海外旅行が好きな人、今まで見たこともない聞いたこともない土地にでかけて、初めての街に夜着いて宿を探し、次の日の朝ドキドキしながら何もかもがキラキラ輝く街路に踏み出していくのを懐かしく思う方に、心からオススメします!
新型コロナと阿呆な政府のせいで日本に閉じ込められて、あの異国の鼻をくすぐる名も知らぬスパイスと、意味が分からない歌のような言葉が飛び交う市場を懐かしく思って胸焦がす様でしたら、そんな気持ちの99/100くらいは、この物語を読んで癒やされるかも知れません。
僕は100/100癒やされました。
作者様は言葉と想像力の魔法使いです。どっかで人類学の院生とかやってそう。次々と万華鏡のように、エキゾチック名前の街や人、神や動物たちがこれでもかこれでもかと現れます。そしてその一人一人が、一つの物語の主人公を張れるくらい個性的で生き生きしてるのです。
そして最高に素敵なエンディング!
本当に、こんなに輝度と彩度が規格外の物語読んだことありませんでした!
マジ、作者様に無断で印刷して本にまとめて、宮崎駿に郵送凸してアニメ作って貰ってネットフリックスで世界公開して欲しい。やろうかな。
【簡単なあらすじ】
ジャンル:異世界(恋愛)
互いに別の目的を持ち旅をする二人が、あることをきっかけに出逢う。初めは目的地が同じため、同行していただけだったのだが、互い目的や行き先を知り、共に神々の世界『幸福の国』を目指し旅をする物語。
【物語の始まりは】
ある朝から始まっていく。主人公の一人(ララキ)はうだるような暑さ、湿気の中支度を整え旅へと。その街の中央部では異国の少年(ミルン)が朝食に悩んでいた。二人はここで出逢い、少女の旅の行き先と少年が何処から来たのかなどが明かされていく。
【舞台や世界観、方向性】
アンハナケウ……幸福の国。すべての始まりの場所であり。神々のおわす聖域。しかしそれは空想または想像のものだと思われていた。
W主人公(男女)。多神教の世界。
動物が喋る。これは、その辺にいる動物が話すわけではなく、一般的なイメージでは召喚獣のようなスタイルで呼び出した動物が喋るというもの。個々に個性があり、母親のようなものもいれば、相棒のようなものいる。
〈補足:個人的に調べた用語〉
【僥倖】ぎょうこう……偶然に得るしあわせ。
【他生】たしょう……(仏教)今生(こんじょう)に対し、現在の自分がその生れ変りである過去の生、および生まれ変わって行く未来の生。前世および来世。(web調べ)
【主人公と登場人物について】
少女ララキ……ある場所を探すために旅に出る。軽装。彼女には現代を生きる人には少し信じがたいような過去がある。
少年ミルン……地に足のついたタイプという印象。初めはアンハナケウをおとぎ話として、ララキの言うことをバカにしている素振りがあったが、彼女とともに行動しているうちに、決定的なものを見てしまう。その為、信じるざるを得ない状況となっていく。
初めは仲が良いとは言い難い関係であったが、互いに旅の仲間として、必要と感じるようになっていく印象。
【物語について】
ある者を探している少年と、ある者(正しくは人ではない)を救うために旅をする少女が、初めは偶然行き先が重なり同行しているが、彼女の目的を知り彼が自分の意志で、共にアンハナケウを目指す物語。
ララキの旅の行き先が分かったものの、ミルンに対し彼女は不愉快な思いをしているようである。それというのも、アンハナケウをおとぎ話とバカにされたからであろう。しかし彼女はその存在を確証しているような印象だ。不愉快な思いをし彼と別れた主人公であったが、何故か行く先々で出逢ってしまう。しまいには同じ場所へ向かうことを知り、同行することに。その頃には、彼の実力を知り不快感は消えていた。
この旅の中で、あることをきっかけに異変が起き始める。その原因に薄々気づいている二人。次の目的地に向かう途中で、またしても幻獣に出くわす。その戦いでミルンは怪我を負ってしまうが、その事がきっかけで謎の少女と出逢うのだった。
その後ミルンは、ララキの境遇について彼女から打ち明けられる。それは想像を絶するものであったし、にわかには信じがたい事実であったろう。だが、彼には信じるだけの理由があった。こうして二人は、共にアンハナケウを目指すこともなったのである。
【良い点(箇条書き)】
・世界観がしっかりしており、方向性の分かりやすい物語である。
・あらすじの感じからは朗らかなイメージを持ったが、明るいファンタジーというよりは、段々と謎が解明され、常に危機と隣り合わせというような”冒険もの”の色が濃い。ハラハラドキドキしつつも、次はどんな展開が待っているのだろうか? というワクワク感もあるのだ。
