本棚に置きたい物語

 幸せな事は、まだ未読の物語がたくさんある事。
 不幸な事は、まだ未読の物語を知らずに生を終える事。
 そう言ったのは誰だったか…。

 読み手の矜持はさておき、古今東西、素晴らしい作品は数多くあり、どなた様に於いても「お気に入り」の作品があると思います。
 私にとって本作は、大切な一冊として本棚に並べたい作品となりました。

 本作は、一時的な転校によって、別れと出会い、そしてまた訪れる別れ、そんな環境や状況に振り回されて、ひどく心が疲れてしまった少女の成長の物語です。
 過剰な設定も、複雑な演出もそこにはありませんが、それ故に普遍的であり、いつの時代、どの年代の読者にも受け入れられると思いました。

 では、何故、普遍的な物語が、これほど自分の琴線に触れたのか?

 読み始めてすぐに、まるで現実に起きている事を眺めている感覚に陥ったのは、作者の表現力が私の想像力を容易く越えていたからです。
 そのため、これは映像作品として鑑賞したいな、と感じたのですが、いやそうではない。
 文字という表現で、読み手に対して、ここまでの想起を果たせる、小説と言う表現手法の素晴らしさと、限りない可能性を再確認させてもらえたからです。
 書き手としての自分も、読み手としての自分も、どちらもとても幸せになれたのです。

 私にとって本棚に並べたい物語とは、ベストセラーや著名な作家さんばかりではありません。
 何度も読み返して、その都度幸せな気持ちになれる、本作はそんな物語になりました。

 最後に、更新を待ち望んだ日々が終わることが、とてもとても寂しいですが、執筆、お疲れ様でした。
 次回作を楽しみにしています。