おまけ_第6話 マリア・ヘリオドール6
私の下の兄夫妻も席に着いた。
『はぁ~~~~~~~~~~~~~』
心の中で大きなため息を吐いた。外面は……、大丈夫だと思う。
戦争の英雄。公爵という地位。この国の財政面で大きな力を持っている。
そして、世界最強の武力。
正直この、エヴィお兄さまが一番怖い。
温厚な性格で、誰にでも優しく接する人なのだけど、時々シルビアお義姉さまの表情を曇らせる時がある。
その瞬間が怖い。
数ヵ月前の話になるけど、シルビアお義姉さまに会った時に、『百合ルート行けんじゃね?』と思ったことがあった。
百合ルートに突入すれば、最低でも破滅フラグは踏まないはずだと思った。
だけど、次の日にその希望も打ち砕かれた。
シルビアお義姉さまの懐妊が発見されたのだ。
何時もこれだ。
私が百合ルートを希望すると、世界がそれを拒絶するのだ。
国王陛下と会ってからは、その理由も分かった気がする。
私は、シナリオに沿った行動しか許されないのだと……。
ただし、破滅フラグは踏みたくない。
正直、相手は誰でも良い。それに、前世に比べれば、この世界は楽しい。
楽しむだけ楽しんでから死んでやろうと思う。
決闘で死ぬのだけは、御免だけど。
「決闘相手だけど、軽傷だった。マリアは、また腕を上げたようだね」
エヴィお兄さまは、回復魔法の使い手だ。遺恨が残らないように相手に処置を施していてくれていた。
異国から来てまで、挑んで来た相手なのだ。必要ないとも思えるけど、優しいお兄さまだ。
◇
「全員集まりましたし、話し合いを始めましょうか」
そう言って、エリカお義姉さまが、紙をテーブルに広げた。
「今後のルートなん? 第二王子攻略ルートで良いの?」
「今分かっている攻略対象は、第二王子とアクアマリン公爵令息だけですからね。
他はそのうち出て来そうですけど、マリアさんの希望は、破滅フラグの回避のみなので、それを目標にして動きます」
「う~ん。セリーヌっちに第三王子が生まれたじゃん?
第二王子の破滅ルートは、二人揃っての打ち首か、国外追放じゃね?」
血の気が引く。
他人事だと思って軽く言いやがって……。
「そうね……。悪役令嬢役とも取れなくもないし……。
元悪役令嬢役のリナ様のご意見も聞きたいわね」
「う~ん。あーしは、他を圧倒したかんね。この人には誰も近づけなかったし。
要は第二王子が他の女に惚れなければ良いわけじゃん?
第二王子の心を鷲掴みにして、エンディングまで行けば良いんじゃね?」
……簡単に言ってくれる。
私も一応は、魔眼を持っている。第二王子の好感度を知ることは出来るのだ。
そして、今はMAXだ。
他の女の入り込む余地などない。ないのだけど……。前世の自分を思い返し、このまま行けるとは思えない。
この世界に来てから、何度も足を掬われているのだし。
最悪、この世界が望むのであれば、決闘で殺される未来もあり得る。
闇落ち系のキャラが出て来た時点で終わりなのも予測出来る。
「ふむ。僕は良く分からないが、マリアを擁護することに変わりはない。
どんな状況になっても、妹を見捨てる兄などいないからね」
「エヴィと同意見だ。破滅フラグとやらを踏んだとしても、俺も全力で擁護する」
涙が出てしまう。嬉しいよ、ブラザーズ。
前世でも、あんた達みたいな兄貴が欲しかったよ。
「話を進めますね。今後の大きなイベントとしては、 魔法学園との対抗戦、不作、
「運命の相手との出会いとは、なんですの?」
私の知識にない言葉だ。多分だけど、1stか3rdのイベントなんだろう。
「マリアさんからその人を求めてしまう……。そういう相手が現れる可能性があります」
ほう? その相手でも良いんじゃないか? いや、罠であり破滅フラグ直行ルート?
ここで、エヴィお兄さまの表情がきつくなった。
それを、シルビアお義姉さまがなだめる。
「私が運命の相手を選ぶと、どうなりますか?」
「王国が亡びます」
「ダメじゃん!」
全員の爆笑が起きる。笑い事じゃねぇんだよ!
「ゴホン。……分かりました。自制心を持ってその相手を振れば良いのですね?」
「そうしてくれると助かります。それと、破滅フラグ回避にもなりえますので、覚えておいてください」
「一人だけ生き残って、王国中の人に破滅フラグを踏ませる……と。選びません!」
「うふふ。マリアさんが優しい人で良かったですわ」
「それよりも、決闘の数を減らして貰えませんか? 今日など遠い異国からの挑戦者でしたよ?」
「う~ん。ジークのシナリオにはなかったイベントですよね……。無理かな?」
「ダメじゃん! 殺される未来しか見えないよ!!」
全員が、優しい笑顔で私を見ている。
あ、リナ様だけは、お腹抱えて笑っているか。
いやさあ、そんな顔で見られても困るのだけど。正直、未来は不確定だ。
ゲーム知識も役に立ちそうにない。
深いため息を吐いた。
『……どうすっかな~』
―完―
学園を追われて開拓村へ~だけど、元婚約者が最終武器を持って来た~ 信仙夜祭 @tomi1070
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます