熱中症

 年々暑さの厳しさが、増し増してこそ、起こったと、聞いて聞いてと人伝ひとづてに、聞いた話の悲しけれ。


 これは他人ひとから聞いたこと。

 カラスもやっぱり熱中症に、かかって命を落とすんだ。


 木陰も気休め夏の日の、日差しを何とか避けようと、葉っぱもカサカサ、しおしおの、路肩のそばの木々の枝。

 その一本に留まってる、一羽のカラスが大口を、開けてヘトヘト留まってる。


 カラスは汗をかけぬから、くちばし開けて口内の、水分飛ばして体温を、なんとか下げているんだと、教えてくれたその人は、ここからトンデモ・リアルだと、こそっと教えてくれたんだ。


 大口開けた一羽のカラスが、留まった枝のその上で、ふらふらよろよろ不自然な、動きを見せていたんだと。

 はじめはふざけているんだと、思って見てたら目の前で、カラスがストンと落っこちた。

 枝の上から落っこちた。


 路肩の脇の植え込みの、間でバサバサもがくけど、口は変わらず開けたまま、よわよわしながらへばってた。

 カラスもやっぱり熱中症に、かかる暑さと改めて、実感したとその人は、こわごわ教えてくれたんだ。


 カラスはその後、しばらくもがいて、植え込みの奥、目立たぬ場所に、這ってへばって身を隠し、やがて静かになったので、そっとスマホを取り出して、保健所に一報入れたと聞いた。


 三十分ほど経ったころ、到着したのは保健所の、担当員と思しき二人の男性で、哀れなカラスを粛々と、袋に入れて回収したと聞いてから、うちの近所のカラスのことも、気が気じゃないと思ったよ。


 人もペットもそうだけど、カラスもやっぱり熱中症に、かかって命を落とすんだ。


-----

 ただでさえ黒いのだから、体感する暑さも人一倍……鳥一倍なのだろうと思いました。昨今、鳥インフルなど様々要因が考えられるので、一応亡くなった鳥も検査をするとかしないとか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カラスのうた 古博かん @Planet-Eyes_03623

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