・意外性が詰まっている。あらすじでは”古代人”というキーワードは出てくるものの、どんなモノなのかその時点では想像がつかない。(彼女の境遇が明かされると、納得するという意味合いである)
・人物の背景が濃く、深い。何故旅をしているのか、どんなものを抱えているのかは段々と明かされていくが、知れば知るほどに物語に深みが出てくる。
【備考(補足)】13話まで拝読
【見どころ】
戦闘シーンはあるものの、チートスキルなどで強いというわけでもなく、戦うことを目的としていないからこそ、面白味のある物語である。
旅の目的はそれぞれ異なるものの、目的地が合致し、互いを必要としている二人がアンハナケウという場所を目指して旅をする。初めは相性の決して良いとは言えない二人だが、あることをきっかけにして正式な同行者となるのだ。
この物語は目的地にたどり着くことがメインであり(それだけが目的ではないが)、必然的に戦闘というものが起きる。通常ならば旅に危険はつきものであっても、それは偶然に過ぎない世界なのではないだろうか? (これは想像でしかないが)
その為、彼らは”屈強な冒険者”というわけではなく、自らの意志により強くなろうとしていく。成長の物語でもあると思われる。
その上、二人とも裕福なお金持ちというわけではないので、路銀を稼ぐという場面も。優雅な旅行者ではなくバックパッカーのようなイメージの方が近い。ファンタジーでありながら、地に足のついた現実的な部分もあり、”旅”というものに対してのリアリティを持たせている作品だと感じた。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか?
彼らは無事、目的地にたどり着けるのだろうか?
そして目的を果たせるのだろうか?
その目で是非、確かめてみてくださいね。お奨めです。
動物の姿をした神々が住む幸福の国、アンハナケウを目指して、超ポジティブな少女ララキと、しっかり者で倹約家なミルン、謎を抱えるお嬢様スニエリタの三人組が旅をする……というのが前半のお話。仲間と共に旅をし、試練を乗り越え成長していく王道ファンタジーが展開されます。
舞台となる世界には、アジア系の国やヨーロッパ系の国、少数民族の文化圏も存在し、多彩な文化や宗教が異国情緒を演出しています。加えて差別問題などの暗部もちゃんと描かれており、歴史もしっかり作り込まれています。また、道中で行われる資金調達(真っ当な方法もそうでない方法もあり)の場面では、キャラの仕事中の姿を通して、世界をより近い視点から見られます。
ストーリーや舞台だけでも、既に魅力溢れる作品ですが、キャラがさらに鮮やかさを加えています。旅する三人組はもちろんのこと、三人に関わる人々や、動植物の姿でありながら人間臭い神々、美しい紋を描く召喚魔法・紋唱術で呼び出す「遣獣」という動物たち、そして敵対するキャラまで、際立つ個性を持つ面々が登場します。
丁寧かつ共感を呼ぶ心情描写がなされているため、キャラを身近に感じられると共に、肩入れすること必至です。彼ら彼女らが織り成す恋愛模様も見所で、人間同士はもちろん、動物の神々同士や、人間と神の間にも恋が芽生えており、様々な恋をニヤニヤしながら眺めてしまいます。
登場人物の中でも特に目を奪われてしまうのが、主人公の一人であるララキ。話が進むに連れて暗い背景が明らかになっていく彼女ですが、持ち前というか養われた明るさで、自分の事情や降りかかる災難を物ともしません。他者を大切に思い励ましたり、好きな人について楽しげに語ったり、恐ろしい神相手に親しげにしたりと、賑やかで可愛らしく、愛さずにはいられない女の子です。
後半では、前半から示唆されていた、神々のうち一柱の裏切りによって展開が急転。絶望的な状況を打破すべく動く神々と、協力することとなった三人組それぞれが活躍する内容となっています。油断を許さない緊迫の状況が続き、時に駆け引きを交えながらも、立ち向かうキャラたちの姿が眩しく輝いています。恋愛事情も加速するので、そちらからも目が離せません。
ぜひ、異世界の旅を楽しみながら、ララキ・ミルン・スニエリタの成長を見届けてください。最高のハッピーエンドを掴む三人の姿に、幸福を分けてもらえること間違いなしです。
小説をほめるとき、例えば美しい文章表現だったり、登場人物の細やかな心情の紡ぎ方だったり、伏線の散りばめ方だったり、様々なポイントがありますが。
この作品は何より、世界設定が、世界が本当にしっかりしている!
