かれています。それだけ人間社会でも神の間でも、本当に様々な思いが絡み合いストーリーに深みを与えています。
第一に裏切りの存在です。
これが物語に暗雲を呼び先が見えないわくわく感があると同時に、問題が一気に複数件乱立する場面もあり読者の目を離しません。
心理描写はとてもていねいに描かれ、混乱は少なく読みやすいです!

名前が覚えられない!
この問題は私も直面しましたが大丈夫です。
各国の名前と対応する神、登場人物などの一覧は最後のページにまとめられています!

心が持っている明と暗。
それに苦悩する者や突き進む者、じっと堪えたり、またはおおらかに包んだり、迷… 続きを読む