二十四想 家系図も見た目もカオスになりそう

「今神様いる~?」


 神様のところに帰ってきた報告中。

 これをしないと急ぎの仕事が受け取れないから。


 たまに直接神様の配達員みたいな人が来るけど、私が家にいるときだけ来てもらうようにしてる。

 コリレを怖がらせるわけにはいかないからね。


「今は用事があるから来れないわよ」


「あ、ウェン母様。久しぶり」


 ウェン母様は私とコリレの祖母でちゃんと血がつながってる。

 私の母親は自己受精みたいなことして私たちを産んだわけで、100%純度の血がつながってると。

 しかもジルママとウェン母様は姉妹なわけで…。

 はあ?


 家系図が凄そうとしかわからないね、うん。

 母親には30を超える兄弟姉妹がいるから余計頭おかしくなりそう。

 考えない方がよかったかもしれない。


「全然会わなかったけど、ウェン母様はこの家にいたの?」


「いいえ、20暗くらい帰ってなかったわよ」


「あ、そんなに」


 暗は地球で言う日と同じ。

 毎日太陽が出るわけじゃないから、無白で暗くなる回数を数えた方がまだ確実。


 候補には月もあったらしいけどややこしくなるからやめたとか。

 変えてもややこしくなるだけなのにね。


「なんでそんな長い時間外に出てたの?」


 ウェン母様は零世代の中で一番足が速い。

 だって獣人系のお母さんだし。

 脚もチーターみたいに毛で覆われてるし。

 人間よりも絶対足速いよね。


 身長だってかなり高くて。

 神様は私よりも背が高いんだけど、ウェン母様はもっと高い。

 180以上あるってジルママが言ってた。


「ちょっと子供喧嘩があったのよ」


「それ私の仕事でしょ」


 数十年この仕事やってるからプライドみたいなものはあるんですぅ!

 喧嘩の仲裁から殺しまで、なんでも承ってます!


「貴女じゃ手慰みにもならないわよ、風圧で砂になるのがオチよ」


 即死じゃないすか、やだー。

 第一世代の誰かかな、風圧って言ってるから翅か翼が生えてそう。

 砂になるのが死んだ後なのか死ぬ途中なのかでやばさが結構違うけど。

 死ぬ途中なら二人に絞れるよ。


「私いくら死んでも平気だよ」


 コリレが怖いけど、血が出なくて一切触れない死に方なら許されると思うし。


「そんなに物騒なものではないの。ただの痴話喧嘩よ」


 痴話喧嘩でも危険度は変わってないんですけど。


「山が谷になっただけよ、珍しいことではないわ」


 天変地異じゃないっすか。

 痴話喧嘩で天変地異起こせる人間か否人も二人しかいないんですけど。


「それあのドラゴン夫婦だよね、うん」


 激強ドラゴン兄妹夫婦、語呂がいいね。

 私も姉の立場なコリレと結婚してるから親近感ある。


 兄の方が竜って感じのドラゴン、しん・りゅう○うみたいなイメージ。

 妹の方は龍って感じのドラゴン、レッ○ウザみたいな姿。

 どっちも人型にはなれるらしいけど…たぶんドラゴン形態で喧嘩したよね。

 風圧で即死って言ってたし。


「そうよ、流石に人がいないところを選んで喧嘩していたわ」


 限りある命はつぶしたらもったいないもんね。


「何が原因で喧嘩したの?」


 どうでもいい気がしてるけど。

 こういうのってだいたいプリン食べられたーみたいなことが原因のこと多いよね。

 食の恨みは深いってよく聞くし。


「確か、妹ちゃんの胴体がお兄ちゃんの首を絞めたことが理由の筈よ」


「…うわぁ」


 思ってたよりかは切れるのも仕方がない理由な気がする。

 限りある命は大事にしなきゃ。


「首が締まるくらいで大袈裟よね。」


 おっと?


「愛する人の抱擁ぐらいは受け止めないと」


「局所的すぎるでしょ、そのハグ」


 実際に絞まってんじゃん。

 それも全身使った熱烈な絞首だし。

 ハグと首絞めが同じもの指してるのやばすぎる。


「首極まってたら息とか血が危なくない?」


 ドラゴンだから血流は大丈夫かもだけど。

 生き物だから酸素は…吸う…よね?

 ドラゴンってだけで息しなくても平気だったりしそうなんだけど。

 呼吸の話なんてしたことなかった。


 あ、目の話。

 聞いてないけど、今度ジルママに聞こ。

 

 ウェン母様には…この話が終わったら聞こう。

 なんとなくで違いを教えてくれそうだし。


「どうして首が絞まると息が吸えなくなるのよ?」


「…は?」


「…え?」

 ・

 ・

 ・

「肺呼吸って知ってる?」


「知ってるわよ。口や鼻で息を吸って吐くことでしょう?」


 そのまんまだけどそうだね。


「じゃあ窒息って知ってる?」


「息が吸えなくなることね」


 意味はちゃんと分かってるっぽい。


「首絞めると窒息するのは分かるよね」


 人間って首通して呼吸してるからね。

 当たり前。


「首が絞まっても息はできるわよ?」


「え?」


 …人間は息できなくなるよね。

 …にんげ、あ。


「…ウェン母様って何呼吸してるの?全部言って」


「そうね、ジルから聞いたものは肺呼吸」


 ちゃんと肺呼吸もあるんだ。


「エラ呼吸」


 もう人間じゃない。

 両生類かな。


「あと皮膚呼吸ね」


 カエルかな。

 昆虫と植物以外の呼吸法全部盛り。

 キメラじゃんもう…。


 そういえば私のひいおじいちゃんはホントにキメラなんだった。

 だったらまだキメラ度低い方なのかな。


 ウェン母様は頭のてっぺんから白い角生えてて、腕と脚が毛に覆われていて、縦に瞳孔が細長いっていう人間ベースのキメラみたいな見た目だけど。

 左右対称な分ちゃんとした生物だよね。


 ひいおじいちゃんは違ったのかな、ジルママが詳しそうだからいつか聞こう。

 忘れてなければ聞こう。


「ウェン母様は今言ってた全部で息できるってこと?」


 頭を軌道修正。

 気付いたら関係ないこと考えてる。


「そうよ?当然じゃない」


 わかってないなこれ。

 よく神様生きてこれたよこんなの。


「あのね…、人間って肺呼吸以外できないんだよ」

 

 人間というか、神様みたいな人だね。


「そうなの?」


「そうだよ。神様とキスする時に長く続けると苦しそうでしょ?」

 

 神様まで人間離れした呼吸器を持ってるわけじゃないと思う。

 神様の親は普通の人だったらしいし、改造してなければ鼻で息することになるはず。

 

「ああ!確かに!」


 ホントに息切れするまでキスしてたみたいだね。


「体力少ないわねって思ってたけれどそういうことだったのね」


「ウェン母様より体力少ないのは当たり前だと思うけど」


 この旗落ぽろるの上にはいないよ。

 常識みたいなもん。


「そう?」


 その自覚は持ってて欲しかった。

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なりわいイコール人の敵 歩行 @lcoocoo

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