宗教や地理、紋唱術と呼ばれる技術とそれを前提とした生活観、服飾文化に人種間の関係性、神々の関係性など、世界の成り立ちが実在するようにしっかりしていて、血肉を感じるんです。
そこに立つ人々と神々の、なんと活き活きとしていることか。
そして登場人物、みんな魅力的です。
主要人物はもちろんのこと、敵役も脇役もそれぞれに魅力と信条があり、みんなに感情移入してしまいます。
人も神も合わせれば登場人物は多い方ですが、印象薄い人なんていません。
そして何より、我らが主人公ララキ!
なかなかに悲惨な内容も多いこの物語で、それでも明るく楽しいお話として読めるのは、ひとえに彼女の前向きさのおかげでしょう。
きっとララキ一人だけ別の人間にすげ替えて物語を展開させたら、全然違うお話になると思います。
どんなになっても超ポジティブで、神様相手にもペースを崩さない彼女はシンプルにすごいというか、もうちょっと相手が神だってわきまえたっていいんじゃないですかねぇ!?
あなたよりによってあの神とかあの神とかに気安く話しかけたりして、命知らずというか畏れ多いって感情が欠落してるのか!?(※大絶賛してます)
本当に、素敵なお話でした。
多くの人に読んでほしい作品だと思います。
100万字もあるから尻込みしてしまう?
うるせぇ名作を100万字分も読めるんだから超お得でしょうが!
のめり込んだら100万字なんてすぐだよすぐ!
本当に!!おもしろかった!!です!!
非常に丁寧に世界を作ってるファンタジー作品と思います。
まず物語序盤は、明るい(女の子)主人公ララキと、生真面目なもう一人の(男の子)主人公ミルンのやりとりとかが、コミカルな雰囲気を作ってるけど、色々な側面から描かれてるような差別問題とか、シリアス要素もかなり表に出てると思います。だからこそララキのライトなキャラがいい感じに際立ってるとも感じます。
コミカルなシーンは、 勢いがあったりするようなものでなく、ほのぼのコメディみたいなのが多い印象。
個人的には、ララキがミルンをからかってる時、さりげなくミルンじゃなくミルシュコ(愛称)て言ったりするシーンとか、なんか好きです。
世界観に関しては、何よりまず紋章術と遣獣の設定がかなり興味深いと思います。
それと、民族神話世界的な神々の設定と、ある程度の文明レベルが非常にシナジーしてる印象受けます。
紋章術は、言うなれば魔法ガジェット。
特別な手袋をして、手で専用の紋章を描き、「招言詩」という文言を唱えることで、契約している獣、「遣獣」を呼び出すことができるというようなもの。
遣獣は、普段はそのへんでふつうに棲息している獣という説明もあり、呼び出されるのは、カエルやクマやヘビといった、普通の地球で見られるような動物たちが基本。ただしその能力に関してはファンタジー色ある。
遣獣(動物)たちは、紋章術師の苦手な属性を補ってくれたり、自然知識などを与えてくれる。信頼関係があるなら招言詩を短くできる。招言詩は契約時に作詩する場合もあるが、昔の人が使っていたものを借用して再利用するのが手っ取り早いという設定など、よく練られてる感じする。
設定的には、神様、生物、物質全てに心があり、その心に個別の紋章が刻まれている感じで、遣獣のファンタジー的要素は紋章の影響ぽい。
また、そんなふうに生物の設定にファンタジー的要素が付属していることを思わせる一方で、誰も彼もが、普通に動物の階級分けした分類的なもの(つまり哺乳類とか爬虫類とか両生類)を当たり前に認識していたりもして、近代(近世?)的な科学的視点もそれなりにあることを思わせる。
とりあえず、爬虫類や両生類が苦手なミルンが、ヒロイン的なキャラであるスニエリタの遣獣である巨大ヘビに、内心びびるシーン。そしてその巨大ヘビ、ニンナを、初対面で可愛いと言っちゃうララキに、こいつは本当に女なのか、とミルンが考えたりするのとかは、(まあコメディシーンなんだけど)興味深い描写かなと思う。
しかし生物設定において最も注目すべきは、樹かもしれない。
樹は、遣獣でなく、火や水や雷のように、紋章術で利用できる属性としてもあるが、しかし生物的性質のために特殊な、というように描かれている。
また世界観的に神々という存在の特別性が高い。
大陸には神が多く立ちすぎて、自由気ままに振る舞うと、いつかすべての生命が滅んでしまう。神は信仰と祈りの力を源とする。など、特に神なる存在が、優れた生物というより、はっきり超常的と言える存在であることを示唆する説明がわりとある。
しかし、神様同士の性格はそれほど特別な感じではない。例えば、弱い神が強い神を弱体化させる思惑で、人間にあまり関わらないという考えに賛同したりするなど、駆け引き的なことも多い設定。つまりは、人間たちのような感情を持っていて(つまりすごく人間的で)、人間たちが作るような社会を作っている。その辺りの描写は、かなり多神教の民俗神話っぽい印象。
しかし、そのような民族神話的雰囲気の世界観で、かつそこそこに技術文明もあるのが楽しい。そういう意味では、これは特に、ゲームのRPGでありそうな世界観と言えるかもしれない。
一神教がマイナーなまま、文明が発展したif世界というような想定もできるかも。
文明に関しては、水浴び装置、地元名物のお菓子、大学、違法な賭博クラブ、列車や駅前の喫茶店。加えて特に重要だと思ったのが、郵便局や、書類手続きとかの描写。(少なくとも一定水準以上で)識字率はわりと高そう。
やはりRPGゲーム的なファンタジー世界を連想しやすい感じ。しかしその上で 、 描写や表現自体は古き良きファンタジー小説というような印象もある。
総合すると、かなり幅広い人が好きそうな、いい感じのファンタジー世界の小説と思います。
全話読了してのレビューです。
この物語の見所は大きく分けて三つあると思います。
一つ目は紋唱術。二つ目にラブロマンス。三つ目に陰謀です。
紋唱術は紋章を描き、風や氷といった属性を操る力です。
ここで面白いのが、すべての生命(人も獣も神も)に心の紋章が刻まれているという点です。
これを利用して紋唱術師は契約した獣を呼び出したり会話したりできます。この獣との触れ合いが過酷な旅の癒しとなり、バトルともなるととてもかっこいいです!
そして紋章が刻まれているのは神々も同じということで、神と人を繋ぐ絆でもあれば、後に大事件を引き起こすきっかけともなります。
次にラブロマンス。
主役の三人はもちろん、その家族も、果ては神々の間でもラブロマンスが話を盛り上げています!
なんといっても主人公たちの恋なのですが、とにかく私はWヒロインのひとりスニエリタに惚れ込み、彼女の成長を応援しつつ恋路の途中で涙ぐみました。ぜひ注目してもらいたい人物です。
そして一般的な男女の情以外にも、ヤンキーを笑って許す好好爺の深い情や、弟分をそっと見守る気丈な女神の眼差しなど素敵な愛がたくさんあります!
そして陰謀。
この作品は登場人物ほぼ全員の視点から描かれています。それだけ人間社会でも神の間でも、本当に様々な思いが絡み合いストーリーに深みを与えています。
第一に裏切りの存在です。
これが物語に暗雲を呼び先が見えないわくわく感があると同時に、問題が一気に複数件乱立する場面もあり読者の目を離しません。
心理描写はとてもていねいに描かれ、混乱は少なく読みやすいです!
名前が覚えられない!
この問題は私も直面しましたが大丈夫です。
各国の名前と対応する神、登場人物などの一覧は最後のページにまとめられています!
心が持っている明と暗。
それに苦悩する者や突き進む者、じっと堪えたり、またはおおらかに包んだり、迷走したり、殻をひとつ破ってみたり。
神も人も関係なく、心との向き合い方をそれぞれの方法で見せてくれた物語でした。ララキたちと旅ができて楽しかったです。ありがとうございます。